『Yacht Club』の会員を勝手に考えてみる
日本語ラップ方面におけるjjjのバックグラウンド、その最初期を飾るルーツとも言えるグループ。ヒップホップへの興味を広げる入り口となった彼らに向けた思い入れが、『Yacht Club』へのSUの参加に結び付いたことも想像に難くない。
THE PHARCYDE 『Labcabincalifornia』 Delicious Vinyl(1995)
jjjがヒップホップに傾倒するきっかけとなったルーツのうちの一つで、出会いはRIP SLYMEを特集したTV番組を通じてだという。RIP SLYMEがそうであったように、〈ヒップホップの楽しさ〉を伝える存在として、彼らはjjjの初期設定になったはず。
リーダーのQ・ティップのソロ作をヒップホップの原体験の一つに数えるjjjだが、彼の作風により近いサンプリング・オリエンテッドな作品と言えば、こちらのグループ作だろう。ファットなドラムとベースラインがいかにも90s。
ヒップホップ・シーン内外に多大な影響を与え、フォロワーも数知れぬプロデューサー/MC。ジャストなノリを外してもなお絶妙なビートの間合いは、ファーサイド経由で彼を知ることとなったjjjのトラックやラップのセンスでも血肉化されているのでは。
本作に収録された“Rain Or Shine”のなかの〈My b-boy stance is authentic〉という一節がjjjの心を掴み、『Yacht Club』のインスピレーションに。LAにありながらより東寄りな王道に向かう音楽性は、jjjやFla$hBackSとも通底している。
SEEDA, DJ ISSO, DJ KENN 『CONCRETE GREEN THE CHICAGO ALLIANCE』 CONCRETE GREEN/Pヴァイン(2014)
メンタル面におけるjjjのリアル志向に、そうした潮流を作った当コンピ・シリーズの影が。Fla$hBackSの最新作への参加もその縁? jjjはシリーズ馴染みのSCARSやGEEKらも聴いていたそう。
初期の〈CONCRETE GREEN〉に大きくフィーチャーされたことで脚光を浴びたクルーが放つサンプリング主体のサウンドは、彼らのみならずjjjにとっても大きなベース。かつての彼の愛聴盤には、構成員であるNORIKIYOの『EXIT』(2007年)なども。
トラックメイクでは〈ムダのなさ〉を第一とするjjjにとって、彼らのシンプルなループ感を湛えた音楽性は、何よりのプロトタイプだろう。jjjをして〈クール〉と言わしめるメタファーを織り交ぜたリリックのスタイルにも、共通点が見い出せる。
サンプリングに大きく根を張るサウンド志向で、jjjとの交流を結ぶONE-LAW。本作においてはFla$hBackSとして、“SMILE NOW, DIE LATER”で客演を果たしている。それはONE-LAWが現場活動のベースとする池袋bedの磁場が繋ぐ縁とも言えようか。
“I make it”をプロデュースしたjjjに加え、febbとKID FRESINOも本作にオファーしたCAMPANELLA。彼をはじめ、TOSHI蝮やC.O.S.A.ら〈NEO TOKAI〉の一翼を担う愛知勢のライヴに長けた姿からは、jjjも大いに刺激を受けているという。
スタイルこそ違うが、RIP SLYMEをルーツとする点でjjjと世代感を共有していると言えそうな彼ら。その影響がより色濃い音楽性には、新世代版RIP SLYMEを思わせる部分もあり。前のめりにならないラップも、ある意味jjjとセンスを共有してる?
ラップからも覗く、肩の力の抜けた身のこなしが魅力のGOKU GREEN。来年にはLAの地をめざすという彼と、LAのラッパーとの曲作りに興味を示すjjjが、図らずも気ままなスタンスのみならず繋がっているとしたら、それはそれでおもしろい。