マヤ・デライラ、バリー・キャント・スウィムら期待の新星たちにも注目
小田「ここまでは高いスロットのアーティストを中心に紹介してきましたが、もう少し広い視野で今年のラインナップを見ていきましょうか。
一応洋楽に限定すると、ヤハウェ・ネイルガンのライブは絶対見たいです! NYを拠点とする4人組で、紹介文などでは〈エクスペリメンタルロックバンド〉と書いてありますが、ピッチフォークでBest New Musicに選出された今年3月リリースのデビューアルバム『45 Pounds』を聴く限り、〈エクスペリメンタル〉なんてワードでは要約しきれない存在だなと。ベースの代わりにシンセ/エレクトロニクス担当のメンバーがいるところも異色で、ハードコアなシンセノイズやマスロック風のアンサンブルなどは初期のアニマル・コレクティヴやバトルスあたりを連想させます。2日目のRED MARQUEEに登場するので要チェックです」
天野「ヤハウェ・ネイルガンは私もハマりました。タワーレコード渋谷店の洋楽バイヤー武田晃さんも推していました。
そして冒頭で言ったことにも繋がるのですが、私はとにかくヒョゴ&サンセット・ローラーコースターを推したい! 韓国の人気バンドと台湾のインディバンドの合体形態で、2024年に『AAA』というコラボレーションアルバムをリリースしています。昨年の来日公演を見ましたが、総勢10人がステージに立って、サイケデリックなジャムにも近い分厚い演奏を繰り広げていて圧巻でした。なんだかグレイトフル・デッドやオールマン・ブラザーズ・バンドなんかを思い出して、これは野外で見たいと思ったんですよね。なので、GREEN STAGEはぴったり。それに、スマホで撮った映像をリアルタイムで使った高度な演出もすごかったんですよ。あらゆる点ですごいので必見です」
小田「今年は初来日組が多いですが、バリー・キャント・スウィムもその一人。スコットランドはエディンバラ出身のジョシュア・マニーによるソロプロジェクトで、フロア志向なハウスビートをベースにジャズやアンビエントあたりの素材も上手く入れ込んで、とても洗練されたトラックメイクは聴き心地抜群。昨年11月に行ったブリクストン・アカデミー公演は3日間のチケットが即完と、ライブシーンでもさらなる飛躍が期待できます。2023年の1stに続く2ndアルバム『Loner』が7月11日(金)にドロップされるので、苗場に向かうまでのBGMとしてもぜひ!」
天野「あと推したいのは、マヤ・デライラですね。ロンドン出身、ブルーノートからデビュー作『The Long Way Round』をリリースしたばかりの若き才能で、元々はTikTokやInstagramに投稿していた歌&ギターのカバー動画で注目を集めていました。ブルーノートということでノラ・ジョーンズなんかも思い出すのですが、すごく繊細で親密な歌を聴かせるんです。しかもジョン・メイヤーをリスペクトした温かいギタープレイが、決して派手ではありませんが巧みかつソウルフルで心地よい。彼女の音楽は苗場にかなり合いそうです。アルバムのリリース前にTOWER VINYL SHIBUYAで取材して、人柄も親しみやすかったんですよね」
アフリカ、ポーランド、韓国など国際色豊かなラインナップに
小田「ここしばらく来日していなかったパフューム・ジーニアスの名前があるのも嬉しいです。活動初期はもっとローファイなサウンドでしたが、ブレイク・ミルズをプロデューサーに迎えて以降はボーカルへの意識が強まり、ソウルやゴスペルの要素も取り込んで表現の幅が広がったように思います。今年の春に出た7作目『Glory』にはジム・ケルトナーやオルダス・ハーディングらがゲスト参加していて、インディーフォーク的な側面が強調された印象です。ゲイであるパフューム・ジーニアスが紡ぐ歌詞は私たち日本人にも響く内容なので、たとえ英語を理解できなくても精一杯耳を傾けてほしいです」
天野「すでに日本で人気になりつつあるメイ・シモネスにも注目です。母親が日本人で、日本語でも歌うことについ反応してしまいますが、先日リリースされた『Animaru』はジャズやブラジル音楽を咀嚼したチェンバーポップ的なアンサンブルがすごいんです。一見ファンシーでかわいらしいイメージを纏っているのに、緻密で巧みでポストロックやプログレ的な音楽世界が展開されています。ギターも上手いし、“Kabutomushi”“Dangomushi”“Zarigani”なんて曲名からもわかる通り、子供の視点に近い動物モチーフの柔らかい世界への眼差しもいい。不思議なバランス感の人ですね。初来日公演ですし、彼女の音楽も苗場の空気にぴったりだと思うので必見です」
小田「ギターといえばポーランドのギタリスト、マーシンも超絶技巧ですごいですよ。角野隼斗とスティーヴィー・ワンダー“I Wish”を演奏している動画が少し前に話題になっていたので、2024年のデビュー作『Dragon In Harmony』もチェックしたんですが、これが作品として素晴らしかった。クラシックギターの速弾きによるアルペジオは音が一切潰れず、細かいフレージングにまでこだわっているのがわかります。ポルトガル・ザ・マンのデラニー・ベイリー、ポリフィアのティム・ヘンソン、日本からはIchika Nitoも参加してるのでギター好きにはぜひ聴いてほしい!」
天野「〈ギターを聴くフジロック〉というのも楽しそうですね。それと韓国インディを代表する存在になった人気バンドのシリカ・ゲルは、去年の来日公演が盛り上がっていましたね。現代的なサイケデリックロックといえばいいのか、R&Bっぽい要素も入った折衷性と猪突猛進な力強さ、自由な実験精神がすごく魅力的。Hedigan’sやbetcover!!のような国内のバンドが好きな人もハマるんじゃないかな。2023年作『POWER ANDRE 99』は名盤なので、フジロックの前にぜひ聴いてください」
小田「今年1月に初来日を果たしたイングリッシュ・ティーチャーは、昨年リリースのデビューアルバムがマーキュリープライズを受賞したりと、UKはリーズ出身の4人組として活躍を期待してるバンドです。リーズといえばカイザー・チーフスやザ・ミュージックなどダンサブルなをアンセムを持つ先達たちを連想しますが、彼女たちはそれらとは別にポストロック/パンクの方に傾倒していて、2020年代前半のサウスロンドンシーンからの影響も感じます。ザ・ラーズっぽい曲もあったりして、単独に行けなかった方はフジロックで初体験してもらえれば!」
天野「ほかにも紹介したいアーティストはたくさんいますが、エムドゥ・モクターはぜひチェックしてほしいところ。〈砂漠のジミ・ヘンドリクス〉なんて呼ばれるアフリカ・ニジェールのトゥアレグ族のギタリストで、マタドールからアルバムをリリースするようになって国際的に有名になりました。いわゆる砂漠のブルースを激化させたような強烈なギタープレイと8分の6拍子系のポリリズムが織り成すトランシーな音楽は、フジロックで聴いたらぶっ飛んでしまいそう。不正義に怒るプロテストの姿勢もかっこいいんですよね。彼らも初来日公演なので絶対に見てほしい!」
