ジャイルズ・ピーターソンが指揮するキューバの音楽革命! モダンなクラブ・ミュージックの芳香を燻らせながら、進化したローカル・サウンドが咆哮する!!
カリブの楽園、キューバ。この国の音楽文化というと、いまだに老音楽家が葉巻をくわえながらギターを爪弾いているイメージを持つ方もいるかもしれない。だが、キューバの音楽シーンも進化している。なかでも首都ハヴァナではヒップホップやエレクトロニック・ミュージックから影響を受けた次世代が躍進中。ジャイルズ・ピーターソンが音楽面でのディレクションを務める〈Havana Cultura〉シリーズは、これまでそうした地元のミュージシャンやラッパーをフィーチャーしながら、キューバ音楽の最新型をレポートしてきた。
その最新作『Gilles Peterson Presents Havana Cultura Mix The Soundclash!』はハヴァナのローカル・ミュージシャンと、オーディションを勝ち抜いた各国のプロデューサーとのコラボレーション作品。その国籍はロシアやハンガリー、チリ、南アフリカ、スイスなどさまざま。ジャイルズ自身、「今回のアーティストたちはみんな無名で経験もない人たちばかりだから、当初は私のレーベルからリリースできるぐらいの水準を満たす音楽が作れると思っていなかった」と明かす。
「だけど、結果として私は間違っていた。もっとも気に入ったのはロシア出身のラウムスカイヤ。それからカークストラもおもしろかった。彼はいままでに一度もレコーディングをしたことがなかったのに、コンセプチュアルで素晴らしい作品を作り上げてくれた。それから、キケ・ウルフというキューバ人アーティストも素晴らしい。彼のトラックがいちばんアヴァンギャルドでエレクトロニックだね。それと、おもしろいことにオーディションに残った最優秀者たちの多くがチリの人だった。チリのプロデューサーは本当に質が高い」。
対するキューバ勢はソウルフルな歌声を聴かせる女性シンガーのダイメ・アロセナ(早くもジャイルズと自身のソロ・アルバムを作りはじめているとか)や、4人組のヴォーカル・アンサンブルであるセスト・センティード、ラップ・グループのロス・アルデアーノスに所属するエルBほか、よほど同地のアンダーグラウンド・シーンに入り込まないと出会うことがないだろう面々も多数参加している。
「オープンマイク・ナイトを開催して、30組のキューバ人ミュージシャンを呼んだんだ。オーディションに受かったプロデューサーたちに、そのキューバ人ミュージシャンの誰と一緒に仕事をしたいか選んでもらった。オールド・スクールなルンバの人たちもいたし、カントリー&ウェスタン・バンドも、ロック・バンドもいた。キューバ音楽の乱交パーティーという感じだったね。素晴らしい夜だったよ」。
そうしてチームを組んだ各国のプロデューサーとハヴァナのミュージシャンたちは共にスタジオ入りし、それぞれトラックを制作。揃った12の楽曲はルンバやアフロ・キューバン、ラテン・ジャズのアップデート版であると同時に、さまざまなエレクトロニック・ミュージックのエレメンツが散りばめられており、極めてジャンルレスでボーダレスな内容となった。そして、ここにはいまなおハヴァナというとブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブをイメージされてしまう現状に対するジャイルズの思いが反映されている。
「ハヴァナ・シーンの現状を広めることは大切な作業だと思っているよ。例えばブラジルに関してもアストラッド・ジルベルトが〈イパネマの娘〉を歌っているイメージしか持たれていなかったりする。スタート地点としては良いかもしれないけれど、ブラジルにはそれ以外にも素晴らしい音楽がたくさんあるよね。キューバも一緒さ。新しい世代が自分たちのサウンドを進化させられる場を作りたい。そういう願いがこのプロジェクトの根底にあるんだ」。
▼〈Havana Cultura〉シリーズの作品を紹介
〈Havana Cultura〉シリーズの作品を紹介。左から、2009年作『Gilles Peterson Presents Havana Cultura: New Cuba Sound』、2010年のリミックス盤『Gilles Peterson Presents Havana Cultura: Remixes』、2011年作『Gilles Peterson Presents Havana Cultura: The Search Continues』(すべてBrownswood)
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