インタビュー

BO NINGEN、激動の2014年を振り返る

バンドのオリジナル作品、サヴェージズとのプロジェクト作のリリースに加え、US/オーストラリアなどさらに活動地域を広げたツアー尽くしの2014年を、フロントマンのTaigen Kawabeに訊く

BO NINGEN、激動の2014年を振り返る

毎月、連載〈BO NINGENの人生一度きり〉ではメンバー自身の言葉と写真によって世界各国で活動する様子を届けてくれているBO NINGEN。2014年はこれまで以上に長い期間をツアーに費やすなか、初上陸となったオーストラリアの〈ビッグ・デイ・アウト〉(オーストラリア各地を回るフェス・ツアー)、USの〈コーチェラ〉をはじめ世界的に名のあるフェスへ出演を果たし、さらには2年ぶりのニュー・アルバム『III』や、盟友・サヴェージズとのプロジェクトで前年に行った公演のライヴ録音盤『Words To The Blind』のリリース……と、トピックスの多い1年でありました。

そして現在、ちょうどGEZANとのジャパン・ツアーで来日中ということで、1月11日(日)にMikikiが主催するトーク・イヴェント〈Beyond Boundaries〉にメンバー全員でご出演いただきますが、それに先駆けて、2014年もあとわずかとなったある日にフロントマンのTaigen Kawabe(ヴォーカル/ベース)をキャッチ! 実りの多い2014年を振り返ってもらいつつ、なかなか訊くことができなかったあれこれについて、まとめてお話をうかがってまいりました!

 


 

――2014年はオーストラリアの〈ビッグ・デイ・アウト〉からスタートして、アメリカの〈SXSW〉や〈コーチェラ〉といった大きいフェスへの出演をはじめツアー続きでしたし、その間には最新作『III』やサヴェージズとの『Words To The Blind』をリリースしたりと、本当にいろいろありましたが、いま振り返ってどんな年でしたか?

「今年リリースした2作品は、いずれも2013年のうちにレコーディングを終えていて、2014年に入ってからはミックスやマスタリングの作業くらいで、2014年は1年の半分ほどしかロンドンにいなかったくらいツアーやライヴに費やした1年でした。イギリス国内だけでなくヨーロッパやアメリカ、日本を含め、ずっとツアーに出ていましたね。フェス出演やカサビアンのサポートなどで計3回訪れたアメリカ、そしてオーストラリアといった初めて行くところもあって、開拓する時期でもありました。連載にも書いていましたが、〈日常なのか非日常なのか〉というところをよく自分のなかで考えましたし、また演奏が前年の倍以上に増えていたなか、毎日同じメンバーで演奏し、セットリストもあまり変えられない状況のなかでいかに自分たちを飽きさせないか、というのも課題だったと思います。自分たちだけで回ったツアーでは結構セットを変えていたんですが、サポートやショウケースでのライヴ時間は30分程度が多くて、それだと曲順や曲目もあまり変えられないんです。会場や国が異なれば全然違う刺激はあるんですけど」

――その〈飽きさせない〉ために、具体的にはどのようなことをされていたのでしょうか?

「僕の場合はその時に思ったことを出したいというのもあって、コンセプトは同じですが毎回歌詞を変えたり、ライヴをしていくなかで毎回何かを発見してくことだったり、そうやって日々ライヴができる環境に身を置くことをあたりまえだと思わないことですかね。感謝を含め、忘れがちなことを自分たちに気付かせないと、ということは考えていました」

――物理的に何かを変える、ということではなくメンタルの部分を意識されていたんですね。

「そうですね、僕自身はそうでした」

【参考動画】BO NINGENの2014年の〈オースティン・サイケ・フェスト〉におけるライヴ映像

 

