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途切れることのない一つの物語

 アルバムでは、それに続く“Paisley Park”がサイケでグラムな万華鏡を転がすようなプリンス独力の録音。ピアノ弾き語りの感傷的な“Condition Of The Heart”も、それに続くメロディアスな青春ポップの“Raspberry Beret”も演奏は独りだが、声の面ではリサとウェンディ(とその妹のスザンナ)の幻想的なコーラスが要所に入ってくることでアルバム全体に統一感やレヴォリューションの存在感が醸し出されている。なお、スペルミスのような“Tamborine”は、性行為の隠語と思しき〈tambourine〉から〈u〉を削り、u(you)なしの性行為=自慰を表現した曲……って丁寧に書くことでもないか。

 一方で、Dr. フィンク(キーボード)、ブラウン・マーク(ベース)、ボビー・Z(ドラムス)を含むレヴォリューションのメンバーが演奏したのは、直情的なファンキー・ロックの“America”と、やや“Purple Rain”を連想させるスピリチュアルな“The Ladder”だ。その2曲に挟まれたクールなプラスティック・ファンク“Pop Life”ではシーラ・Eがドラムを叩いている。これら楽曲の制作/録音は、84年7〜8月頃から〈Purple Rain Tour〉が始まるまでの期間を活かして、スタジオとリハーサル場を兼ねたウェアハウス(倉庫)にてツアーの調整も行いながら進められたとされている(“The Ladder”はツアーの最終リハでの録音だ)。アルバムのラストを飾る“Temptation”のみツアー序盤の12月に録音されているが、いずれにせよ84年のうちにアルバムはほぼ出来上がったわけだ。

 数曲の新曲披露もありつつ〈Purple Rain Tour〉が4月7日にファイナルを迎え、先述したようにその意欲作は4月22日に大掛かりな宣伝もなく世に出された。〈アルバム全体を途切れることのない一つの物語として体験してほしい〉というプリンスの意図から先行シングルは切らず、ツアーもやらず、それでも全米No. 1を3週連続で記録。5月にシングル・カットされた“Raspberry Beret”は全米2位、7月の“Pop Life”は全米7位まで上昇した(UKや欧州では“Paisley Park”もシングル化)。一方で舞台裏のプリンスは4月から次のステップに移行しており、アルバムからの最後のシングル“America”が出る頃にはもうフランスで映画の撮影に入っていた。

 日本独自のSHM-CD仕様による2枚組で登場した今回のデラックス・エディションでは、オリジナルのマスターも手掛けたバーニー・グランドマンが最新リマスタリング。B面曲や別ヴァージョンも含むシングル音源は網羅されている。B面曲では人気のファンク・ロック“She’s Always In My Hair”、ジル・ジョーンズの歌をフックにしたミニマルな“Hello”、ヴァニティの声を逆回転で敷いた簡素なシンセ・ポップ“Girl”が並び、別ヴァージョンではシーラ・Eがリミックスした“Pop Life (Fresh Dance Mix)”なども収録。なかでも、実に21分を超える“America (12” Version)”はこれが初CD化だ。

 そしてラストに収録された2種類の“4 The Tears In Your Eyes”は、USAフォー・アフリカ名義の豪華チャリティ曲“We Are The World”参加を断った代わりに作ったスピリチュアルな楽曲。85年のコンピ『We Are The World』に提供したのがバンド演奏による〈We Are The World Version〉で、ウェンディ&リサを従えた〈The Hits / The B-Sides Version〉は85年7月のイヴェント〈Live Aid〉で発表するMV用にリアレンジされたアコースティックな名演で、93年のベスト盤『The Hits / The B-Sides』で音源化されていたもの。なお、先述の“Hello”は“We Are The World”不参加を咎める声に回答した曲である。

 なお、本作のレコーディング場所にクレジットされている〈ペイズリー・パーク〉は、この時点ではまだ後の豪華なペイズリー・パーク・スタジオではなく、先述のリハーサル場やスタジオを併設した倉庫のこと。〈人が自分自身の中に見つけるべき場所、孤独な時に行ける場所〉だというペイズリー・パークは、彼の新レーベルの名称にもなり、以降の活動を象徴していくひとつのキーワードになったのだった。

プリンス&ザ・レヴォリューションの作品。
左から、84年作『Purple Rain』(Warner Bros.)、85年のライヴを収めたライヴ盤『Live』(NPG/Legacy)、86年作『Parade』(Paisley Park/Warner Bros.)