早くも2024年のベストに入りそうな新作は、前作『oar』同様に歌ものがメイン。古川麦(ギター/コーラス)、秋田ゴールドマン(ベース)、光永渉(ドラムス)、巌裕美子(チェロ)を中心に多様なアコースティック楽器と環境音、そして聴き手と距離の近い可憐な歌声が紡ぐアンサンブルは、見慣れた景色のような、はたまた実在しない原風景のような不思議な懐かしさを呼び起こす。遊び心あふれるフレーズや、音そのものに命が宿っているような瑞々しいサウンド・プロダクションも素晴らしく、そういう点では原田郁子のソロ作とも共振するような。あらゆる意味で有機的なチェンバー・ポップ集。