――ワンマン・ライヴを観ると改めて思いますが、30分にBO NINGENの醍醐味を凝縮させる作業というのも大変ですよね。

「初めて僕らを観る方、サポートでのライヴの場合はメインのアーティストがやっている音楽と系統が違うこともあるので特にそうなのですが、最初は良くも悪くもやっぱり口ポカンで、いちばん温まってくるのはライヴ後半なんですよね。正直やりにくさを感じることもありますが、記憶に残ってくれればと思っているんです。逆に糧になることもありますし。カサビアンのサポートでアメリカを回った時のお客さんはすごく温かかったんですけど、例えば前方にいる方たちはメイン・アクトの入り待ち/出待ちをするような熱狂的なファンなので、前座のライヴではつまらなさそうにしていることも多いんです(笑)。でもギターのYukiは、そういうシチュエーションのほうが燃えるみたいで、自分にまったく興味のない女性の気を惹くのと同じ感覚だそうです、ハハハ(笑)」

――なるほど(笑)。

「2013年の後半2か月は、アメリカでカサビアンのサポートと、〈CMJ Music Marathon〉というショウケース的なイヴェントで初めて僕たちを観る方たちに向けてずっとライヴをしていたので、本当に勉強になりました。一方で、いま日本に来て自分たちのツアーで回れば僕らの曲を知っていてくれている人たちの前でやれますから、やっぱりバランスですよね。どちらかだけやっていては気付かないこともあるので」

――国によって反応もだいぶ違うんですか?

「そうですね、国によっても違いますし、日本だとより顕著ですがイヴェントによって全然違ったりします。日本よりヨーロッパのほうが反応がストレートというのは感じていましたが、アメリカやオーストラリアはさらにそれがストレートで、全然僕達を知らなくてもイイなと思ってくれればその気持ちをありのままに出してくれるので、非常に張り合いがありました。イギリスもアメリカもオーストラリアも同じ言語を話すのに、国によってそういった反応の仕方や物の考え方が違うというのはおもしろいですよね。わかっているつもりでしたけど、実際にライヴをしてみて改めて気付かされました」

――アメリカは土地も広いですし、東と西でもだいぶ異なるんでしょうね。

「まったく違いますね。でも実は日本国内のほうが違う気がします。例えばイギリスだと、イングランドにスコットランド、アイルランド、ウェールズと地域が分けられますが、そのボーダーを越えない限りそこまで違いはないように感じているんですが、日本は県によってカラーが違うと思います」

――へぇ~、そうなんですか! ではそのあたりのお話はぜひ1月11日のトーク・イヴェントで詳しく聞かせていただきたいと思いますが、本当に年々、活動範囲(国)も広がっていますし、各国で出演されるフェスなどの規模も大きくなっているので、2015年以降も楽しみです。

「そうですね、結成7年になりますが、いきなりボンと行く(ステージが上がる)のではなく少しずつステップアップしている感じなので、それをしっかり踏み外さないようにしないとなと思っています」


良い意味で予想を裏切っていきたい

――レコーディング自体は前年に行ったとのことですが、せっかくなので最新作『III』についてもうかがいたいと思います。これまではライヴで演奏することを念頭に置いた曲作りをされていたところを、今回はレコーディングに向けて作られたものがあったそうですね。

「セカンド(2012年作『Line The Wall』)までは、アルバムを作ると決めた時点でほぼ曲のストックはあったのですが、『III』の時は一部レコーディングを意識した曲を作ろうと、初めてしっかり期間を決めて取り組みました。それまでは時間を気にせず、ゆっくりリハーサルで曲を少しずつ組み立てていったものをライヴで演奏してみて、そのフィードバックでまた改善して……というやり方だったのですが、スタジオにこもってアルバムに入れるという前提で作ったのが2~3曲あります」

【参考動画】BO NINGENの2012年作『Line The Wall』収録曲“Henkan”

 

――それは具体的にどの曲ですか?

