Page 3 / 4 1ページ目から読む

2005年の空気

 そのアルバム本編に多数のボーナス・トラックを加えたのが、今回日本でのみ2枚組CDで登場する20周年記念盤だ(LPは輸入盤のみ)。まず、アルバム本編を含むDisc-1は、当時の拡張版〈プラチナ・エディション〉に準拠した内容。その追加パートには、“We Belong Together”路線でヒットした“Don’t Forget About Us”や、ジョデシィ“Freek’n You”を引用した“Makin’ It Last All Night (What It Do)” といったJD絡みの曲などが含まれ、本編の興奮を後押しする。

 Disc-2は、当時シングル・リリースされた曲の既発リミックスなどで構成。トゥイスタの同年作『The Day After』にも収録されたロドニー・ジャーキンズ制作の“So Lonely (One & Only Pt. II)”を除く13曲は、すべて日本初CD化。デヴィッド・モラレスやピーター・ラウホファーらによる主要曲のハウス〜ダンス系リミックスは90年代からのお約束企画だが、Disc-2やプラチナ版の追加音源を聴くと、本編でも垣間見えた時代やトレンドへの歩み寄りが、より明瞭に感じられる。

 例えばファット・ジョーを招いた“It’s Like That (Scott Storch Remix)”。このエスニック感は、同じくスコット・ストーチが手掛けたビヨンセ“Naughty Girl”を踏襲したのだろう。また、スウィズ・ビーツ制作の“Secret Love”はピアノの打音も含めてアリシア・キーズの雰囲気に近い。これらは、当時のマライアがビヨンセやアリシアと同列の存在であったことを物語る。

 台頭著しかったラフ・ライダーズやディプロマッツといったNYのヒップホップ軍団との手合わせも時代感を伝える。“Don’t Forget About Us”のリミックスのうち、ファボラスとスタイルズ・Pが客演したDJクルーのデザート・ストーム版、ジュエルズ・サンタナ&ボーン・サグズン・ハーモニー客演版、キャムロン&ジュエルズ・サンタナを迎えた“Your Girl”のディプロマットによるリミックスなどのことだ。また、“Shake It Off (Remix)”ではジェイ・Zに加えてジーズィ、“Say Somethin’ (So So Def Remix)”ではデム・フランチャイズ・ボーイズを招くなど、JDと組んだ延長でサウス・ヒップホップの勢いにも便乗。2005年の空気が鮮烈に蘇ってくる。

 アップデートもされている。輸入盤で登場する2LPには、2021年発表のジャジーな“We Belong Together (Mimi’s Late Night Valentine’s Mix)”も収録。いまもなおクリスマスを彩る一方で挑戦を続けるマライアに出会える。先日は、来る新作に向けて、プライヴェートでも親密な仲だと噂のアンダーソン・パークと共同作業中であることも報じられた。

 本アルバムの20周年を謳ったツアーの一環として、今秋には7年ぶりの来日公演も決定。2000年代R&Bの最高傑作を実演で拝む日が待ち遠しい。

マライア・キャリーの2002年作『Charmbracelet』(Island)

左から、トゥイスタの2005年作『The Day After』(Atlantic)、ディプロマッツの2005年作『More Than Music Vol. 1』(Diplomat/Koch)、ヤング・ジーズィの2005年作『Let’s Get It: Thug Motivation 101』(Def Jam)、ボーン・サグズン・ハーモニーの2007年作『Strength & Loyalty』(Full Surface/Interscope)