ネオ・フィリーの女王が11年ぶりのアルバムを完成!

 デビューから四半世紀を迎えたジル・スコット。当初はフィラデルフィアの新しいシーンを象徴するシンガーとして〈ネオ・ソウル〉というタームを用いて紹介されることも多かったが、もはや彼女はその枠を超えている。オリジナル・アルバムとしては2000年代にヒドゥン・ビーチから〈Words And Sounds〉と銘打ったシリーズを3作、2010年代には俳優活動も行いつつ自身のブルース・ベイブからメジャー配給で2作を発表。詩人としての英知も発揮して日常風景を切り取るように歌った楽曲はブラック・コミュニティでアンセム化しているものも多い。

JILL SCOTT 『To Whom This May Concern』 Blues Babe/Human Re Sources(2026)

 2020年代も客演などを通じて常に最前線にいた。一方で自身のアルバムはご無沙汰だったが、このたび10年半ぶりとなる新作『To Whom This May Concern』をリリースした。制作には初期作品からの常連であるアンドレ・ハリスやアダム・ブラックストーンのほか、直近のリーダー作にジルを招いていたキャンパー、ルイス・ヨークなどの気鋭が参加。ゲストにトロンボーン・ショーティやJIDらが招聘され、ジルの歌世界に深みを加えている。

 〈関係各位〉を意味するタイトルはジルの良き理解者、つまり彼女の音楽を必要とする者たちといったところか。オンマス・キースが手掛けたメロウ・グルーヴの“Beautiful People”はそんな関係各位に向けたジルからのラヴレターだ。同郷ノース・フィリーの後輩ティエラ・ワックを迎えてDJプレミアのビートでラップする地元賛歌“Norf Side”も同胞へのアピールだろう。デビュー作で“It's Love”を歌ってワシントンDC愛を示していた流れで、“Liftin’ Me Up”ではふたたびゴーゴーに挑んでいる。詩人でもあるジルはニッキ・ジョヴァンニに捧げた“Ode To Nikki“でアブ・ソウルを迎えてスポークン・ワードも披露。他にもトゥー・ショートを迎えて拝金主義の牧師を批判したアフロビート風ファンク、ニューオーリンズ・ブルース、ハウスなど多彩で、借り物ではないルーツとキャリアを実感させる。そして、何よりも温かい抱擁を思わせるジルの歌が耳を捉えて離さない。いまの彼女だから成し得た、真に〈ブラック・ミュージック〉と呼べるスケールの大きい復帰作だ。

関連盤を紹介。
左から、ジル・スコットの2015年作『Woman』(Blues Babe/Atlantic)、ティエラ・ワックの2024年作『World Wide Whack』(Interscope)、アダム・ブラックストーンの2023年作『Legacy』(Bassic Black/Empire)