あがた森魚と直枝政広、旧友たちとの競演
そして、コンサートはいよいよ佳境に。“21世紀の大馬鹿者”をバンドとともに歌った後にゲストで登場したのは、この日のゲストで2番目に付き合いが古いカーネーションの直枝政広。カーネーションは88年にメトロトロンからファーストアルバム『Young Wise Men』を発表。また、直枝と鈴木は政風会というユニットを85年に結成している。この日のバンドメンバー、鳥羽は91年に鈴木の紹介でカーネーションに加入(2002年に脱退)。大田は92年に加入していて、90年代のカーネーションのメンバーが3人揃ったことになる。

そして、演奏したのはムーンライダーズ“ウルフはウルフ”。直枝の轟音ギター、喘ぐような歌声に大田のコーラスが加わってカーネーション色に染め上げていた。続いて、鈴木とのデュエットで政風会として86年に発表した“裸足のリタ”を披露。曲の間に交わされる昔話も微笑ましく(鈴木にそそのかされて直枝が荒海に飛び込んで溺れかけた話が最高)、まるで義兄弟のような2人の良い関係が伝わってきた。
直枝がステージを降りると、鈴木はムーンライダーズ“さよならは夜明けの夢”をしっとりと歌う。鈴木が作詞、岡田徹が作曲した曲で、2人は名コンビとしてムーンライダーズの名曲の数々を生み出した。岡田は2023年に亡くなったが、もし元気だったら間違いなくゲスト参加して、この曲でキーボードを弾いていたに違いない。そう思うと熱いものがこみ上げてくる。

そして、最後のゲストで鈴木と最も古い付き合いのあがた森魚が登場。鈴木に「お母さんにそっくりになってきたね!」と感慨深そうに語りかける。鈴木があがたに初めて出会ったのは高1の時だったという。そして、2人で歌ったのは“大寒町”。鈴木がムーンライダーズのメンバーとしてデビューする前に書き、あがたが74年に歌った曲だ。鈴木のミュージシャンとしての出発点ともいえる曲で歌声を重ねる2人。曲の後半、あがたのスキャットと鈴木のハーモニカのやりとりは言葉にならない想いをぶつけ合っているようでもあり、そこに猪爪の熱いギターソロが加わって曲は大きく膨らんでいく。コンサートのラストを飾るのにふさわしい感動的な共演だった。
70歳、これからも走り続ける
鈴木とバンドメンバーがステージを降りても拍手は鳴り止まずアンコールに。鈴木は紫のちゃんちゃんこと大黒頭巾を身につけて古希ルックで登場。バンドに再び直枝が加わって“DON’T TRUST ANYONE OVER 30”を演奏した。跳ねるようなギターのリフ。骨太なバンドサウンドが、中年男の孤独を描いた鈴木の歌詞の魅力を引き出して、やたらかっこいい。

曲が終わったところで、ゲスト全員がステージに呼ばれ、さらに『16 SONGS OF HIROBUMI SUZUKI』に参加したPORTABLE ROCK、青木孝明といった面々も駆けつけた。PORTABLE ROCKの野宮真貴が差し出したケーキのロウソクの炎を鈴木が吹き消すと仲間たちから「おめでとう!」と声がかかり、コンサートの最後の曲として演奏が始まったのがムーンライダーズ“くれない埠頭”。直枝、あがた、野宮とマイクを回して残りは全員で合唱する。それを腕を組んでじっと聴いている鈴木。この曲はみんなから鈴木へのプレゼントなんだな、と思って聴いていると、バンドの演奏が止まって歌だけに。そして、歌も止まった時に鈴木が1人でサビを歌い出す。それを手拍子で応援する観客。そのうち、自然に観客から歌声が起こる。感動的な瞬間だ。

「夢を見た日から 今日まで走った」という一節を聴いて、この日、鈴木が初めて歌った曲“後がない”の「走るよ」という歌詞を思い出した。音楽家として半世紀以上、走り続けてきた鈴木博文。飄々としながら深みのある歌を聴かせる放浪詩人のような男が、これからも走り続ける、死ぬまで生き続けることを宣言したような3時間に渡る濃密なコンサートだった。

SETLIST
1. 晴れた日に
2. 後がない
3. ボクハナク
4. ぼくは幸せだった/ゲスト:emma mizuno
5. 捨てたもんじゃない世界/ゲスト:emma mizuno
6. 突然の平凡
7. MR. SUNSHINE/ゲスト:3776
8. Fence
9. どん底人生
10. 夏はどこに/ゲスト:加藤千晶
11. 今日も冷たい雨が/ゲスト:加藤千晶
12. Kucha-Kucha/ゲスト:青山陽一
13. ブルー/ゲスト:青山陽一
14. プールサイド
15. 駅は今、朝の中/ゲスト:XOXO EXTREME
16. 21世紀の大馬鹿者
17. ウルフはウルフ/ゲスト:直枝政広
18. 裸足のリタ/ゲスト:直枝政広
19. さよならは夜明けの夢に
20. 大寒町/ゲスト:あがた森魚
ENCORE
1. DON’T TRUST ANYONE OVER 30/ゲスト:直枝政広
2. くれない埠頭/全員参加
RELEASE INFORMATION

リリース日:2024年6月25日(火)
品番:NRSD-30130/AICP-040
価格:3,300円(税込)
ジャケットイラスト:毛塚了一郎
TRACKLIST
1. 大寒町/あがた森魚 with 秘密のミーニーズ
2. 工場と微笑/PORTABLE ROCK
3. MR.SUNSHINE/3776
4. 夢見るジュリア/MUSEMENT
5. ウルフはウルフ/カーネーション
6. 駅は今、朝の中/XOXO EXTREME
7. ボクハナク/本日休演
8. Kucha-Kucha/GRANDFATHERS
9. Fence/やなぎさわまちこ
10. Early Morning Dead/佐藤優介
11. どん底人生/ayU tokiO
12. ゴンドラ/青木孝明
13. 穴/スカート
14. 今日も冷たい雨が/加藤千晶 & 鳥羽修
15. ぼくは幸せだった/emma mizuno
16. くれない埠頭/Bright Young & Old Wan-Gan Workers
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