「“Mukaeni Ikenai”“Ogosokana Ao”はライヴで演奏することなくスタジオだけで詰めていったものですね。“Dadada”はライヴですこしやっていたんですが、レコーディングする前にもうちょっと(曲を)詰めよう、変えていこうとメンバーと話して、かなり変わりました」

【参考動画】BO NINGENの2014年作『III』収録曲“Dadada”

 

――そのレコーディングを意識した曲、というのはこれまでのものとどういう点で違うのでしょうか?

「ライヴでは音が聴けるし、見えるし、匂いまでも感じられるようなエクスペリエンスだと思うんですけど、CDの場合は聴くというひとつの感覚だけに集中しますよね。だからこそ、録音物でしかできないこともあると思うんです。僕はセカンドを作る少し前に聴く音楽が結構変わってきたのですが、グライムや初期のダブステップなどを聴くようになって、レコーディングに対する感覚も変わってきたんです。そこで、演奏環境が会場ごとに違うライヴではできない、レコーディングでしかできないことの可能性を追求したいなと思うようになりました。ファースト(2010年作『Bo Ningen』)ではストレートにライヴでやっていることを生っぽくやって、セカンドはちょうどその合間だったんですけど、サードでは録音物でしか実現できないことをさらに進化させたいなと。セカンドでもチャレンジとして盛り込んだ経験があったので、こうすればこういう音になるんじゃないか、というプロセスが曲作りの段階から見えたのは大きかったですね」

【参考動画】BO NINGENの2010年作『Bo Ningen』収録曲“Koroshitai Kimochi”

 

――なるほど。個人的に『III』を聴いて思ったのは、ヘッドホンで聴くことの醍醐味がこれまでの作品以上に味わえるんですよね。轟音のなかでも個々の音が粒立っていて、さらにどこか空間を感じる抜けの良いサウンドなのもおもしろいし、こんな音が鳴ってるとは!という発見もたくさんあったり……すごく独特だなと思ったんです。そういうところも音作りにおいてより意識された点のひとつなのかなと。

「音の粒立ちや質感が違うというのは有難くて、CDでもライヴでも言われるのですが、BO NINGENを聴いたことなかった人やYouTubeでは観たことがあるくらいの人が、僕たちのCDを買って聴いたりライヴに来たりすると〈イメージと違った〉と言われることが多いんです。作品でも良い意味で予想を裏切っていきたくて、作品ごとに新しい挑戦をしているのですが、今回も音の質感然り、セカンドでできたことをよりステップアップさせたかった。前と同じことをしても仕方ないというのはエンジニア(前作に引き続きファンキー・ナチョことマックス・ヘイズ)も同じ意見で、プライマル・スクリームエイジアン・ダブ・ファウンデーションも手掛けている方なので挑戦的なことが好きなんですね。それで、前回が轟音に埋もれているようなイメージの音像だとしたら、今回の『III』はパキッと、より明るいイメージというか、突き抜けた感じはミックスやマスタリングでは意識していて、曲だけをキャッチーにするというのではなく、音像を含めて開けたイメージというのは考えましたね」

【参考音源】マックス・ヘイズが関与したプライマル・スクリームの2000年作『XTRMNTR』収録曲
“Kill All Hippies”

 

――日本製のものではなかなか聴くことがない音だなというのは感じました。

「ロック・バンドがやるクラブ・ミュージックを意識した音楽というと、シンセやドラム・マシーンを入れたり、打ち込みが入ったりビートを4つ打ちにしたりというのはよくあると思うのですが、僕たちはそれをしたくなかったんです。クラブ・ミュージックをロック・バンドの音楽に昇華させる時に、特に音像にはすごくこだわりたくて、安易にそういった音に差し替えるのではなく、自分たちのなかでのバランスを追求していけたらいいなと」

――それはクラブなどの現場で聴いた時の体験を元にイメージしているんですか?

