インプロヴィゼーションは、日常的な場面では「その場を繕う」といった具合の意味だが、音楽では「お告げがおりる」かのような創造行為という理解が浸透している。作曲と演奏行為が同時に発生し、西欧においては音楽は「神」と分ち難く結びつくからなのだろう。しかし元来ジャズの即興は「その場を繕う」ための創意工夫という方がぴったりだ。この本「フリー・プレイ」は、音楽を今起こっている事として楽しませる工夫、自由な遊びとして即興を見直そうと呼びかける。著者本人にとって即興は神秘的(≠宗教)な体験をもたらす行為で、本はその理解のレールを外れることなく、西洋に東洋的な美意識を編み込むように進む。

【参考動画】「フリープレイ 人生と芸術におけるインプロヴィゼーション」文中に登場する
ジャズ・ヴァイオリン奏者ステファン・グラッペリのトリオによるパフォーマンス