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人間性は他者がいないと存在しない

――2つのコンセプトについてもお伺いしたいです。まず『MANSTER』は〈人間の外づら、他者から見た時の性質がテーマ〉。そして『MANTRAL』は〈ニュートラルな時の人間性〉〈ごく自然体でなにものにもなろうとしていない自分〉がテーマだとされています。これは雄貴さんの発案ですか?

雄貴「自分発信ですが、メンバーと一緒に過ごしている中で人生の話から本当にくだらないことまで色んな話をしていて、そういうことのすべてがアイデアやテーマとして形になっていくんです。

人間の本性ってあるじゃないですか。普段は優しい人が急に逆のことをしたら、それが本性だと思われるとか。でも本性ってそういうことじゃなくない? 本性っていっぱいあるよね、という話をメンバーとしていたんですよね。たとえば、メンバーの誰かが恋人につらく当たるタイプだったとして、それを知ったからといって〈お前のこと嫌いだわ〉とはならないんじゃない?って。もちろん恋人を酷く扱うのは悪いことなんだけど、それはその人の本性の一つで、バンドで見せている面はまた別の本性だと考えられたら、みんな他人に優しくなれるんじゃない?っていう。そういう、人間がそれぞれの場所に向けた複数の本性が『MANSTER』のテーマですね」

――よくわかります。

雄貴「逆に、風呂上がりにパンツ一丁でソファーでぼーっとしているような一人の状態が『MANTRAL』。そういうタイミングに限って、〈そういえば小学校の先生がこんなことを言ってきたな~〉とか謎の記憶がピュって思い浮かんだりして。僕はそういう無の状態で思い起こす記憶が曲になりやすいんですけど、それを『MANTRAL』で描いてみたかったんです。

〈表裏一体〉と言うと表と裏だけで網羅したように聞こえるけど、そうじゃなくて、たくさんある人間性のうちの2つを切り取って作品にしてみようと思いました。描き足りないことはたくさんあるんですけど、ちょうどメンバーの人生のテーマになってきていることで、今の僕らが高い解像度で描けるのはこの2つかなと」

――このテーマをみなさんはどう受け止めていますか?

岩井「僕ら4人、似ているけど当然ちがうんですよね。共通している部分はあるけど、それぞれが別の場所で別の顔を持っていると思います。

それと人間性って、他者がいないと存在しないものじゃないですか。誰かの行動や発言への反応や反射で出てくるものが人間性だと思います。音楽を作る側と聴く側の関係に似ているかもしれないけど、結局、他者がいないと自分を定義できない。なので今回描いた2つの面以外の人間性が、ほかに無数に存在すると思います。

それと、このメンバーでずっと一緒にいるのに新しい面が見えてくることがパワーやエネルギーに繋がっていると思いますね。だから新しいものを作った実感はあるけど、この2作はすごくGalileo Galilei的だとも思います」

岡崎「打ち上げとかで話題になるのが、プライベートの自分とGalileo Galileiでの自分がいるってことだったんですよね。4人がリスペクトしあう状況が続いている環境で自分も人間として成長できている感覚があるので、その関係値が前作より濃く出ているのがこの2枚だと思います」

和樹「これだけ深くメンバーと関わっていると、全員の色んな面を見る機会が増えてくるんですよね」

岩井「酸いも甘いもね」

和樹「うん。いいところも、もちろん悪いところも。深く知っているメンバーだからこそ今回のテーマは身近に感じられたと思います」

 

〈どう彫るか〉ではなく〈どの素材を彫るか〉

――無用な比較かもしれませんが、『南下する青年』は突き詰めて作られたアルバムだと思います。でも、この2作はコンセプチュアルでありながらも、いい意味で自由さやラフさ、リラックスした感覚があるんです。

雄貴「作ろうとして作ったのが『南下する青年』なんです。でも今回は最初に素材があって、でっかい石の塊を前にして〈なんか見えるね〉〈うん、見える見える!〉〈タイトルは『MANSTER』と『MANTRAL』かな〉〈10曲ずつぐらいかな〉なんて言いながら、ぼんやり彫りはじめた感じでした。ゼロからイチにして作ったのが『南下する青年』で、今回は100あったものを削っていって20と20に分けた、みたいな感じがしますね」

――ルネサンス期の彫刻家みたいな考え方ですね。ミケランジェロが〈石の中にすでにある形を取り出すだけ〉と考えていた、というような。

雄貴「仏像を彫る方も〈木の中に仏が見える〉と言いますよね。今回は〈どんな形に彫るか〉じゃなくて、最初の素材選び、つまり〈何に対してミノを突き立てるか〉が重要で、その点で意識が統一できたのが大きかったんじゃないかな。何もない土台に粘土を足していく作品があれば素材を彫っていく作品もあって、今回は後者の作業でしたね」