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クレバーで上品、信念を感じる作曲

──『It’s the moooonriders』(2022年)に入っている“三叉路のふたり”は岡田徹さんと嶋崎洋司さんの作曲で、歌詞はスカートの澤部渡くん。澤部くんに話を聞いたんですが、岡田さんから渡されたデモの時点で、メロディラインに合わせて入ってる岡田さんの仮歌ハミングに、実はモチーフとなる言葉が時々紛れ込んでるって。

白井「昔から、ヒントのワンフレーズはあったね。仮歌のなかのメロディに〈さよなら〉って入ってたりね。岡田くんの曲では、それを元に歌詞を作っていく作業をライダーズではしていた記憶はありますね」

──そうか、“さよならは夜明けの夢に”の〈さよなら〉はすでに岡田さんが提示していた。

白井「岡田くんの曲の作り方としては、ポップスの王道で攻めるというかね。エレクトロポップにすごくこだわっているし、メロディのパーツとパーツの組み合わせ方がすごくクレバーなんだ。それに、できあがるまで自分で作った曲を一日中聴いてるんだよ。すごい努力家。どれをどう組み合わせるかをずっと考えてた。“ジャック・フロスト”を初めて聴いた時もそうだったけど、どこか上品で洗練された感じが常にある。

“さよならは夜明けの夢に”でもすごくキレイな転調をする。自然なんだよね。それがエレクトロポップの時代になっても変わらないし、聴いた人がはっきり感じるところなんだよ。自分を信じて作ってるんだろうね」

 

明け方4時の電話

──佐藤優介くんは年齢的には、このなかでは一番最後に岡田さんと出会っているわけですが、ライダーズとしてはキーボードの後任でもあるし、晩年に関わった度合いは深い。

佐藤優介「ずっとライダーズのファンでしたけど、岡田さんと直に会ったのは10年くらい前です。当時やっていたカメラ=万年筆というバンドのアルバム『The Old Angel』(2013年)を奈々子さんとのコラボレーションで作ろうということになり、奈々子さんの家で打ち合わせをしていたら、〈岡田さんをうちに呼ぼう〉と言ってくださって。その時点で慶一さんとは面識があったんですが、岡田さんとは〈初めまして〉でした」

白井「その印象は? コロっとしてるな、とか、かわいいな、とか(笑)」

優介「いやー、すごい緊張しました。でも、奈々子さんに対してもそうだったと思うんですけど、上から目線とかは全然なくて、友達みたいに接してくださって。いい意味で、すごく子供っぽい」

奈々子「レコーディングにも徹くん、毎日のように来てくれてね。私と優介くんたちが作業のなかで難しい雰囲気になる場面もあったんだけど、そういう時に徹くんが〈いいからいいから、どうどうどう〉みたいに収めてくれたりした(笑)。徹くんも優介くんの演奏を〈いいね、素晴らしいね〉みたいに見てたよね。あれからすごく2人は仲良しになったんだよね」

優介「そうですね。夜中の4時くらいに電話がかかってくるんです(笑)」

白井「プリンスみたいだね(笑)!」

優介「夜中に突然ですからね。内容は本当にたわいもないんですけど(笑)」

白井「岡田くんと親しくなったから、ライダーズの曲のキーボードにも詳しくなったの?」

優介「それ以前からずっとファンでしたし、(体調を崩した岡田のサポートとして)ライダーズでも一緒に演奏できるようになってすごくうれしかったのも覚えてますね。

でも、僕は全然岡田さんの後継とかじゃないんですよ。やっぱり岡田さんの曲作りや演奏のセンスって真似できないんです。そもそもオリジナルの6人が好きすぎるので、自分も含めてサポートが入ってるライダーズは、俺は認めてないです(笑)。まあ、今はそのなかで自分なりにできることを探してる感じですね」

 

効率的に〈手を抜く〉岡田徹メソッド

──でも自分なりに感じ取った岡田徹メソッドってあるのでは?

優介「あー、一番明確に影響を受けたのは、いかに手を抜くか(笑)」

白井&奈々子「(笑)」

優介「手を抜く、と言ったらアレですけど……、良明さんは分かりますよね?」

白井「わかるわかる。譜面を全部再現するんじゃなくて、様子を見ていくというかね。参加した人たちがどういうプレイをするか、それを自然に見てとる感覚だよね」

優介「それに加えて、プロデューサー目線というか、効率をすごく考えているんです。プレイヤーとして細部にこだわるとすごく時間がかかっていくんですけど、岡田さんはそこで〈もういいんだ。これはこれでいいから次に行こう〉となる。その決断の早さですよね。

シンセの音色も岡田さんはプリセット(機材にあらかじめ内蔵された音)をすごく多用するんですよ。僕は岡田さんと出会う前はプリセットは絶対に使わず、自分で音色をいじるのがシンセの醍醐味だと思ってたんですが、岡田さんは迷わず、出た音を使う。そこで生まれる音の強さってあるんです。そこはすごく影響を受けたなと思いますね」

──めちゃめちゃ良い意味で〈手を抜く〉。なるほど。

白井「でも(優介は)すごいよ。いきなり岡田くんと同じ音色やフレーズが出てくるって、なかなかできることじゃない。まあ〈これが優介だ!〉ってのがそろそろ出てくるんだろうけど」