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和洋折衷の歴史が映す、洋楽と邦楽の狭間にある音楽

――そうですね。最初にも言ったように、〈トクマルシューゴの人間らしさ〉がこのアルバムにはあるというか、それって〈優しい部分が見えますよ〉みたいな意味じゃない。意図せぬ部分まで含めてトクマルさんのすべてが自然に出ている感覚なのかもしれません。あと、今回すごく印象的なのは、〈うた〉への意識ですね。あえてひらがなで〈うた〉と言いたい感覚というか。

「音楽の歴史を遡れば、最低でも4万年前から人類は骨の笛とかの楽器とともに過ごしてきたという事実があって、当然そこには〈うた〉という存在もあった。でもそれは、今でいうメロディとかがある〈歌〉ではなく、もっとコミュニケーションの根源に迫るような〈うた〉なんです。そのことを僕は結構重要視しています。

ただ、そういう〈うた〉の歴史をたどっていくなかで、ここ150年くらいの間に日本で起きたことも面白いんですよ。明治維新があって、初めて〈西洋音楽ってなんじゃい?〉みたいな動きが起こる。そのときに取り入れられたフレーベル理論というものがあるんです。その理論のなかに〈音楽遊戯〉という項目があって、それを日本の教育でも取り入れようということになった。そこに“風車(かざぐるま)”という英語の歌の楽譜も記載されていたんですが、最初はそれを当時の日本ではそのまま取り入れることは難しかった。つまり、ドレミファソラシドの概念がなく、そもそもハ長調というような音楽に馴染みがなかったので。

そこで雅楽をやっていた人たちが、洋楽曲の“風車”に伝統的な日本音階を取り入れれば受け入れられるんじゃないかと考えて、西洋の音楽理論と構成や歌詞の乗せ方は取り入れつつ、日本版の“風車”を作ったんです。それが日本初の幼稚園で歌われた唱歌なんですが。実は、その曲が17曲目“Autumn Bells”の後半にうっすらと子供の歌声で入っているんです。日本版の“風車”は、それ以前にあったわらべうたと、その後の日本の音楽のちょうど狭間の音楽なんです。それを僕は“Autumn Bells”で表現したかった。

西洋の音楽が一気に入り込んできて日本の音楽が変わりだす。和洋折衷で生まれたいわゆるヨナ抜き音階が日本の音楽教育に馴染んで、今のJ-POPの曲たちが生まれているという状況、〈あ、僕はこういう環境のなかで育って、こういう音楽がなぜ好きで、なぜ自分でも作っているのか、自分の音楽はどういう構造を持っているのか〉について、ようやく理解できたんです。

僕の音楽を聴いてくれてる人も同じように育っているから理解できるし、僕の音楽が海外で受け入れられているのもそういう理由があるんだと、明確に理解することができた。じゃあ、僕はそれをあらためて大事にして、僕の表現としてやってみることができるんじゃないかな。それを明確に理解しながら作ることができた作品だなというところがあります」

 

日常生活が育む動的な音楽体験を取り戻そう

――〈うた〉というワードを打ち出すと、〈あ、今回トクマルシューゴは言いたいことがあるんだ〉と思われがちじゃないですか。でも、今言ってもらったことは、意味を目指す〈うた〉ではなく、もっと自分の音楽の根源を見つめてやり直すという〈うた〉ですよね。

「そうだと思います。歌詞については、基本的には夢日記をずっと書いていてそこから歌詞を作るんですけど、今回はそれにプラスで〈言葉作り〉をしている面も結構あります。日本に古来からありそうで実は無い、という言葉をいくつか作っちゃっています。日本語だからできることなんじゃないかなと。日本語って、ひらがなのおかげもあって〈そういう意味かもしれない〉となんとなく汲み取れる要素があるんですよね」

――6曲目の“Kotohanose”とかも象徴的ですね。

「〈言葉の裏側〉という意味で〈ことばの背〉と書いたんですけど、〈ことは〉にすることで〈葉っぱ〉の意味も出てきて、〈葉っぱの裏〉というのも僕の頭のなかではイメージしていたりして。そういう表現ができるのは日本語ならではなので。

11曲目の“Atte Katte Nuwa”なんかは、北欧の言葉遊びなんですが、日本語ともつながってる感じがある。意味もはっきりわからないんですけどね。他の曲も、伝統的な民族音楽というより、ここ150年くらいで生まれた、面白い言葉が使われている曲を基本的には入れています」

――トクマルさんの音楽って、基本的にひとり多重録音で作られていますけど、ライブではバンドでそれを解き放つじゃないですか。今回その面白みがスタジオ作品に入ってきたとも言えるのかも。

「ライブについては、2種類の自分がいると思っていて。スタジオ作品には僕が理想としている表現があるんですけど、ライブハウスは100人規模くらいのハコが大好きで、その環境での演奏は僕が家で聴くときに理想としてる音楽じゃない。でも、そこでしか生まれない生の音でやってみて、すごいミスをいっぱいしたりしても、そこで今生成されている音楽が面白い。僕にとっては動的であるという感覚が重要なんです。だから、僕はよく他人のライブとかの現場にいるのかもしれない(笑)」

