ピンク・フロイド〜ウォーターズに繋がる最近のあれこれ
71年にポンペイの円形劇場で行われた無観客ライヴの映像作品がレストア/リミックスされ初音盤化。ゲスト・ミュージシャンなしでの演奏ゆえ、4人の音が交感しながら巨大なサイケの渦を作り出していく様を存分に味わえる。特にリリース直前だった『Meddle』からの楽曲に蠢くグルーヴが凄まじい。
フロイドいちばんの代表作と言える〈狂気〉をウォーターズが再構築。オリジナルのトリップ感や実験性を後景化させたうえで、クラシカルかつカームにまとめられており、朗読寄りの歌に年輪が刻まれている。“Any Colour You Like”などのダウンテンポ~トリップホップ的解釈も興味深い。
〈This Is Not A Drill〉ツアーがコロナ禍で延期になったことで作られた自宅録音盤。ライヴ・メンバーを母体にしつつ、制作環境もありアコースティック寄りの演奏になっている。最終曲の“Comfortably Numb 2022”のみツアーで録られた音源ゆえ、今回のプラハ公演版と聴き比べるのも一興。
ウォーターズとの再共演を〈絶対にない〉と語るかつてのバンドメイト、ギルモアは9年ぶりのアルバムを昨年に発表。アルト・ジェイなどで知られるチャーリー・アンドリューを制作に迎えての、繊細かつ躍動的な音作りが美味だ。家族と作ったがゆえのインティメイトな空気にも惹き付けられる。
ここではピンク・フロイドの遺伝子が息づく最近の作品を紹介。まず、マイリー・サイラスの新作『Something Beautiful』は『The Wall』をヒントにしたというコンセプト作。ショーン・エヴェレットらが貢献した実験的かつ夢想的な音もプログレっぽいと言えるのでは。また、アイス・Tによるメタル・バンド、ボディ・カウントは最新作『Merciless』でギルモアを招き、“Comfortably Numb”をカヴァーしていた。
さらに、ドクター・ドレーのプロデュースでも話題となったスヌープ・ドッグの2024年作『Missionary』収録曲“Hard Knocks”で“Another Brick In The Wall”、USラッパーのジェイ・スキースとドイツのプロデューサー、スぺリオールとのタッグ作『Testament Of The Times』収録曲“Cantonese Characters”で“Careful With That Axe, Eugene”が、それぞれサンプリングされている。過去にヒップホップやクラブ・ミュージックを中心に数えられないほど再利用されてきたフロイド楽曲だが、その強度は現在も衰えていないようだ。
左から、マイリー・サイラスの2025年作『Something Beautiful』(Columbia)、ボディ・カウントの2024年作『Merciless』(Century Media)、スヌープ・ドッグの2024年作『Missionary』(Interscope)、ジェイ・スキース&スぺリオールの2024年作『Testament Of The Times』(RRC)