「その体験ももちろん大きいですね。低音の出方などあきらかにライヴハウスとは違うのですが、僕の好きなクラブ・ミュージックは現場重視のものというよりは、クラブで聴いてもすごいけどレコードで聴いても違う感覚で楽しめるもので、ちっちゃい音で鳴らしたらアンビエントとして聴けるけど、クラブで大音量で鳴らした時には低音が凄く出て、ダンス・ミュージックとして成立するものが好きなんです。音源は同じでも環境によって捉え方が変わるような。僕らの音源もそういうふうに、ライヴだとまた違う見せ方ができると思っています。あと、ベーシストの視点で言うと、僕のベースが想像以上にロックよりもクラブ・ミュージックっぽいとトラックメイカーやプロデューサーの方によく言われますね。ロックのベースはフレーズが動いたり、ピックでガンガン弾くイメージがあるけど、僕の場合はそういった音楽の影響をそこまでがっつり受けていないので。イギリスのクラブ音楽の特徴は、初期のダブステップがわかりやすいのですが、フレーズが変わるんじゃなくて音色が変わることで展開が変わっていったりとか、フレーズは動かないけどキックとベースというシンプルな構成でグルーヴが回っていく――僕はベーシストとしてそこを出していきたくて」

 

 

――確かにそうですね、すごく合点がいきました! あと、私は前作に入っていたスロウ“Natsu No Nioi”が大好きなのですが、今回の『III』では“Mukaeni Ikenai”が同様の立ち位置で、こういった〈浄化〉してくれるような曲が入ることによってアルバムがグッと感動的になりますね。

「初期曲の“Bo Ningen”やファーストに収録した“△”、それから前作の“Natsu No Nioi”や今回の“Mukaeni Ikenai”は、曲作りやリハーサルを長時間しているなかで疲れて……じゃないですけど毎回グワーッとやっているわけではないので、爆音を出さずに静かな曲でもやろうかとなった時に出来るんです。アルバムのバランスを考えた時に入れてもおもしろいのかなと。場所にも悩んだんですが、今回は真ん中に入れて前編/後編の合間に入れたらいいかなと」

【参考音源】BO NINGENの2012年作『Line The Wall』収録曲“Natsu No Nioi”

 

――それからゲスト・ヴォーカルが今回2名いらっしゃって、サヴェージズのジェニー・ベスキング・ミダス・サウンド(Taigenがサポート・ヴォーカルを務める)のロジャー・ロビンソンという、いずれもゆかりの深い方々ですが、特にジェニーは“Nichijyou”(『Line The Wall』収録曲を、ジェニーをゲストに迎えて再録。2013年にこのヴァージョンをシングル化)に続いて2度目になりますよね。同じ人を何度もフィーチャーするというのは珍しいと思うのですが、彼女の魅力というのはどういう点にあるのでしょうか?

「前回のコラボが本当に上手くいって、その感覚でまたやってみたら焼き直しにならないかなと思ったんです。僕らがこうやって欲しいと言うのでもなく、ジェニーも僕らにどうしてほしいかと訊くのでもなく、自然にこちらが曲を提示して、彼女がそこに新しいものを加えてくれて、ケミストリーというと安っぽいですが、いい化学反応が生まれたので、今回も曲が違えばまた違う反応が生まれるかなと思って。もちろん友人として人間的な意味での信頼性もありましたし」

【参考動画】ジェニー・べスをフィーチャーしたBO NINGENの2013年のシングル“Nichijyou”

 

――ジェニーとBO NINGENは知り合ってもう長いんですか?

「最初に知り合ったのが5年前で、サヴェージズ結成前の前身ユニットの頃だったのですが、その頃からライヴにもよく来てくれていて、それで“Nichijyou”でコラボしたタイミングでバンドぐるみで仲良くなった感じです。それで両者で何かできないかと思って実現したのが僕らとサヴェージズのプロジェクト〈Words To The Blind〉でした」

――あのプロジェクトはそもそも作品としてリリースすることを念頭に置いたものだったんですか?

