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コラム

角銅真実、〈わたし〉と〈わたしたち〉との『Contact』――サム・アミドンらが参加した4年ぶりの新作に寄せて

Photo by Ittetsu Matsuoka

ceroのサポートや石若駿の〈SONGBOOK PROJECT〉での活動でも知られる異才打楽器奏者/シンガーソングライター、角銅真実。高い評価を得た前作『oar』(2020年)に続くニューアルバム『Contact』が、彼女からついに届けられた。多彩な音楽家と協働しつつ、独自の才能をさらに開花させた本作について、アルバムのオフィシャルインタビューも担当した音楽ライターの松永良平(リズム&ペンシル)が綴った。 *Mikiki編集部

角銅真実 『Contact』 ユニバーサル(2024)

 

生きていることそのままの音

角銅真実は、潜った。息を吸い、顔を水面につけ、ぶくぶくと息を出しながら地球の裏側、宇宙の果て、そして、いちばん近くて遠い場所である自分自身の内側へ。

新作『Contact』から、すでに先行配信されている“i o e o”は、そんな音から始まる。呼吸し運動する肉体と、生きていることそのままの音が楽器になっている。それをつまり〈音=楽〉と呼べるのかもしれない。

 

私はここにいますよ

ソロアーティストしてのフルアルバム(通算4作目)は、初のメジャー作品だった前作『oar』以来、約4年ぶり。コロナ禍でもceroのサポート(パーカッション/コーラス)と並行して、ソロでのライブや舞台音楽の制作などは可能な限り続けてきた。光永渉(ドラムス)、秋田ゴールドマン(コントラバス)、古川麦(ギター)、巌裕美子(チェロ)という顔ぶれが信頼すべき自身のバンドとしてほぼ固定したし、毎年、レギュラー的に出演を重ねた〈FESTIVAL de FRUE〉を通じて、アメリカ人シンガーソングライター、サム・アミドンとも深い交友を得た。活動が制限された状況下であったが、自身の音楽の向かう方向をじっくりと模索するには有意義な時間を重ねていたとも言えるだろう。

シンガーソングライター的な作風から、フリーフォームの実験的な楽曲まで、彼女の音楽性は多岐にわたる。直感に基づいた作風だが、作詞や歌唱には〈自由とは? 言葉とは? 音楽とは?〉を絶えず問い返す真摯さ、そして、ここからどこかへと自分を連れ去ってくれる彼女が志向した表現には、いつも〈その先の知らない世界に向かいたい〉と願うベクトルが敷かれていた。時間や空間に縛られず、自分の肉体を縛るものから離れて表現が整理する場所を目指すこと。1st『時間の上に夢が飛んでいる』(2017年)も、1963年に宇宙飛行を果たしたロシアの女性宇宙飛行士が交信で語った言葉「私はカモメ」をタイトルにした2nd『Ya Chaika』(2018年)もそう。フィッシュマンズや浅川マキのカバーなどを収録し、歌ものを中心とした前作『oar』にしても、船を外界へと漕ぎ出すための〈オール〉をタイトルに使っていた。

だが、今回の『Contact』で、彼女の矛先は外へ外へというより、自分がいる(いた)場所を意識し、自分の出自や内面にも向いている。〈私はここにいますよ〉と音楽でコンタクトを試みようとしているのだ。

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