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昭和歌謡への愛

夏海姉妹 『ホテル砂漠』 HOTWAX(2023)

 そんな同曲を中心に、やさぐれ歌謡の番外地生まれという彼女たちの出自を露わにしてみせるのが、今回リリースのEP『ホテル砂漠』。不可思議な郷愁を演出しながら時空をぐにゃりと捻じ曲げる異形のシンガー・ソングライター、町あかりの本領が発揮されたカップリング曲“ハーブみたいな彼”も姉妹のキャラを豊かに浮かび上がらせる。いしだあゆみ“太陽は泣いている”(68年)が二重写しになるこの曲にも筒美京平へのオマージュが張り巡らされているが、いずれも舌とかいろんな箇所にピリッとした痛みが走るほど刺激性が高く、聴くたびに癖になる。

ジュン「私が人前で歌うようになって13、4年、ずっと昭和歌謡のスタイルにこだわって歌い継いできました。そのなかでも筒美作品って“サザエさん”のようなファミリー向けからアダルト向けまで曲の世界がすごく幅広い。いまはまだ歌わせてもらっている実感が薄いけど、ウィキペディアのディスコグラフィーのいちばん下に私たちの名前を見つけたりしたらやっと湧いてくるんだろうな、って思います」

 歩んできた道も、また性格も正反対なふたり。〈再会〉してまだ4か月程度の姉妹の関係性を大久保Pはどう見ているのだろうか。

大久保「ジュンちゃんの生歌を初めて目の前で聴いたのがレコーディングの時で。ビックリしましたね。“ホテル砂漠”のデモを聴いて、これを歌いこなせる人なんているの?と思ったけど、最初のひと節を聴いただけで、これイケちゃうじゃん!?って確信を得ました。一方、愛ちゃんは見た目クールだけど内に熱いものを秘めた子。静と動の異なるタイプのふたりが偶然揃ったんです。で、男であれば必ずどちらかを好きになるんです(笑)」

ジュン「(笑)で、お前はどっち?って議論をぜひやってもらいたいですね」