それぞれロック・シーンでキャリアを重ねてきた3人が2022年に結成したtenbin O。2023年のファースト・アルバム『Lack Of Heroism』で話題を集めた彼らがセカンド・アルバム『illegal positive』を配信で発表しました。前作に比べて、グルーヴィーでダンサブルなサウンドを鳴らしていますが、これにはライヴでの経験が影響しているそう。
「ファースト・アルバムがわりと静かでダークな作品だったので、ライヴもしんみり聴かせる感じになっちゃって。もっとショーっぽく見せたいなとなり、ノリのある曲を増やしたんです」(KD)。
リズミカルな印象に貢献しているのが、多くの楽曲で使われているパーカッション。
「パーカッションは全員で演奏しています。各人の楽器を録り終え、ある程度完成したあとで、より効果的に聴かせるために打楽器を増やすというアイデアが出てきたんです。3人が自分のパートだけでなく、楽曲全体を見てクリエイティヴな意見を出し合えるようになりましたね。たとえば“Target Organ”の間奏のリズム・パターンやトランペットの使い方は、石井(さやか)ちゃんが考えてくれたり」(KD)。
その“Target Organ”やポスト・パンク調で曲名にもニヤリとさせられる“tenbinbin”、エキゾ・ファンクな“Waste Of Time”など、アルバムの前半にはとりわけ踊れる曲を収録。その一方、ウィリアム・バロウズとアレン・ギンズバーグによる「麻薬書簡」を着想源に密林をイメージしたという“Exotic Banana Pita”、長尺エディットが欲しくなるダウンテンポの“Cassandra Moon”、ダビーな“Solve Your Problem”など、後半にはグルーヴの心地良い楽曲が揃っています。
「“Solve Your Problem”のホーンも石井ちゃん発案だったよね。ドイツで音楽家として活動している兄に吹いてもらいました」(松浦空洋)。
制作面、演奏面双方でトリオならではの化学反応が起きている『illegal positive』を経て、tenbin Oはアイデンティティーをより強固にしたと言えます。
「このアルバムを聴いていると、3匹の生き物が動いているようなイメージが浮かびますね」(石井さやか)。
「1人が先導するのでなく、3人それぞれが枠に収まらない個性を発揮できているのがいいなって。自分が思い描く理想のバンドの姿になってきましたね」(KD)
tenbin O:KD(ヴォーカル/ベース)、石井さやか(ギター)、松浦空洋(ドラムス)から成るロック・バンド。このたびセカンド・アルバム『illegal positive』を配信リリースしたばかり。