コラム

DJ Mitsu the Beats 『CELEBRATION OF JAY』―己の流儀を貫いたJ・ディラへのトリビュート作品

【芸術の秋、スポーツの秋、Jazzy Sportの秋】 Part.2

DJ Mitsu the Beats 『CELEBRATION OF JAY』―己の流儀を貫いたJ・ディラへのトリビュート作品

 J・ディラ関連の楽曲を使いまくって“So Far To Go”で結ぶというBBE音源のミックスCD『The BBE Sessions』での振る舞いを知る人なら、あるいはソロ作『A WORD TO THE WISE』にエルザイを招いていたことを覚えているなら、非常に合点の行くプロジェクトだろう。8月にbandcampで先行配信され、このたびCDリリースも実現したDJ Mitsu the Beatsのニュー・アルバム『CELEBRATION OF JAY』は、2006年にこの世を去ったJ・ディラに捧げる作品となった。

DJ Mitsu the Beats CELEBRATION OF JAY Jazzy Sport(2014)

 もちろんディラに影響を受けたというクリエイターは数限りないだろうし、そうでなくてもマッドリブDJカムター・クーJ・ロウルズ、そしてロバート・グラスパーらによる追悼をすぐに思い出せるほどではあるが、今作でMitsuが試みたのは故人の模倣やカヴァーではなく、〈自分が影響を受けながら模索し、今現在こうなったという姿を捧げる〉行為である。つまりは、ディラの影響を受けてきた己のスタイルそのものを捧げているというわけだ。このタイミングでの登場となったのは、(資料などでは特に触れられていないが)故人の生誕40年を祝う意味合いもあるのかもしれない。

 アルバムはすべてインストの全20曲で構成されており、あえて主題を無視してここ数年の『Beat Installments』のシリーズ第3弾として楽しんでしまっても構わないと思う。それほど、ここでのMitsuのビートはお題に縛られることなく俺節の作法を貫いているのだ。逆に言うと、デビュー時から彼の仕事ぶりにはウマー期のプロダクションの影響が垣間見えていたわけだし、歳月を経て血肉化された自身の流儀を無心に磨き上げることがそのままディラへのトリビュートになるのだという強い意志も窺えはしないだろうか。全体の傾向としては、これまでのインスト作以上にファットな鳴りを意識した側面が際立っていて、特に“off-ramp”から中盤にかけての流れには心地良さを噛み締めるより先に身体が反応するはず。GAGLEの作品もまだ記憶に新しい折ではあるけれど、今回のビートを用いたラップ・アルバムが聴いてみたくなるような、そんな快作である。

 

 

▼関連作品

左から、DJ Mitsu the Beatsの2013年作『Beat Installments Vol.2』(Jazzy Sport)、BLU-SWINGの2014年作『ARRIVAL』(SELECTIVE)、KINGDOM☆AFROCKSの2014年作『キングダム☆アフリミックス』(Gumbo Groove/PLANET GROOVE)
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