彼のDJプレイを体感したことがあるなら驚いたりしないのだろうが、作品だけを追ってきたリスナーならきっと面食らうのではなかろうか。フローティング・ポインツことサム・シェパードの5年ぶりとなるオリジナル作品はなかなかに骨太なダンス・ミュージック路線。女性ヴォーカルをチョップしたカットアップ・ハウス“Vocoder (Club Mix)”、哀愁ズンドコ・エレクトロ“Birth4000”、海底を潜り続けるダーク・テクノ“Del Oro”など、完全に振り切ったサウンドはもはや潔し。宇多田ヒカルのプロデュース仕事も素晴らしかったが、〈多才〉の一言で片づけてしまうには深すぎる懐に脱帽であります。