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劇伴やイメージアルバムが内包する〈2Dシティポップ/グルーヴ〉を聴き直す

また、2010年代後半以降には、アキシブ系やLight Mellowの感覚とも接続しながら、声優自身のアルバムをシティポップとして制作し、提示する動きも目立つようになった。

門脇綱生が選曲したSpotifyプレイリスト〈声優シティ・ポップ  Seiyuu City Pop // アキシブ系, 声優R&B, Black Contemporary, New Jack Swing, Lightmellow, AOR〉

降幡愛や駒形友梨らの活動は、アニメ文化とシティポップの接点を、過去作品の発掘だけでなく、現行の表現――〈声優シティポップ〉として示した例とも言える。

ただし、本稿で注目したいのは、歌手名義の作品だけではなく、作曲家や劇伴作家による表現も含め、劇伴やイメージアルバムの内部に残された都市的なグルーヴである。

アニメに付随する音楽作品には、主にオリジナルサウンドトラックとイメージアルバムがある。前者は、本編で実際に使用された劇伴や主題歌、挿入歌を中心に編まれる。一方、イメージアルバムは、漫画や企画書、登場人物、舞台設定などから受け取った印象を、映像の完成前後を問わず音楽へ翻訳する作品だ。後に劇伴制作の叩き台として扱われる場合もあるが、本編で使われることを前提としない独立した企画盤も多い。キャラクターの視点を歌詞に託したボーカル曲を収めることもあるが、必ずしも声優によるキャラクターソング集とは限らない。

こうした盤では、現実には存在しない街、海岸、レストラン、夜景、天上世界に、同時代のスタジオミュージシャンが音響上の身体を与えている。そういった音楽をここでは便宜的に〈2Dシティポップ/グルーヴ〉と総称するが、2Dシティポップとは、単にアニメ絵が付いたシティポップではない。平面上の世界を、当時のポップス、AOR、フュージョン、ブギー、Light Mellow、ニューエイジの技法によって立体化した音楽を、改めて聴き直すための視点である。

以下では、現在タワーレコードで購入可能な再発盤を中心に、アニメやイラストレーション文化と都市型スタジオ音楽の交点を示す5作品を、ミニガイドとして紹介する。

 

大野雄二, You & Explosion Band 『ルパン三世 オリジナル・サウンドトラック』 コロムビア(1978)

日本テレビ系アニメ「ルパン三世 PART2」のために制作され、1978年に発売された最初のサウンドトラック盤にして、記念碑的名盤だ。作編曲を大野雄二、演奏をYou & The Explosion Bandが担う。和グルーヴの文脈からも再評価が高まる、70~80年代の大野雄二に固有のジャズファンクの緊張感、クロスオーバーの開放感、テレビ劇伴に必要な機動性が、LP一枚のグルーヴへとまとめられている。

なかでも“愛のテーマ”は、現在の耳には和レアリック/バレアリックフュージョンとしても響く、奇跡的な一曲だ。静かな水平線を滑るように進む演奏から、サビの哀愁に満ちた旋律が刹那に視界を開き、聴き手を晴れやかな航路の彼方へ連れ去る。それは恋愛劇の伴奏を超え、都市の黄昏を音のなかに包み込んだ〈黄昏音楽〉の、海を渡る宝石。

 

藤原美穂 『CALIFORNIA CRISIS』 RCA(1986)

シティポップリバイバルの文脈でも聖典として名高いCHOCOLATE LIPSでリードボーカルを務めた藤原美穂が、MIHO名義で1986年に発表した4曲入りミニアルバム。OVA「カリフォルニア・クライシス 追撃の銃火」の主題歌・挿入歌を収めた作品であり、80年代のアニメ/OVA関連音盤のなかでも、特に高い人気を獲得した一枚だ。

ベースのマシュー・カメイ(ウォーネル・ジョーンズの変名)、ドラムのマーヴィン・ベイカー、ギターの横山純也、キーボードの山本一が参加し、スタジオJAKで録音・ミックスされた。生演奏のリズム隊と硬質なシンセサイザーが噛み合い、“NEXT MOVE”や“STREETS ARE HOT”に乾いた速度と切迫感をもたらしている。“NEXT MOVE”の反復的なファンクは、プリンス“Sexy Dancer”を想起させるが、藤原の鋭さと甘さを併せ持つ歌唱によって、独自の緊張感へと転じている。

“HEARTBEAT”は、『Kankyō Ongaku: Japanese Ambient, Environmental & New Age Music 1980-1990』でも知られる米国の名門リイシューレーベル、ライト・イン・ジ・アティックによるコンピレーション『Pacific Breeze 3: Japanese City Pop, AOR And Boogie 1975-1987』にも収録された。電子的な反復の隙間へ声が粘り強く入り込み、西海岸を舞台とするアニメの虚構を、東京のスタジオが構想した無国籍の夜へと変えていく。