Page 2 / 2 1ページ目から読む

ある種の混乱と違和感

 そして、3曲目の“一つの魔法”は、小沢健二がネオ・ソウルをジャパニーズ・ポップスに引き寄せた2002年のアルバム『Eclectic』の収録曲のカヴァー。原曲のオリエンタルなファンクネスをカジュアルな形で引き出している。

 「まったく同じ方向をめざしているわけではないですけど、小沢健二さんの『Eclectic』はインディー的なアプローチでブラック・ミュージックを実践しようとしている現在のceroの指標の一つになっていて。“一つの魔法”に関しては、リズムが打ち込みで冷たい質感のオリジナルに対して、そのカヴァーは生演奏のファンキーな泥臭さでいい感じで汚すことによって、完結した楽曲の世界観を人の世に降ろすという勝手な解釈をさせてもらいました」(高城)。

 上記の3曲は、2015年にリリースが予定されているサード・アルバムに向けて聴き手のガイド役を務める、そんな楽曲たちだ。さらにその歌詞世界においては、“Yellow Magus”で砂漠の世界へと辿り着いたストーリーが時空を飛び越え、新たな展開を迎えているが、本作では今後描かれることになる本編のプレビュー的な作品でもある。

 「『My Lost City』のような別世界ではなく、もうちょっと現実的な描写をしているんですけど、日常を描きつつ、ペンギンが飛んでたり、ちょっとだけシュールな光景が入り込むことで違和感が感じられる『WORLD RECORD』に近いタッチというか。さらに“Yellow Magus”からやりはじめたことなんですけど、主観的な視点で私小説のように自分の生活圏内を切り取って描くのではなく、俯瞰した第三者的な立ち位置から誰かから聞いた話なんかを交えて、小説的に歌詞を書いてみたいと思っていて。そうやって本作でも描いている、裏の裏は表なんだけど、かつての表とは違って、どこに自分の身の置き所があるのかわからない、ある種の混乱や違和感は次のアルバムに引き継がれていくことになると思います」(高城)。

 

▼ceroの作品

左から、2011年作『WORLD RECORD』、2012年作『My Lost City』、2013年のシングル“Yellow Magus”(すべてKAKUBARHYTHM)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ

 

▼『Orphans/夜去』に参加したアーティスト関連の作品

左から、あだち麗三郎の2013年作『6月のパルティータ』(Magical Doughnut)、片想いの2013年作『片想インダハウス』(KAKUBARHYTHM)、チムニィの2013年作『チムニィ』(ROSE)、一十三十一のニュー・ミニ・アルバム『Pacific High/Aleutian Low』(Billboard)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