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楽器奏者として生演奏の強みに立ち返ろう

――アレンジを担う菊池さんとしては、本作のサウンド面でのテーマや意識したことは何かありましたか?

菊池「このバンドをやるまでパソコン上で曲を制作する技術を持っていなかったので、特に『Tide Pool』(2022年)以降は、ジャック・アントノフとか今バリバリ活躍しているプロデューサーの音源を聴いたり、色んな機材を学びながらやったりしていたんですけど、今回はちゃんと生で演奏することに立ち返ろうという時期ではありました。今だったら安易にトラックを増やして編集しちゃうところを、演奏のニュアンスを変えることで解決しよう、みたいな。プロデューサーやアレンジャーではなく、自分は楽器奏者としてずっとやってきたので、そこの強みを思い出してもいいかと思いました」

――サウンド面では“Kids”や“憧れの人生”を筆頭にエレキギターがソロパートも含めて前面に出ているのが印象的でした。

菊池「自分はギタリストではないから、意識しないとアレンジのアイデアの中心としてギターが入りにくいんです。でもエレキギターを中心としたアンサンブルってやっぱり王道なので、ビートルズっぽい曲をやってみたり、普通のバンドマンが通る道を一回通ってみようと思ってやりました」

――本作のギターはライブでのバンドメンバーでもある朝田拓馬さんや西田修大さんも弾いていますが、ライブの経験を重ねたことがこのサウンドにも表れたのでしょうか?

菊池「いや、ライブのメンバーでレコーディングをすることにはこだわっていないですね。技術的にできないものはプレイヤーにお願いするしかないので、一部手をお借りしましたが、今回はむしろ今まで以上に1人で演奏している曲が多いです。

細かいニュアンスは自分が一番わかっているし、レコーディングに何日も付き合っていただくのは申し訳ないので、弾けるものは自分でやった方が楽だし早いという結論になっちゃっています。だからかどんどんと新しい楽器が増えていってしまっています」

――今回新しく導入した楽器は?

菊池「今回からベースを自分で弾く曲もありましたし、甫木元もトランペットを吹いていますね。買ったのに弾くのが下手すぎて、次の作品までにレコーディングで使えるよう練習しているものもあります」

甫木元「普通の人はそんなにいっぱいできないんですけどね(笑)」

――作品を制作するごとにどんどんマルチプレイヤーになっていきますね……(笑)。甫木元さんとしては、本作のサウンドやアレンジ面での菊池さんの仕事ぶりにはどんな印象がありますか?

甫木元「自分が弾き語りで作った“聞かせて”がこんなアウトロになるとは、驚きましたね。でもびっくりするだけじゃなくて、今回は全部アレンジの温度感がちょうどいい。

“Kids”や“Mirror”って自分たちの中ではかなり王道のポップスで。特に“Mirror”は映画主題歌なので、エンドロールで流れる曲のテンションとして、これ以上音を重ねると絶対に過剰になっちゃうんです。だから気のいい友達というか、お前いいやつだなぁと思える曲が揃っていると思いました(笑)。

その一方で“憧れの人生”とか“聞かせて”のアウトロは〈本当にいいやつなのか?〉と疑念を抱かせるような二面性もある。こんなアルバムにしようと話したわけでもないし、今までとは違うことをやろうとしたわけでもない。今までと地続きにある中でこういうアルバムになったのはよかったですね」