「作品は出したいねと言っていたのですが、どんな形になるかは演奏するまでわからなかったので、とりあえずその公演を録ってみたんです。そうしたら結果的にライヴ盤としてもスタジオ盤としてもちょうどいいバランスになったんですよね。途中のお客さんの声がなければスタジオで録ったと言っても遜色ない音像になったので」

――確かに〈ライヴ盤!?〉という感じのクォリティーですよね。Taigenさんの担当だった連載の最新回にも動画が貼られている〈Boiler Room〉のライヴ映像を拝見したのですが、あの両者が向かい合ったバトル的なフォーメーション、曲構成が本当にユニークで、さながらコンサートというより演劇的だなと思いました。40分弱ありますが、あれはどういったやり取りで組み上げられたものなのですか?

「〈ダダ〉というコンセプトをサヴェージズが持ってきてくれて、それをどうやって演奏に落とし込むかとなった時に、彼女らがチャプター(章)を作ってきたので、最初は2人の声で始めようとか、最初から構想にあった互いのバンドのバトルみたいな要素をこういう形で盛り込もうとか、ここから曲っぽくしていこう、みたいなことをみんなでディスカッションして大まかなチャプターのテーマを立てていったんですね。それに合わせてとりあえずリハをしてみようと。最初2回くらいリハして、その都度細かいところを調整する作業をしていった感じです。曲の長さは結果論でしかなくて、特に何も考えずにやったらそのくらいの尺になったんですよね。僕らとしてはガチガチに決めすぎず、即興の部分を入れたいというのを提案しました。リハーサルの時に完璧なモーメントが生まれてしまうと本番でリクリエイトすることはできないので、それは避けたいというのもあって。それを彼女たちもすんなり受け入れてくれたので良かったです」

(※)1910年代にスイスはチューリッヒで起こった、既成の秩序や常識への破壊を思想に持った芸術運動。ダダイズムとも言う。

【参考動画】BO NINGEN×サヴェージズ〈Words To The Blind〉のロンドン公演の模様

 

――互いのバンドへの信頼や理解がすでにあったから、スムースに行ったところもあるんでしょうね。

「そうですね。各パート同士、ルックスも対照的だし、難しいと思われたドラムやベースの音の棲み分けもしやすかったので、そういう意味でも良かったです」

――でもこういったプロジェクトとして別々のバンドがコラボレーションしてひとつの作品を残すというのは、なかなかできないことだと思いますし、リスナーとしてとても刺激的で興味深い試みでした。

「ジェニーがよく言っているのですが、どうしてもいまの社会や音楽業界の背景、僕ら世代のバンドの金銭的な問題もあって、こういったエクスペリメンタルなプロジェクトはなかなかやりづらい時代だと思うんです。そういう意味でもチャレンジしたかったというのが両バンドの気持ちで、ステージのことや関わっている人数を踏まえると決して儲かる試みではないので(笑)、ギリギリでやっているところではありますが、それでも意味があることだからみんな動いているのかなと思います」

――そうですよね。観る側としてはもっと期待してしまいます(笑)。

「そうですね、継続していきたいと思っています。今回3度ライヴをして、ロンドンでは1年ちょっとぶりに演ってみたらすごく感触が良くて、前回よりもエキサイティングな感じがあったんです。パフォーマンスにもみんな満足できましたし。ロンドンでの1回目と2回目(〈Boiler Room〉の公演)は僕たちだけのステージで、僕らを目当てに来てくれたお客さんに向けたものだったのですが、オランダでの公演はフェスの一環だったので、お客さんがロックなものを期待していたんですよね。だからか、そのムードに自然と影響されて、僕もすごく動いてこれまで以上にお客さんを意識したパフォーマンスになったんです。僕がそういう感じだったので、ジェニーもそれに合わせてお客さんや全体を意識した動きをするようになったりして。これはBO NINGENでライヴをする場合もそうなのですが、会場の雰囲気によって同じ演目でもいかようにも進化するし、変化するなと感じました」

