久石譲が作曲家の視点でクラシック曲の新たな魅力を引き出すシリーズ〈FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.7〉で、スティーヴ・ライヒの“砂漠の音楽”をライヴ収録!
作曲家として、そして指揮者としても大活躍の久石譲。2023年からクラシック専門レーベルの雄、ドイツ・グラモフォン(DG)と専属契約を結び、2点のアルバムをリリースしてきた。
第3弾となる新作のタイトルは『Joe Hisaishi Conducts』。これまでのDGでの2点は自作のみを取りあげていたが、今回は自作“The End of the World”とともに、スティーヴ・ライヒの“砂漠の音楽”を演奏しているので、指揮者としての一面がよりクローズ・アップされている。
2曲はともに、2024年夏に2日間にわたってサントリーホールで行なわれたコンサート〈FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.7〉でのライヴ録音である。実演は前半に“The End of the World”、後半に“砂漠の音楽”という構成だったが、アルバムは逆にしてある。
現代音楽の作曲家としての久石は、ライヒを始めとするミニマル・ミュージックから大きな影響を受けた。ライヒの大作を指揮することは、自らの音楽活動の原点への敬愛の念の表明でもあるのだ。
この“砂漠の音楽”は、1984年に初演されたライヒの代表作の一つ。編成を減らした少人数版は日本でもすでに演奏されているが、オリジナル編成版はこれが日本初演である。四管編成のオーケストラと4人の鍵盤楽器奏者、10人のパーカッションに54人の混声合唱と、計144人もの演奏者と楽器がステージを埋めつくしたさまは壮観で、その複雑な音響が、アルバムでは明瞭に再現されている。
ミニマル・ミュージックの特徴であるパルスが、ヒグラシの鳴き声のように反復され、聴く者の時間感覚を麻痺させていく。
5つの部分からなる全曲は、第3曲を中心としてシンメトリックな構成となっている。作品のもとになったのは、アメリカの詩人ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ(この人の名前もシンメトリックだ)の詩集「砂漠の音楽と他の詩」。
詩人が舞台としたのはアメリカとメキシコの国境地帯の砂漠であり、作曲家が意識したのは原子爆弾の最初の試験場となったアラモゴードの砂漠などだという。
人間性の墓場のような、荒涼たる砂漠。その光景を音にしたような作品を、久石は冷静なコントロールと着実な造形感覚で描いている。日本の優秀な奏者が集まったオーケストラも、その指揮にしっかりと応える。ひたすらな反復のようでいて、ゆっくりとうねり、感興の波が生まれていくあたりは、ライヴならではの醍醐味だ。
久石自作の“The End of the World”は、“砂漠の音楽”よりもドラマティックで、感情表現が直接的だ。2001年のニューヨーク同時多発テロ(9.11)の発生現場から受けた衝撃がきっかけとなって作曲された3楽章版が原型だが、ここではカントリー歌手のスキータ・デイヴィスが歌ったヒット曲“The End of the World”をリコンポーズして加えた、2015年版を演奏している。
憎悪と破壊が生み出した廃墟に響く、嘆きの歌。ソプラノのエラ・テイラーが歌うメロディが静かに流れる。
戦争の惨禍、社会の分断。飽くことなく続き、悪化しつつある現代世界において、自分が立っている場所は、どこなのか。どこへ向かって、歩いているのか。
心の砂漠に沁みるアルバムだ。
LIVE INFORMATION
日本センチュリー交響楽団 姫路公演
2026年6月10日(水)姫路・アクリエひめじ 大ホール
開場/開演:18:00/19:00
https://jcso.or.jp/concert/10304/
日本センチュリー交響楽団 第298回定期演奏会
2026年6月12日(金)大阪・ザ・シンフォニーホール
開場/開演:18:00/19:00
https://jcso.or.jp/concert/10090/
■出演
久石譲(指揮)
郷古廉(ヴァイオリン)
日本センチュリー交響楽団
■曲目
フィリップ・グラス:交響曲 第1番「ロウ・シンフォニー」
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77(*カデンツァ 久石譲)