――今言っていたことは、今回の〈勝手に生成されてゆくような音を散りばめたい〉という意識ともリンクするかもしれないですよね。そして、そういう感覚には海外のオーディエンスのほうが敏感な気もする。

「それはまったくおっしゃる通りで、日本の音楽教育がもたらした悲劇でもあるんですよ。音楽とはこういうものである、これを歌いましょうね、こう演奏しましょう、と教え込むような教育ばかりになってしまうと、動的に音楽する経験が疎かになってしまう。

生活のなかで生まれてきた音に反応して、それを共有して楽しんで、そして、もっと何か面白いものはないかなと探す。そういう日常のなかから育まれる音楽をもう一回取り戻さないと」

――トクマルさんがテレビアニメのサウンドトラックを担当している「ちいかわ」にも、音楽教育としての要素がありますよね。〈この変な音なに?〉みたいな。

「そうですね。実際、『ちいかわ』の音楽も、僕はこの新作と並行して作っていました。結構似てる部分があるんです。『ちいかわ』の世界観ってすごく繊細で、一個一個の音を当てる意味を考えるという作業を、結構綿密にやっています。それは見ている人にいきなりは伝わらないかもしれないけど、意味はある。

本気でやればやるほどあの世界観が面白くなっていくのも僕自身にとって発見でしたし、こういう音楽の当て方だったらずっとしていたい。僕が『ちいかわ』の音楽をやってることをみんな結構面白がってくれたり、不思議がってくれたりするんですけど、僕としてはかなりフィットしてるんですよ。僕を選んでいただいてありがとう、という感じです(笑)」

 


RELEASE INFORMATION

トクマルシューゴ 『Song Symbiosis』 TONOFON (2024)

リリース日:2024年7月17日(水)
品番:TONO-14
価格:3,300円(税込)

TRACKLIST
1. Toloope
2. Counting Dog
3. Frogs & Toads
4. Hitofuki Sōte
5. Abiyoyo
6. Kotohanose
7. Sakiyo No Furiko
8. Resham Firiri
9. Bird Symbiosis
10. Canaria
11. Atte Katte Nuwa
12. Bamboo Resonance
13. Mazume
14. Chanda Mama Door Ke
15. Oh Salvage!
16. Hora
17. Autumn Bells
18. Akogare

アルバム特設サイト:https://www.shugotokumaru.com/songsymbiosis

■アルバム購入者特典
・一般店舗:ポストカード(ランダムで直筆サイン入り)

 

LIVE INFORMATION
トクマルシューゴ Song Symbiosis Release Tour

■東京公演
2024年8月9日(金)東京・渋谷 WWW
開場/開演:18:30/19:30
券種:スタンディング
前売料金(税込):4,500円(一般)/2,500円(学割・大学生~中学生)
ドリンク:D代別

■大阪公演
2024年10月3日(木)大阪・梅田 シャングリラ
開場/開演:19:00/19:30
券種:スタンディング
前売料金(税込):4,500円(一般)/2,500円(学割・大学生~中学生)
ドリンク:D代別

■名古屋公演
2024年10月4日(金)愛知・名古屋 新栄 シャングリラ
開場/開演:19:00/19:30
券種:スタンディング
前売料金(税込):4,500円(一般)/2,500円(学割・大学生~中学生)
ドリンク:D代別

■チケット
一般発売日:2024年6月22日(土)10:00〜
イープラス<全公演共通>:https://eplus.jp/shugotokumaru/
チケットぴあ<全公演共通>:https://w.pia.jp/t/shugotokumaru/
ローソンチケット<全公演共通>:https://l-tike.com/shugotokumaru/

枚数制限:お1人様4枚まで
発券形態:紙、電子チケット併用
個人情報取得:購入者のみ取得
入場制限:12歳以下は入場無料
注意事項:学割は大学生以下、中学生まで対象 ※当日要身分証提示
企画/制作:SMASH
主催:各地イベンター

東京公演お問い合わせ(SMASH):https://www.smash-jpn.com/ 03-3444-6751
大阪公演お問い合わせ(SMASH WEST):https://www.smash-jpn.com/ 06-6535-5569
名古屋公演お問い合わせ(JAILHOUSE):https://www.jailhouse.jp/ 052-936-6041
総合お問い合わせ:SMASH

 


PROFILE: トクマルシューゴ
様々な楽器や非楽器を用いて作曲・演奏・録音をこなす音楽家。2004年、米ニューヨークのインディレーベルより1stアルバムをリリース、各国のメディアで絶賛を浴びる。以降、国内外でのツアーやフェスへの出演、映画・舞台・CM音楽の制作など幅広い分野で活動し、2011年からは自身が主宰するトノフォンによる〈TONOFON FESTIVAL〉も開催。近年はEテレ「ミミクリーズ」やアニメ「ちいかわ」の音楽を担当。保育研究にも携わるなど活動のフィールドをさらに広げている中、2024年7月、8年ぶりとなるアルバム『Song Symbiosis』をリリースした。
オフィシャルサイト:https://www.shugotokumaru.com/