6分間に渡るノイズ・シンフォニー“救世なき巣”で幕を開ける本作は、彼ら史上もっとも野心的で、挑戦的なアルバムである。ノイズまみれのハードコアな楽曲たちは、若く血気盛んな時期のソニック・ユースのようであり、日本で言えば灰野敬二や非常階段の系譜に連なると言えるが、“Sturm und Drang”で聴くことのできる超音波のようなシャウトは、間違いなくこのバンドならではのもの。かつ、そんななかで“僕らはなんだったんだろう”のようなデカダンなラヴソングをまったく同じ強度で鳴らせていることも、本作がスペシャルな理由である。自主レーベルの設立後、作品の発表形態やプロモーション方法で独自性を打ち出してきたが、ついに録音物としても決定打を作り上げたと言っていいだろう。