CDのポテンシャルを最大限発揮できたリマスター
――ZARDのリマスターの歴史を振り返ると、最初は2006年のデビュー15周年の時のベスト盤(『Golden Best ~15th Anniversary~』)で、クリス・ベルマン(バーニー・グランドマン・マスタリング)によるリマスタリングです。
「あれは低域がガチっとしているというか、ベーシックな部分が決まっていて、なかなかいい感じなんですよね」
――5年後の20周年の時に島田さんが全てのシングルとアルバムをリマスターして(『ZARD ALBUM COLLECTION ~20th ANNIVERSARY~』)、25周年が先ほどお話に出た4枚組のベスト盤で、高品質のBlu-spec CD2仕様。そして30周年の時にもう一度、全アルバムのリマスターをされています。
「『ZARD Forever Best ~25th Anniversary~』の時のCDと、CDのマスターとなるマスタリング済み音源の音質は、聴き比べるとちょっと違うんです。でも今回のCDとマスタリング済み音源を比較すると、その差は自分でも聴き分けられない。それぐらい素晴らしい音質になっていると思うので、現時点でCDの持っているポテンシャルを最大限に発揮できたかなと思っています。
ただ感じ方は十人十色なので、聴く人によって過去の思い出も違ってきますから、前の方が良かったとか、そういうものが出て来るのはしょうがないことですけど」
――リマスターの意識として、時代性というか、〈今の時代に求められている音とは〉という意識もあったりしますか。
「あります。そういう意味で最新の良い機材を借りたということがあって、おかげで薄い膜が1枚取れた感じがします」
――おっしゃったように、音楽の聴こえ方には良い意味で個人差も、時代の違いもありますよね。90年代にリアルタイムで聴いていたZARDの音って、すごく派手というか、 華やかに聴こえたんですけど、今回は少し落ち着いた感じに聴こえたんですよね。それこそ、個人差かもしれませんが。
「それは、90年代に求められていた音と、今の時代に求められている音が違うということもあると思います。今現在の音作りはベースとかドラムのキックとか、低域が中心なんです。高域のシャカシャカした部分はそれほど重視されないというか、あんまり派手にはしないんですよ。だから今回も、昔の音源ほどシャカシャカはしていないと思います。
ただZARDの場合は、第一はやっぱり本人の声質があるので、その兼ね合いが大事なんですね」
AIなど先端技術も駆使したノイズ除去
――そのほかに、今回新しく試みた技術というと?
「どの曲というわけじゃないんですが、元の音を今の機材を通して聴いた時に、リップノイズ(唇を動かす時のノイズ)がすごく目立つんです。それを今回、聴いていて気になる箇所は全部処理しています。
それと、たとえば“あの微笑みを忘れないで”は曲の頭が静かに始まるんですが、(アカペラのコーラスを流しながら)ここは素の音なんですが、当時の技術だと、コーラスを重ねるとどうしても部屋の空調音とかが前に出てきちゃうんですよ。今回はそれを全部AIで抑えています。これはちょっと時間がかかりましたね」
――波形グラフを見ると一目瞭然ですね。なるほど。
「音質を変えることとは違うんですが、デジタルになるとどうしてもノイズが気になっちゃうので、特に音の立ち上がりのノイズは一個一個全部処理しています。一遍にやることもできるんですけど、そうすると全体の音質が変わっちゃうので、自分の中でこだわりとして、ノイズの部分だけをつまんで差し替えています。
それは前回のベスト盤でも多少はやっているんですけど、レベルが違うというか、今はAIがどんどん発達しているので、それを最大限に駆使したのが今回のベスト盤という形になります」