2023年夏の川崎での演奏会は話題になった。オーケストラのレベルの高いアンサンブルは好評だったが、ノットの解釈には賛否両論あった。私は現地では聴くことができなかったので、この録音で初めて耳にしたがとても素晴らしいと感じた。第1楽章は特徴的で全編レガートで貫かれ、しなやかで絹のような肌触り。色彩の豊かさが新鮮だった。第5楽章は全体のテンポとリズムを支える低弦のピチカートがとても気持ち良く奏でられている。“ポーランド”は“白鳥の湖”の亜流である、といったイメージは拭われている。ロシア指揮者の名演はフィナーレで加速して興奮に導くが、ノットは熱くなるもテンポを保っているのが良い。