太くて、硬くて、生々しいほど猥雑で──そんなギンギンの音を求め、デビュー25周年を迎えてもなお、黒いカリスマは自由への疾走を止めない。彼が歌い続ける限り、ロックンロールは死なないんだぜ!

高校時代に戻ったみたいだ

 レッド・ツェッペリンやジミ・ヘンドリックスらのヴィンテージ・ロックに通じるアナログ・サウンドを携え、レニー・クラヴィッツが衝撃的なデビューを果たしたのは89年のこと。そして2014年、デビュー25周年を迎えた彼が、通算10枚目となるニュー・アルバム『Strut』を発表した。ちなみに、この新作はレニーが新たに立ち上げたレーベル、ロキシーからの記念すべき第1弾リリースとなるもの。さらに、レニーは今年の6月25日に50歳の誕生日を迎えており、何やら節目だらけのアルバムと言えそうではあるのだが……。

 「大きな節目であることは確かで、めでたいことではあるけど、俺はこうして生きていられるだけで幸せなんだ。人は毎日生まれ変わっていて、毎日が新しい可能性に満ちている。年齢とは関係なく、ニュー・アルバムを作っている間、俺はスポンテイニアスな(内側から溢れ出るような)エネルギーに満ちていて、まるで高校生の頃に戻ったみたいだったからね」。

LENNY KRAVITZ 『Strut』 Roxie/ソニー(2014)

 キャリアも年齢も関係ない。いまがすべて──そう言わんばかりにポジティヴなレニーなのである。そのポジティヴさの背景には何があるのか。彼は2011年8月に前作『Black And White America』を出した後、ワールド・ツアーを開始。翌年4月には、単独公演としては実に14年ぶりの来日も果たしている。そしてツアー終了を待って映画「ハンガー・ゲーム2」の撮影に取り掛かり、多忙な日々を送っていた。

 「そう、普通ならがっくり疲れてしまうくらいにね。その間、新しい音楽をまったく作ることができなかった。そのせいかもしれないんだけど、映画の撮影期間中に曲のアイデアが物凄い勢いで湧き上がってきてね、もう音を鳴らしたくて仕方がないっていう衝動に駆られていたんだ」。

 そして撮影終了と同時にレニーはプライヴェート・スタジオのあるバハマへ直行。いつものように盟友のクレイグ・ロスと2人でレコーディングに突入した。

 「それはもうマジカルな瞬間の連続だったよ。スタジオで音楽に取り組めば、曲はどこからか舞い降りてくるって感じでさ。その場の空気に漂っている何かが俺の頭のなかへ入り込み、それが音となって聴こえてくるんだ。だから、〈どういうアルバムにしよう〉とか、〈どういうコンセプトにしよう〉とかを考える必要はまったくなかった。楽器を持てば、〈どうプレイすればいいか〉〈どこをめざすべきか〉がおのずとわかるんだからね。すべてが本能的だったよ」。