
敵対サッカーチームの熱烈ファン、ヴィニシウス・カントゥアリア
なお、このアルバムにはアジムスとのコラボ曲のほか、マルコスの音楽性が変化する転機となった前作『Vento Sul』で共演したサイケ寄りのバンド、オ・テルソと再び共演した曲もある。その中の1曲“Flamengo Até Morrer(死ぬまでフラメンゴ)”は当時、20歳でレギュラーメンバーとなったジーコがいたリオの大人気チーム、フラメンゴ讃歌。マルコスと、作詞担当の兄パウロ・セルジオのフラメンゴサポーターぶりがうかがえる曲だ。しかし、オ・テルソのドラマーで、後にカエターノ・ヴェローゾのバンドに参加、渡米してアート・リンゼイやビル・フリゼールや坂本龍一とも共演してきたヴィニシウス・カントゥアリアは、同じリオでフラメンゴのライバルチームにあたるボタフォゴ(2020年に本田圭佑が所属した)の、顧問委員会のメンバーをつとめたほどのサポーター。どんな想いでレコーディングに参加したのか、想像するに余りある……。
話が横道に逸れたが、マルコス・ヴァーリが30歳を迎える年に発表した『Previsão Do Tempo』。半世紀以上を経た今、当時以上にいろいろな聴きどころがあるアルバムだ。
RELEASE INFORMATION
リリース日:2026年4月22日(水) ※2026年4月17日(金)より店頭先行販売
品番:PROT-7388
仕様:初回生産限定盤/帯付き/クリアブルーヴァイナル/180g重量盤
解説:マルコス・ヴァーリ/若林佳起/片寄明人(2001年発売のCDより転載)
価格:6,600円(税込)
ブラジルオリジナルマスターテープから新たにトランスファーした2026年最新96kHz/24bitリマスター音源使用
TRACKLIST
SIDE 1
1. フラメンゴ・アテ・モヘール(死ぬまでフラメンゴ)
2. ネン・パリトー・ネン・グラヴァッタ(背広もネクタイもなしに)
3. チーラ・ア・マォン(手をどけろ)
4. メンチーラ(うそ)
5. プレヴィザォン・ド・テンポ(天気予報)
6. マイス・ド・キ・ヴァルサ(ワルツ以上に)
SIDE 2
1. オス・オッソス・ド・バラォン(男爵の骨)
2. ナォン・テン・ナーダ・ナォン(なんにもないよ)
3. ナォン・テン・ナーダ・ナォン(II)(なんにもないよ(2))
4. サンバ・ファタル(運命のサンバ)
5. チウ・バ・ラ・キエバ
6. ヂ・ヘペンチ・モッサ・フロール(唐突な花)
PROFILE: MARCOS VALLE
本名マルコス・コステンバーダ・ヴァーリ(Marcos Kostenbader Valle)。ブラジルを代表するシンガーソングライター、ボーカリスト、ギタリスト、キーボード奏者。1943年9月14日、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロ生まれ。幼い頃からクラシックピアノを習い、やがてアコーディオンとギターも演奏。エウミール・デオダートやエドゥ・ロボなど後にブラジルのポピュラー音楽界を揺るがす仲間と少年時代を過ごす。1962年にエドゥ・ロボ、ドリ・カイミとトリオを結成し、テレビ出演も果たすなどしてプロデビュー。シンガー&ソングライターとして1964年に初アルバム『Samba Demais』でソロデビュー。翌1965年に『O Compositor E O Cantor(シンガー・ソングライター)』を出すと、“サマー・サンバ”をはじめ収録曲の多くが大ヒットし、ブラジル音楽界に深くその名を刻んだ。アメリカで活躍中だったセルジオ・メンデスに招聘され渡米。ツアーに同行し、ボサノヴァブームの渦中で過ごした。オルガン奏者のワルター・ワンダレイがカバーした“サマー・サンバ”が1966年にアメリカでポップチャートの1位になり大ヒット。収録アルバムも41週にわたってチャートインするほどの成果を残した。さらに1960年代末にリリースした『Braziliance!』やデオダートとの『Samba ’68』も人気を決定づける代表作になった。70年代は『Garra』『Previsão Do Tempo』などの自作で世界を広げた一方、作曲者としての足場も固め、70年代後半に再び渡米、サラ・ヴォーンやリオン・ウェアらの大物とコラボレートした。その後、80年代はアーティスト活動から遠ざかっていたが、90年代になるとロンドンのクラブシーンで再評価のムーブメントが起こり、その追い風に乗って第一線に復帰する。1998年にひさびさのアルバム『Nova Bossa Nova』を発表。インコグニートのジャン・ポール・“ブルーイ”・モニックら英国勢を通してクレモンティーヌの『レ・ヴォヤージュ』にも参加。卓越したメロディメイカーの資質を持ち、独創的なブラジリアンクロスオーバーを繰り広げてきた。2001年にはアジムスと共演した『Escape』で音楽誌「ADLIB」の〈2001ポピュラー・ディスク大賞〉を受賞。以来、スイスのモントルー・ジャズ・フェスティバル、カナダのモントリオール・ジャズ・フェスティバルなどのビッグイベントに出演したほか、世界各国でクラブ公演を開催。2005年には全編インストゥルメンタルのアルバム『Jet Samba』を発表するなどしてファンを心を奪ってきた。そして2010年、アルバム『Estática』を67歳でリリース。ブラジル音楽にクラブサウンドを導入した意欲作で、官能的で温かいサウンドがたまらない作品となった。さらに2019年、75歳でリリースした『Sempre』は80sダンスサウンドへの回帰作として話題になり、コロナ禍で世界が一変した2020年、76歳で『Cinzento』をリリース。エミシーダ、モレーノ・ヴェローゾ、ドメニコ・ランセロッチ、カシン、ジョルジ・ヴェルシーロといった若い才人が歌詞を書いており、“Se Proteja(自分を守れ)”という曲ではジルベルト・ジルの息子ベン・ジルが作詞を担当している。アルバムタイトルは〈灰色〉を意味しているが、災禍に見舞われた世界にまぶしい光を放つ作品になった。ブラジル音楽界の最重要人物で、“White Christmas”を作詞作曲したアーヴィング・バーリンや“Rhapsody In Blue”で知られるジョージ・ガーシュウィン、さらにレノン&マッカートニーと並べて語るべきである、とも言われるほどの圧倒的な才能を持つ存在。
