コラム

ミューザ川崎シンフォニーホール 「名曲全集(前編)」東京交響楽団との名物シリーズ、今期のプログラムを紹介

左から、沼尻竜典、原田慶太楼、梅田俊明

「休日の午後」はミューザ川崎へ
ミューザ川崎シンフォニーホールと東京交響楽団によるシリーズ〈名曲全集〉(前編)

 〈休日の午後〉という言葉は、たまらなく甘美な響きがする(と、会社勤めの知人が言っていた)。そんなスペシャルな時間に行われている演奏会が、ミューザ川崎シンフォニーホールと東京交響楽団によるシリーズ〈名曲全集〉。2004年のホール開館以来続けられ、すでに150回を超えた人気企画だ。前半にあたる4月から10月までのプログラムを紹介しよう。

 4月は、ベテラン演奏家による鉄板レパートリーが楽しめる(4月19日/第156回)。

 メインとなるのは、ショパンとチャイコフスキーの2つのピアノ協奏曲。ソリストは、小山実稚恵。ショパン、チャイコフスキーの二大コンクールに入賞した唯一の日本人ピアニストで、この2曲を一つの演奏会で聴くのはたいへんレアな機会になる。

 指揮は、半世紀以上も東響を振り続けてきた桂冠指揮者、大ベテランの登場になる。秋山和慶アワー、期待していいとも、だ。

※編集部注:新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、2020年4月19日の公演は中止になりました

 5月は、フレッシュな顔ぶれも加わった、変化に富んだプログラム(5月17日/第157回)。

 ソプラノ歌手の梅津碧が東京交響楽団と初共演する。 ウィーン国立音楽大学で学び、2018年にニッセイ・オペラで「魔笛」のパパゲーナ役を歌うなど、注目を集める若手だ。持ち前のコロラトゥーラの技巧を生かし、「魔笛」の夜の女王、そして「ホフマン物語」のオランピアのアリアなどを披露する。

 その梅津とは山形交響楽団で共演した飯森範親の指揮。東響とも関係は深く、現在は正指揮者を務めている。颯爽とした明快なサウンドが持ち味だ。

 プログラムがなかなか面白い。モーツァルト、オッフェンバック、バーンスタインの序曲、そのあいだに超絶技巧を伴うアリアが入る。序曲とアリアが交代するテンポ感。カンカン踊りで知られる、オッフェンバックの「天国と地獄(地獄のオルフェ)」序曲も演奏される。最後は大曲、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」。山あり谷あり、まさに「天国と地獄」さながらの構成だ。

※編集部注:新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、2020年5月17日の公演は中止になりました

 6月は、キレキレの演奏家によるベートーヴェン(6月21日/第158回)。

 ベートーヴェン生誕250年に焦点を充てたプログラムで、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」と交響曲第3番「英雄」が演奏される。2つとも変ホ長調の〈英雄的〉な作品だ。

 ピアノ協奏曲のソリストは、マルカンドレ・アムラン。超絶技巧の難曲を涼しい顔で弾いてしまう人間離れしたピアニストだが、最近は風格さも備わってきた。その彼がベートーヴェンの協奏曲を弾く機会は、かなり貴重といっていい。クールに磨き抜かれた「皇帝」が姿を現すだろう。

 近年はオペラ指揮者としての名声を高めつつある沼尻竜典が指揮台に立つ。沼尻は、自ら結成したトウキョウ・ミタカ・フィルハーモニアと、かつてベートーヴェンの交響曲全集を録音、正攻法かつバランス感覚が優れた演奏だった。東響とは、どのような「英雄」を聴かせてくれるのか。

 9月のプログラムには、ちょっと珍しい名曲が入っている(9月13日/第159回)。

 ベートーヴェンのピアノ協奏曲第0番だ。作曲家が13歳から14歳にかけて書いた習作で、まだ彼の個性が出きってない、初々しいパトスが印象的な音楽だ。

 そのソリストとして、鐵百合奈を迎える。 昨年、シューマンやバッハを収録したデビュー・ディスクをリリース、そのリリカルな表現が評価されている若手実力派ピアニストだ。昨年から4年かけてベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏にも挑んでいる。

