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当初から構想していた“ライバル!”“OK!”への流れ

──1分半とは思えないくらいドラマチックで。あれで初めてCDを買ったっていう人も多かったと思います。また、当時「ポケモン」用に作られた未発表の候補曲が今回も収録されていますが、どれも本当にいい曲で。当時はいくつか候補曲を作り、それをプロデューサーに選んでもらう、という感じだったんでしょうか。

「いや、基本的には自分で決めてました。やっぱり一番はじめにヒットしたことが大きかったのかなぁ、A案、B案と何タイプか作ったりもしたけれど、最後は自分の意見を尊重してくれた、ありがたいことです。

けれど作曲する前には必ずコンセプトを立てて作曲に向かったんですよ。同じような曲といわれたくなかったから毎回方向性を変えてたんだけど……2作目の“ライバル!”を作ったとき、ちょっと暗い印象があったらしくて、とある人から〈田中さん、どうかされましたか?〉って言われたのは覚えてる(笑)。自分としては“めざポケ”が結構ハイな感じだったから、次はミディアムでいこうと決めていて」

──その“ライバル!”の次が“OK!”で、またアップテンポになって。1作ごとに緩急があるんですよね。

「そのホップ・ステップ・ジャンプ的な流れは最初から意識してたんですね、後付けじゃなく、2曲目の依頼があった時にイメージは作っていた。他では楽器で曲に特徴を出そうと、たとえば今度は絶対スライドギターを入れようとか、“ニャースのうた”ではシタール風のギターを入れようとかね。そういうイメージはいつも先行してあった」

──確かに、1曲ごとにいろんな楽器の音が聴こえてくるのが印象的で。ニューオーリンズ風だったり、スティールパンの音が聴こえてきたりとか、そういう意味では音楽図鑑的な側面もあったと思います。そして、今回の『More Lost Tapes』には、ひろかずさん歌唱によるデモも収録されています。どれもひろかずさんの声に合ってるというか、シンガーソングライター的な印象もあって。

「『ポケモン』はやっぱり松本梨香さんが歌うイメージがあるから、そこを意識して作ってる部分もあるんだけど、それ以外だと結構シンガーソングライター的な要素も入ってくる。もともとアメリカの西海岸とか、イギリスのシンガーソングライターの人たちも好きで聴いてたからね。そうして残しておいたデモが、後にポケモンの曲になったりもするんだけど。

自分の歌でいうと、メロダイン(ピッチ修正ソフト)を使うのにハマってて。ピッチを修正するというよりは、極端に上下に動かしたりして、どんな音になるかの実験をしてる感じ。次に自分に課題があるとしたら、そういうアプローチで歌ものをやってみるのもありかなと」

──それはぜひ聴いてみたいです。

「あとは洋楽のカバーアルバムも作ってみたいと思ってる。たとえばアメリカの“名前のない馬”とかね、そういうものを自分のアレンジでやったらどうなるかな、っていうのを今なんとなく考えてます」

 


RELEASE INFORMATION

たなかひろかず 『More Lost Tapes』 SUPER FUJI(2024)

リリース日:2024年7月24日(水)
品番:FJSP508
仕様:2枚組CD
価格:3,993円(税込)

TRACKLIST
CD 1
1. Echoes of Unspoken Love Demo (1980s)
2. ナイト (TX81Z) Demo Type-A 
3. ナイト (TX81Z) Demo Type-B
4. More Deep Demo (1980s)
5. Reggae Rhythm Demo (1980s)
6. Improvised Song “Love Song With No Lyrics” (1981)
7. Walking in the Sun 
8. Challengers of the Cosmos 
9. Sad Harp Demo
10. Song 4 ESP Demo (1989)
11. Pigeon From M82
12. Drifting Stars
13. Shifting Cosmos Dub
14. Inorganic Combat Music
15. Warriors of the Universe
16. プール Demo (1980s)
17. 大樹となかまたち Demo (1999)
18. みんなの体操 Demo
19. 風といっしょに Aメロ Demo (1996)
20. ポケモン・オープニング・テーマ Demo Type-C (1998)
21. ニャースのうた Demo (1997)
22. ピカピカまっさいチュウ Demo (1998)
23. ポケモン・オープニング・テーマ Demo Type-B (1996)
24. ロケット団  Instrumental Demo
25. Improvised Song “Loving U” (2005)

CD 2
1. OK Instrumental Demo (1999)
2. なつやすみファンクラブ First Demo (1998)
3. Demo Song by sc-8850 #6 (2000)
4. Demo Song by sc-8850  #5 (2000)
5. Long Time Ago Demo
6. Improvised Song “To You” (2005)
7. かくれんぼ Demo (2001)
8. Song Pop A  Demo (1998)
9. おどるポケモン秘密基地 候補曲 Demo (2003)
10. Song Reggae Demo (1998)
11. ポケモン・オープニング・テーマ Demo  (2004)
12. 冒険のはじまりだ! Demo (2003)
13. Improvised Song “Summer Night” (2005)
14. ちゃいリアンのセレナーデ Demo (2001)
15. ファンタ爺さん Melody Demo (2004)
16. とのさまガエル Track Demo (2004)
17. 名前さえあればいい Demo
18. チャレンジャー First Demo (2004)
19. あまのがわ Demo
20. 同姓同名ガンボ Demo
21. Song Momo Demo (1998)
22. ポケモン・オープニング・テーマ Demo Type-B (2010)
23. ベストウィッシュ First Demo (2010)
24. わたしはじてんしゃです Demo
25. Song Pop B  Demo (1998)

 

たなかひろかず 『Lost Tapes 17』 SUPER FUJI(2024)

リリース日:2024年9月25日(水)
品番:FJSP510
仕様:LP
価格:4,532円(税込)

Side-A
1. Spacemen’s March
2. Space Attack “Q” 
3. Waltz 3
4. PPU Dance
5. Fairy Wings
6. Improvised Song “Sweet Tea” (1981)
7. Long Time Ago Demo
8. More Deep Demo (1980s)
9. Small Gift

Side B    
1. Love me
2. M45
3. Echoes of Unspoken Love Demo (1980s)
4. 大樹となかまたち Demo (1999)
5. プール Demo (1980s)
6. Improvised Song “To You” (2005)
7. Song Pop B  Demo (1998)
8. 大樹となかまたち First Demo (1989)

 


PROFILE: たなかひろかず
1980年、任天堂入社。アーケード版「ドンキーコング」「マリオブラザーズ」、ファミコン「メトロイド」「パルテナの鏡」「ドクターマリオ」「マザー」、スーパーファミコン「MOTHER2」など数々の人気ゲームの音楽や効果音、プログラム制作を手掛ける。退社後、〈たなかひろかず〉としてテレビアニメ・映画「ポケットモンスター」で数多くの音楽を手がける。また〈Chip Tanaka〉として2018年のフジロックフェスティバルへの出演をはじめ国内外のミュージックフェスティバルに出演するなど、ゲーム音楽にダブやテクノなどの音楽性を取り入れたパイオニアとして絶大な評価を得ている。