ソロや新バンド、作曲やプロデュースで活躍する休止後のメンバー
その後の各メンバーの動向としては、まずソロプロジェクトを始動させたのがTAIKING。ギターのみならず、マルチインストゥルメンタリストとしての才とマイルドな歌い口も披露しながら、風通しの良いソウルポップを展開。数々の配信シングルに加え、これまでに2枚のEPと1枚のフルアルバムを発表しており、2024年は荒谷翔大、YONCE、iriをフィーチャーした配信曲をコンスタントに送り出している。また、ギタリストとしてのサポート/客演仕事もさまざまで、オカモトコウキ(OKAMOTO’S)、吉澤嘉代子、なとり、藤井 風、RADWIMPS……とその名を見かける機会は多い。
サポートミュージシャンとしての活躍と言えば、鍵盤奏者のTAIHEIにも当てはまる。STUTS、Yogee New Waves、Rei、七尾旅人、Haruy(彼女の初作には、TAIHEIが書き下ろした楽曲と共に生前のHSUによる提供曲も)……と、参加アクトを挙げると枚挙にいとまがない。かつ、リーダーバンドである賽ではジャズをベースにしたソフィスティケートなサウンドを聴かせ、ヒップホップにも接近。配信シングルのほか、ドラムレスな作品と多彩なゲストを迎えたビート主体の一枚という2つのミニアルバムを同時にリリースしたりと、おもしろい試みを重ねている。
そして、フロントマンのYONCEは、STUTSのプロデュースによる音楽集団、Mirage Collectiveの作品やThe Street Slidersのトリビュート盤、松任谷由実のコラボアルバムなどへの客演を経て、5年ぶりに復活した古巣のOLD JOEと、自身が率いる5人組バンド、Hedigan’sの動きが昨年頃より活発化。後者では肩の力の抜けたブルース~ルーツミュージックを鳴らし、今年2月の初EPに続くファーストアルバム『Chance』をこの11月にリリースしたばかりだ。
また、OKとKaiki Oharaもさまざまなバンドでそのプレイを披露しており、OKは元すばらしかの林祐輔によるゆうやけしはす、その日の天使などに参加。前者にはKaiki Oharaもギタリストとして名を連ね、ほかにもMagical Lizzy Bandやslow baseではギターのみならずベースの腕前も公にしている。サイケデリックブルースやアシッドフォークなど、兄弟のいずれもアンダーグラウンドな空気が濃厚なロックンロールサウンドを奏でているが、特にKaikiは今後のSuchmosにおいてどのような役割を担っていくのかも楽しみなところだ。
Kroi、chillspot、離婚伝説……Suchmosが与えた影響
ソウル~R&B、ジャズやヒップホップをお茶の間クラスのメインストリームポップとして響かせた、しかも商業主義とは距離を置いた、内なる創造性に忠実なやり方で――という点において、Suchmosがその後のシーンに与えた影響は大きい。そういった意味では、ほぼ同期と言えるNulbarich、King Gnu、Official髭男dism、その少しあとにメジャーシーンへ駆け上がったKroi、Penthouse、BREIMEN、そしてSuchmosのメンバーがライブや作品に関与しているVaundyや藤井 風あたりは近しい道を歩んでいるのではないだろうか。
一方で、新世代勢から音楽的な面で繋がりそうな面々を挙げてみると、まずはSuchmosをデビュー時の指標としていた、あるいはルーツに挙げつつ楽曲のコピーもしていたというchillspotとOchunism。また、ストレートなフォロワーとは言えないものの、Suchmosと同様にセッションを土台とした黒いポップスを鳴らすHALLEYや、洗練と野心が交錯するテクニカルなジャズポップを繰り出す新東京、いい意味でのいなたさや歌謡性も備えた離婚伝説らのファーストアルバム群は、〈ブラックミュージックを素地としたJ-POP〉をフレッシュに聴かせる2024年の一枚として推しておきたい作品たちである。
そして、本稿の主役であるSuchmosの今後だが……2025年6月の横浜アリーナ公演に向けた5人のコメントを見るに、大舞台以降の動きも期待してよさそうだ。2025年はSuchmosのデビューからちょうど10周年となる年。その先の10年、また10年と新たな王道を築いていくバンドの姿を引き続き追いかけていきたい。
LIVE INFORMATION
The Blow Your Mind 2025

2025年6月21日(土)神奈川・横浜アリーナ
開場/開演:17:00/18:00
2025年6月22日(日) ※追加公演
会場:横浜アリーナ
開場/開演:16:00/17:00
全席指定:9,500円(税込)
18歳未満:7,500円(税込)
主催:HOT STUFF PROMOTION
企画制作:SPACE SHOWER MUSIC/BIAS & RELAX adv.
問い合わせ:HOT STUFF PROMOTION 050-5211-6077(Weekday, 12:00〜18:00)
https://www.red-hot.ne.jp/
PROFILE: Suchmos
2013年1月結成。ロック、ジャズ、ヒップホップなどブラックミュージックにインスパイアされたSuchmos。メンバー全員神奈川育ち。ボーカル・YONCEは湘南・茅ヶ崎生まれ、レペゼン茅ヶ崎。都内のライブハウス、神奈川・湘南のイベントを中心に活動。バンド名の由来はスキャットのパイオニア、ルイ・アームストロングの愛称サッチモからパイオニアとなるべく引用。YONCE(ボーカル)、TAIKING(ギター)、HSU(ベース)、TAIHEI(キーボード)、Kaiki Ohara(DJ)、OK(ドラムス)。2021年2月「修行の時期を迎えるため」バンドの活動の一時休止を発表。2024年10月バンドの始動を発表するとともに2025年6月21日(土)、22日(日)に横浜アリーナでのワンマンライブ〈Suchmos「The Blow Your Mind 2025」〉の開催を発表。
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