――即興的な要素が強いとよりそういう変化が起こりやすくなりますよね。

「はい。今後も育てていきたいプロジェクトです。タイミングがあれば日本でもやりたいのですが(笑)」

――ぜひ演っていただきたいです! ほかの国とは全然違う雰囲気になると思いますよ。期待しています。

「がんばります(笑)」

 

安堵を求めて変化をしないという選択肢はない

――では、もうひとつTaigenさん個人についてもおうかがいしたいのですが、2014年はdownyのリミックス・コンテストで大賞を獲得!というトピックもありましたね。以前にもでんぱ組.incのシングル“W.W.D II”のカップリング曲や、最近だとDay and BuffaloのEPにTaigenさんのリミックスが収録されていましたが、リミックス仕事というのはご自身にとってどういう位置付けなんですか?

「自分の音楽に対する挑戦のひとつですね。曲作りというのはメソッド、方法論が決まっていて、それに則ると作るペースが速くなったり、安定していくと思うんですね。例えばテクノだったらまず4つ打ちにしてから始めるとか、音はこんな感じに……とか、やっていくほどスキルとして固まっていきますが、僕はそういうのがまったくなくて、わりと雑多に取り組むタイプで、それがリミックスだと曲作り以上に表に出るというか。毎回リミックスをするごとに挑戦で、毎回同じようなこともしたくないですし、原曲がそれとはわからないほど崩すことなく、でも新しい曲として出したくて。最近のリミックスは、質感だけを変えて、おもしろいけど丸ごと聴かなくてもいいかなと思うものが多いので、僕は実験的で質感もおもしろく、でも踊れてキャッチーというのをコンセプトに、そこさえ守れればルールを崩しても良いものができると思っています。毎回手探りで、トライ&エラーを繰り返していることもあって、やり方としては効率も悪いし時間もかかるのですが、そのなかで学ぶことも多いので。本当に毎回チャレンジですね」

【参考音源】TaigenによるDowny“時雨前”のリミックス

 

――すごく良い意味でTaigenさんのリミックスにはいわゆる〈カラー〉がなくておもしろいですし、毎度どういう仕上がりになっているのかが余計気になってしまいます。ところで、リミックスの作業はBO NINGENでの作業に還元されることはありますか?

「かなりありますね。リミックスを自分でやると音の処理やバランスの取り方などの面で、セカンドやサード・アルバムで気にしていたプロダクションの細かいところに対する理解も生まれますし、単純に曲の〈構成〉をより意識するようになりました。バンドではもちろん4人で意見を出して決めるところを、当然ながらリミックスは一人で時間的な制約があるなかで構成を考えなければならないので、構成力のスキルを磨くことができるし、曲を客観的に見る能力が鍛えられるなと思います」

――連載コラムのなかでサヴェージズとのプロジェクトについて〈使っている神経が違う〉といったことを書いていらっしゃいましたが、それはソロでの活動にも言えることなんですね。それぞれに発見があるというか……。

「そうだと思います。バンドのメンバーはみんなソロでライヴをする機会が多くて、自分だけじゃなく、他のメンバーのなかに新しい発見をすることもあるんですよね。逆に他の3人は僕のソロを観て発見することもあって、普段バンドでやっている時は横にいるから気付かないことがあるんです。〈こういうところをバンドに持って行ったら?〉と思ったりとか。さっき話に出た“Natsu No Nioi”はもともと僕がソロで演っていたもので、あれをバンドでやってみたら……という意見がアルバム収録のきっかけだったんです。なのでリミックスもソロ活動も、すごくバンドに還元できている感じがします。またその逆もありますし」

