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言葉で表現できないこと

 そんなわけで、アヌーシュカ・シャンカールが弾くシタールをはじめ、インド音楽界の名手たちが奏でる横笛のバーンスリー、弦楽器のサロードやタンプーラ、打楽器のタブラやグングルーの響きがゴリラズ節のシンセ・サウンドと混ざり合い、シリアのオマール・スレイマンがダブケのリズムを、アルゼンチン人であるMCのトレノとプロデューサーのビザラップがラテン・フレイヴァーを持ち込み、いつものようにダブやヒップホップやディスコの要素も加わって、そこにいつも以上に憂いを深めた美しいメロディー(“The Sweet Prince”はブラーの“Tender”と並ぶメロディーメイカーとしてのデーモンの最高傑作かもしれない)を乗せた全15曲が誕生。用いた楽器の種類はアコースティック/エレクトロニックを合わせて40以上に及び、インストゥルメンテーションにもっともこだわった作品であることは間違いなく、マルチカルチュラル&ジャンルレスをデフォルトとするゴリラズの基準に照らしても、途方もないスケールのアルバムとなった。音楽的出自がまったく異なるインドのミュージシャンたちとの共演を振り返ってヌードルは、「音楽って、言語より先に誕生した言語なんだと理解できた」と語る。「現世の向こう側から伝わって来る周波数であって、言葉では表現できないことを明確化してくれるってことなんだろうね」。

 そしてテーマの重みに相応しく、ヴォーカルやラップを提供したゲストの面々は、インドの伝説的シンガーであるアシャ・ボスレ、ザ・ルーツのブラック・ソート、スパークスのマエル兄弟などなど、声に威厳と英知を備えたヴェテランが多い。

 「どういう声が必要なのかは曲が教えてくれるわけだけど、いまの世界には、やたらデカい声でがなり立てたがるヤツが多いよね。そいつらがみんな賢い人間だとはとても言えない。その点このアルバムは賢人の評議会みたいなもので、山の頂で指導者たちが神秘的な集いを開いて、どうにか俺たちに道理をわからせようとしているんだよ」(ラッセル)。

 また今回は、すでに鬼籍に入った過去のコラボレーター――トニー・アレン、ボビー・ウーマック、デ・ラ・ソウルのトゥルーゴイ、D12のプルーフほか――の声も随所に織り込まれ、現世と次の世界の橋渡し役を担っているようでもある。

 「彼らの声を聞くと安らぎを得られるところがあるよね。古い友人から〈どう? 我々は元気にやってるよ。天気もいいしね。こっちに来たら会おうね〉って絵葉書をもらったみたいで」(ラッセル)。