名うてのトランペッターが優れたバランス感覚と熱いエモーションで構築した、クール=サイレントなポスト・クラブ・ジャズ世界!!

 

 

 近年はソロ名義で『名曲を吹く』シリーズを推進しつつ、一方ではbohemianvoodoo『SCENES』などの幅広いプロデュース/演奏活動でも知られてきたトランペット奏者の島裕介。今回Playwrightから登場したリーダー作『SilentJazzCase2』は、2010年に話題となったニュー・ジャズ寄りのプロジェクト『Silent Jazz Case1』の続編で、PRIMITIVE ART ORCHESTRA森田晃平(ベース)をはじめ、bohemianvoodooの木村イオリ(ピアノ)やfox capture plan井上司(ドラムス)らレーベルゆかりの顔ぶれを中心に、気鋭のミュージシャンたちが集った充実のインスト集となっている。

 

Yusuke Shima SilentJazzCase2 Playwright(2015)

 

【〈SilentJazzCase〉とは】

 カッコイイこと=〈Cool〉に代わる言葉として、〈Silent〉を使ってます。サウンドはむしろラウドなんですが(笑)。今回は5年前に比べて自分名義での活動が増えたのでYusuke Shima名義で、でもサウンド・コンセプトは残したかったので、タイトルを『SilentJazzCase2』にしました。

 前作のように歌が入るとより聴きやすくはなるのですが、リスナーからすると1曲でも歌が入っちゃう時点で楽器陣は〈バック・ミュージシャン〉っていう扱いになっちゃったりするんですよね。今回はどの楽曲でも中心に自分がいる、っていう見せ方にしたかったのです。トランペットって吹くこと自体難しいし、サウンドメイクも難しい。でも、音のインパクトは楽器の中でもNo.1かなと。だから意外とどんなサウンドであれ、メロディーを吹くだけで中心にいられるんですよね。マイルス・デイヴィスなんて、まさにそうです。まあ相変わらずヴォーカル作品のプロデュースもしているので、そこで歌モノへの欲求が満たされている、というのもありますが(笑)。

 

【新作の仕上がりについて】

 5年前の初作では〈クラブ・ジャズ〉のリスナーに寄せた感じはありましたが、今作は良い意味でノンジャンル的、自己満足的かなと。でも性格上、どうしてもバランスを考えてしまうので(笑)、最終的には聴きやすいアルバムになったのではと思います。

 昨年10月にタイはチェンマイ/バンコクで行った『名曲を吹く』公演にインスパイアされたものが“Quiet Pho”“Steppin' the Doisuthep”など3曲あって、例えば“Sukhumvit Street”はバンコクの一番有名な通りのこと。猥雑でゴミゴミしてるけど洒落たカフェや近代的な建物も混在してる、〈今のアジア〉を表現した曲ですね。全体では……どれも納得した演奏しか収録していないのですが(笑)、トランペットということでは“Line on the sea”が一番聴き応えあるかな。

 演奏陣では、ドラムには曲作りの時点からかなりイメージがありました。〈ジャズがルーツにあってグルーヴものをガッツリ叩く人〉、それ系の日本若手ドラマーだと、やっぱり彼がファーストコールじゃないですかねー、福森康くん。ファンタジーもあって最高です。

 この後、7月には『名曲を吹く3 ~ニニロッソとシネマ~』がリリース予定です。『SilentJazzCase2』とは真逆の激シブな作品ですが、どちらも〈島裕介の音楽〉として楽しんでいただけると幸いです。

 

【島 裕介】
2002年よりプロ活動を開始しているトランペット奏者/作編曲家/プロデューサー。LatribeEGO-WARRAPIN'ASA-CHANG&ブルーハッツなどの活動を経て、2006年にShima&ShikouDUOでデビュー。以降もSilent Jazz Caseなど各名義でリーダー作を発表する一方、多くの作品でプロデュース/演奏に参加。2012年より自身のレーベル=MOS Soundも運営している。