ceroの髙城晶平が立ち上げたソロ・プロジェクトの初音源となるフル・アルバム。共同プロデューサーとしてSauce81を迎え、角銅真実や光永渉、高田漣といったプレイヤー陣を招いて作り上げた本作は、近年のceroと地続きの複雑なリズムを纏った楽曲も収めてはいるものの、そうしたプログレッシヴなアプローチが押し出されているわけではなく、まず耳を捉えるのはアメリカン・ルーツ・ミュージックの肥沃な滋味を吸収したアンサンブルと、レイドバックしたグルーヴ感だ。だが、その成熟したサウンドが靄がかったプロダクションに沈み、黄昏の色調が滲むさまざまな物語が吹き込まれると、どこかディストピアを感じさせもする荒んだ世界が浮かび上がる。甘美で退廃的でもあり、それゆえに不穏な第一作だ。