 指揮者は、原田慶太楼。アメリカで順調にキャリアを積み重ね、最近は母国のオーケストラを客演することも増えてきた、こちらも若いながら実力派。今シーズンからジョージア州のオーケストラ、サヴァンナ・フィルの音楽&芸術監督に就任するという。明快なサウンド・イメージの持ち主で、プロコフィエフの交響曲第5番もさることながら、スッペの「詩人と農夫」序曲で、どのように響きを組み立ててくれるのか、興味は尽きない。

 10月は、スタンダードと冒険が入り交じった、名実とも名曲を揃えたプログラム(10月24日/第160回)。

 バッハ、ブラームス作品のあいだに入るヴァイオリン協奏曲は、《アダージョ》で有名なアメリカの作曲家バーバー。ここにブラームスの協奏曲を入れると確かに収まりはいいが、あまりにもお行儀が良すぎる(それにちょっと古めかしい)。そこは、さすが〈名曲全集〉シリーズ、バーバーが心地良いアクセントになっている。

 ヴァイオリン独奏は、 川久保賜紀。安定したパフォーマンスで、しっかりと歌い込むバーバーが期待できるはず。指揮者は、的確な棒さばきで、ニュアンスあふれる音楽作りで知られる梅田俊明。両名とも、中堅からベテランへの道へ踏み出したアーティスト。熟成された解釈が楽しめるはずだ。

 

*2020年5月7日追記
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが作曲したピアノ協奏曲第5番「皇帝」および交響曲第3番「英雄」について、〈変ホ長調〉であるところを誤って〈ホ長調〉としておりました。事実と異なる内容を掲載しましたこと、謹んでお詫びをし、訂正をさせていただきます。

 


LIVE INFORMATION

2020→2021前期シーズン ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 名曲全集

【公演中止】〇第157回 5/17(日)14:00開演
【出演】
指揮:飯森範親
ソプラノ:梅津 碧
【演目】
モーツアルト:歌劇「魔笛」序曲夜の女王のアリア
オッフェンバック:喜歌劇「天国と地獄」序曲
歌劇「ホフマン」物語から オランピアのアリア「生け垣に烏たちが」
バ一ンスタイン:「キャンディード」序曲 クネゴンデのアリア「着飾って、きらびやかに」
チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」
【料金】
S:6,000円 A:5,000円 B:4,000円 C:3,000円

〇第158回 6/21(日)14:00開演
【出演】
指揮:沼尻竜典
ピアノ:マルカンドレ・アムラン
【演目】
べートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
べートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
【料金】
S:6,000円 A:5,000円 B:4,000円 C:3,000円

〇第159回 9/13(日)14:00開演
【出演】
指揮:原田慶太楼
ピアノ:鐵 百合奈
【演目】
スッペ:喜歌劇「詩人と農夫」序曲
べートーヴェン:ピアノ協奏曲第0番変ホ長調Wo04
プロコフィエフ:交響曲第5番
【料金】
S:6,000円 A:5,000円 B:4,000円 C:3,000円

〇第160回 10/24(土)14:00開演
【出演】
指揮:梅田俊明
ヴァイオリン:川久保賜紀
【演目】
J.S.バッ ハ(ウェーベルン編):6声のリチェルカーレ(「音楽の捧げもの」から)
バーバー:ヴァイオリン協奏曲
ブラームス:交響曲第4番
【料金】
S:6,000円 A:5,000円 B:4,000円 C:3,000円

【会場】ミューザ川崎シンフォニーホ一ル(JR「川崎」駅中央西口直結)
【管弦楽】東京交響楽団(川綺市フランチャイズオーケストラ)
【問い合わせ】ミューザ川崎シンフォニーホール 044-520-0200(10:00~18:00)/TOKYO SYMPHONYチケットセンター 044-520-1511 (10:00~18:00、土日祝休み)
【主催】ミューザ川崎シンフォニーホール(川崎市文化財団グループ)、公益財団法人東京交響楽団
※公演内容は変更になる場合がございます。最新情報はホームページでご確認下さい
https://www.kawasaki-sym-hall.jp/performance/2020/88.php

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