「歌モノ未満、かつビート・ミュージック未満みたいな音楽を作りたかったんです。どっちの良さも残しつつ、〈これは何々〉と認知できないラインがいいなって」。
先日リリースしたファースト・アルバム『Still Sounds』の方向性をTill Yawuhはそう説明します。2001年生まれのトラックメイカー/シンガー・ソングライターである彼は、ダフト・パンクの『Random Access Memories』でダンス・ミュージックに開眼。以降、The xxやデイデラス、ムーディーマンなどに触手を広げ、10代半ばに音楽制作を始めました。
「最初はインストを作っていたんですけど、大学に入った2020年頃から歌うようになりました。ヴォーカリストとしては、サンドロ・ペリ、ディーン・ブラント、キング・クルールあたりの影響が強いと思います」。
2022年にLocal Visionsより発表したファーストEP『何もないです』は、現在の作風よりも内省的な印象。独特の翳りを持つ歌声、メランコリックかつフリーキーなギターはドゥルッテイ・コラムなどポスト・パンク時代のフォークを想起させます。以降は、KAKUBARHYTHMを拠点にしつつ、Sauce81を共同プロデュースに迎えたセカンドEP『To-ri』を2023年にリリース。今回の新作『Still Sounds』も同じ体制で作られており、アブストラクトかつグルーヴィー、彼の言葉を借りると〈ジャンルでは区分しにくい〉12曲が収録されています。Till Yawuhと同世代の若きラッパーやトラックメイカー4組の参加にも注目。
「DENYEN都市というコレクティヴのメンバーである(浅井)杜人くんは、ポップなものが合う印象なので、いちばんキャッチーな“jamiefoxx”にラップを加えてもらいました。綿貫雪、Rhino kawara、cvelの3人はトラックメイカーでありつつ、それぞれギターやピアノ、ビート・エディットと得意分野を持っているので、そこを曲の核心に据えて」。
緻密なビートが絡み合うIDM、黒光りするコズミック・ソウル、バレアリックなハウス、ロウな感触のベッドルーム・ポップなど、さまざまな音楽性が点滅する『Still Sounds』。ここを起点に、どんな場所にでも行けそうなTill Yawuhですが、はたして次に向かうのは?
「今回、共作によって、予想外のものが出来る楽しさを感じたんです。なので、いろいろな人とのコラボは続けたいなと。そのうえで、次はポップスというものに本気で取り組んでみたいと考えています」。
Till Yawuh:東京在住、2001年生まれのプロデューサー/シンガー・ソングライター/DJ。2021年から楽曲の発表を始め、このたびファースト・アルバム『Still Sounds』を配信リリースしたばかり。