壊れかけのレディオが、物凄いアルバムと共に最前線へ戻ってきた! 彼らの蒔く創造的なロックの種子はどこまで遠くに広がって、そして今度はどんな花を咲かせてくれるのかな!?

解散寸前だったよ

 結成は2001年に遡るから、ブルックリン産インディー・ロックの第一世代に属する。ナショナルやライアーズやグリズリー・ベアなど同年代のメンツを振り返ると、いかに豊穣で多様な世代であるか、いまさらながらに思い知らされるというものだ。ここにニュー・アルバム『Seeds』を送り出すTVオン・ザ・レディオは、そんななかでももっとも特異なバンドと呼べるだろう。スタジオではデヴィッド・シーテックという奇才プロデューサーを核に、実験に興ずるアート・ロック集団であり、ステージに立てば稀代のジャム・バンド。80sニューウェイヴからファンクやサイケ・ロック、エレクトロニカまで音楽の壁はないも同然に横断し、絶え間なく姿を変えるミステリアスなサウンド・テクスチャーと、キップ・マローン&トゥンデ・アデビンペのソウルフルな歌の融解点に、無二のオリジナリティーを築き上げ、作品の完成度と評価も高いレヴェルを維持してきた。

TV ON THE RADIO 『Seeds』 Harvest/HOSTESS(2014)

 しかし2011年春、前作『Nine Types Of Light』の発表直後にベーシストのジェラルド・スミスが癌で急死。バンドは存続の危機を迎える。「解散にどれだけ近かったかって? 凄く近かったよ」とフランクに語るのはドラマーのジャリール・バントン(発言:以下同)だ。

 「実際、それを考えていたという以外にどう言えばいいかわからない。とても難しい時期だったし、個人的な問題だから、あまりメディアには話さないんだけどね。自分が何を感じているか、いつもはっきりわかっているものじゃないし、それがわかるまで待たなきゃならない時もある。だから休止期間をとって、解散の可能性に備える必要があった。そのうちに世界が〈君らは一緒に音楽を作り続けて大丈夫だよ〉と語りかけているように感じられたんだ。でも活動を休止した時は、もう戻らなくてもいいかなっていう気持ちだったね」。

 

 彼らはまた、休止期間中に自分たちの人生におけるバンドの位置付けを巡り、さまざまな葛藤と向き合ったようだ。

 「僕らは10年近くツアーをしていて、それは凄くクールな生活だったけど、一方で人生のほかの体験を逃したことに気付いたんだ。NYも2000年から2011年くらいの間にすっかり変わっていくのを見てきて、取り残されたような気がした。まるで宇宙船に乗っている間に友人たちが結婚して子供を持ち、〈待ってくれ、何が起きたんだ? お~い、戻ってきたよ!〉って言うんだけど、みんなはもう先に進んでしまったみたいだった。そんなことを考えはじめたら、音楽活動のために自分がいろいろなことを犠牲にしていたと悟ったのさ。そしてここにきてようやく家でゆっくり過ごし、さまざまなことを試してみて、自分がやってきたことの意味合いを見直せるようになって、1年もすると〈なんだ、バンドとツアーする生活もなかなか悪くなかったじゃないか〉と思うようになったよ(笑)」。

 

明瞭さを重視した

 こうしてスタジオに戻った4人は最終的に約60曲を書き上げ、〈1,000%僕たちの最高傑作〉とメンバー全員が自負する『Seeds』を完成。前もって方向性を決めることなく、ジャリールいわく「冗長になったり、すでにやったことを繰り返さない」という点だけを念頭に置き、おのずと統一感が生まれるよう、流れのままに任せたとか。「20曲程度に絞ったあたりでどんなアルバムなのか〈発見〉したような感じだった」とも彼は言うが、『Seeds』はまさに前作で始まったシフトを推し進めた、順当な進化形だ。そう、メロディーを強調したダイレクトな曲を志向するというシフトを。いつもアルバムごとに盟友的なミュージシャンを多数巻き込んできた彼らだが、今回はホーンを配した“Could You”を除いて構成要素と人員も絞り、かつてなくアップビートでポップな一枚に仕上げている。もっとも、「このバンドに関して幸運であり不運でもある点のひとつは、全員の音楽の趣味が多様なこと」とジャリールが指摘する通り、表現はシンプルながら1~2語で音を説明できる曲は限られているのだが……。

 「以前の僕らは密度をより重視していたけど、いまは明瞭さを重視するようになった。聴いている音楽からの影響もあると思うし、年を重ねるにつれて明確さを求めるようになってきたのかもしれないけど、意図的なものではなかったよ。曲にもよるから、ホーンや合唱団の歌を必要とすれば、それを入れなきゃならない。でもほかの曲はシンプルな音が合う気がして、何も足す必要がないと感じたのさ。僕らが間違っているかもしれないけど(笑)」。

 明瞭と言えば、歌詞も然り。アナログ盤のA面とB面のように、前半はインティメイトでロマンティックなラヴソングが並び、7曲目“Ride”を境に視線は外に向けられ、未来を臨んで自由と解放を歌ったスピリチュアルなアンセムが次々と飛び出す。彼らの作品につきまとうアポカリプティックな影は相変わらずチラつくものの、それが逆にポジティヴィティーを際立たせているのだ。「僕らはいつも自分たちがその時いる場所や、自分たちが何者であるかを反映する曲を書いて、あまりそれをコントロールしたり枠にはめたりしないようにしている」とジャリール。つまりこれも、バンドがいま立っている場所を率直に表したものと解釈すべきなのだろう。

 そしてラストの表題曲で2つの面は融合。ダイナミックなシンセの旋律に乗せ、〈いつものように雨が降ってきた/でも今度は土に種(=Seeds)を蒔いてある〉と繰り返して4人はアルバムを締め括る。

 「タイトルは、このバンドがさらに今後10年鳴らすだろう音楽の骨組みになれば……との希望を込めて選んだ。そして、僕らがいまもクルクル回転する丸太の上を歩きながら、世界規模の迷路をナヴィゲートしようと目論む同志たちと共鳴し合っているってことを、このアルバムが物語ってくれたら嬉しいね」。

 

▼TV ON THE RADIOの作品
左から、2004年作『Desperate Youth, Blood Thirsty Babes』、2006年作『Return To Cookie Mountain』、2008年作『Dear Science』(すべて4AD)、2011年作『Nine Types Of Light』(Interscope)
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▼関連作品
左から、キップ・マローンのソロ・プロジェクトであるレイン・マシーンの2009年作『Rain Machine』(Anti-)、デヴィッド・シーテックのソロ・プロジェクトであるマキシマム・バルーンの2010年作『Maximum Balloon』(Interscope)
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