©Louise Patricia Crane

キング・クリムゾン一派のシンガー/ギタリストが新作を完成! 美声と幻惑的な演奏が醸造する英国ロックの旨味を堪能すべし!

 キング・クリムゾンの最後と予想される来日公演から約4年。そのライヴでも名曲“Starless”でスワン・ソングを歌い切ったジャッコ・ジャクジクがニュー・アルバム『Son Of Glen』を完成させた。

JAKKO M. JAKSZYK 『Son Of Glen』 Inside Out/ソニー(2025)

 ジャッコが音楽ファンに広く認知されたのは、2000年代前半にイアン・マクドナルドやジャイルズ兄弟が結成した21stセンチュリー・スキッツォイド・バンドにて、グレッグ・レイクとジョン・ウェットン(いずれもキング・クリムゾンの歴代ヴォーカリスト)の中間のような美声を披露してからで、それ以前の活動を知る者は少ない。振り返ると、彼は76年に64スプーンズに加入し、プロの音楽家に。このバンドはジャズ・ロックを志向しており、ジャッコも現在とは違うアラン・ホールズワース的なギターを弾いているのがおもしろい。

 以降、キンクスなどのサポートを経て前述のスキッツォイド・バンドへ。そこでロバート・フリップとの交流が始まり、連名での『A Scarcity Of Miracles』(2011年)発表後にクリムゾンに加入。2021年までフロントマンとして活躍したのはご存じの通り。

 長く消息不明だったというジャッコの父親が着想源になったという『Son Of Glen』は彼らしい牧歌的で優しいヴォーカル曲と、プログレ的な楽曲が共存するアルバムだ。前者を代表するのは“Somewhere Between Then And Now”で、暗い雲に覆われた英国の農村風景を思わせるフォーク調のアレンジと、語りかけるようなヴォーカルが秀逸。対して挑戦的かつ攻撃的な“(Get A) Proper Job”とそれに続く表題曲はプログレッシャーにオススメ。ギター好きは“This Kiss Never Lies”後半のフリップ風ギター・ソロをぜひ聴いてほしい。

 本作を聴けば、ジャッコが非常に英国色の強い音楽性を持つミュージシャンだと実感できるだろう。あくまでフリップのコントロール下にあるクリムゾンとは異なる、彼自身の音楽にこのアルバムで触れてみてほしい。

左から、ジャッコ・ジャクジクの2020年作『Secrets & Lies』(Inside Out)、キング・クリムゾンの2021年のライヴ盤『Music Is Our Friend: Live In Washington And Albany, 2021』(DGM)