――そういえば、今度ご出演いただくトーク・イヴェントの際にTaigenさんにお願いしているミニ・ライヴがどういう感じになるのか、とても気になっているのですが。

「実はまだ決めてないんですよね(笑)。ソロの時には結構形態を変えていて、BO NINGENを始める前にやっていたソロはラップトップを使ってエレクトロニカ? 音響?といった感じのものだったのですが、BO NINGENを始めてからはPCを使ってライヴをすることをスパッと辞めて、即興のほうに興味が移っていたんです。ギターだけ、とか、ギターやベースと声だけ、みたいなスタイルになっていて。で、2014年に入って、3月にソロのライヴを頼まれた時、ギターのKohheiくんに〈最近パソコンを使ったライヴをやっていないから、またやってみれば?〉と軽いノリで言われて、そういえばそうだなと。そもそもパソコンを使ってやらなくなった理由が、〈フィジカルじゃないから〉だったんですよね。個人的にはそういう音楽も好きなのですが、いざ自分がそれをやるとなった時にちょっと違和感が生まれてしまったんです。でも、いまだったら上手くできるんじゃないかと思ってチャンレンジしてみたら結構感触が良くて。それからパソコンを使ったライヴを何度かやっていて。でもこの間、福岡でソロを頼まれたのですが、先方からアンビエント的なセットをやってほしいというリクエストがあったので、せっかくだから別のアプローチにもチャレンジすることにしたんです。大学時代にフィールド・レコーディングした音やピュアなノイズを使った〈サウンド・アート〉というのをやっていて、そういうバックグラウンドを最近出してないなというのもあり、それとパソコンと、ちょっとフィジカル的な要素も盛り込んだセットをやってみたら、これも結構良い感じで。そうやってソロ・セットの選択肢が広がってきているので、今回も場所や雰囲気に合わせた形でやれたらなと思っています」

【参考動画】Taigenによる2014年のロンドンでのソロ・ライヴ映像

 

――なるほど、楽しみにしております! では、そろそろ最後になりますが、2015年の目標や抱負を教えてください!

「2014年が本当にライヴ漬けの日々だったので、2015年はそこで得た音楽的、さらにはメンバーの人間的な成長を音に落とし込んで形にする作業をしたいですね。もちろん、これまで通りライヴのクォリティーを上げて、活動範囲も広げていくということは引き続きやっていきますが、それに加えて、現状に甘んじることなくさまざまなチャレンジをしていきたいです。活動範囲が世界的に広がるほど、安堵を求めて進化をしないという選択はメンバー全員したくないので。毎年勝負ではあるのですが、これからは適格に目標を定めていかないといけない年になってきたかなと思っています」

 

PROFILE/BO NINGEN


Taigen Kawabe(ヴォーカル/ベース)、Kohhei Matsuda(ギター)、Yuki Tsujii(ギター)、Akihide Monna(ド ラムス)から成る4人組。2006年、ロンドンのアートスクールに通っていたメンバーによって結成。2009年にアナログ/配信で発表した 『Koroshitai Kimochi EP』が現地で話題となり、UKツアーのみならず、日本盤の発表後は日本でのツアーも成功させる。2011年にミニ・アルバム『Henkan EP』、2枚目のフル・アルバム『Line The Wall』をリリース。昨年から今年にかけて、〈フジロック〉やオーストラリアの〈ビッグ・デイ・アウト〉、USの〈SXSW〉〈コーチェラ〉といった各 国の大型フェスへ出演し、ますます注目を集めるなか、2014年に最新作『III』をドロップ。さらに先日、37分に及ぶ大曲となる盟友サヴェージズとの共演盤“Words To The Blind”(Stolen/Pop Noir)をリリースした。そしてGEZANとの日本ツアーは2015年1月14日(水)東京・TSUTAYA O-Nest公演を残すだけ!

また、それに先駆けて1月11日(日)にはBO NINGENとAtsuoBoris)によるトーク・セッション& Taigenのソロによるミニ・ライヴ〈Beyond Boundaries〉が開催されます! 詳しくはこちらへ!!!

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