「私が考えていることは、実際には私が一人で考えているだけでなくて、同時に多くの人も考えていると思うんです。自分のことを書いてるようで誰かのことを書いていることになる」――そう語るシンガーのYukiと、電子音楽家のJEMAPURによるユニット・Young Juvenile Youth(以下YJY)が、ファースト・ミニ・アルバム『Animation』をリリースする。凛とした印象と浮遊感が同時に存在する歌声と、緻密に計算されつつ温かみを感じさせるトラックの織り成すエレクトロニック・ミュージックは、遠い昔にどこかで聴いたような郷愁や甘さを湛えた、おとぎ話のようだ。

Young Juvenile Youth Animation BEAT(2015)

 カナダでの高校時代に詩を書いていた流れで曲を作りはじめたYukiは、自分のめざす音楽を模索していくなかで、知人から見せてもらった動画によって、JEMAPURの存在を知ったという。

 「無機質で硬いんですが、そのなかにオーガニックな繊細さがあったりして。彼のやっていることすべてが新しい感じがして、感銘を受けました」。

 現在の制作活動は、JEMAPURのデモにYukiが詞や歌を乗せたり、あるいはYukiのメロディーからJEMAPURがトラックを生み出したりしてビルドアップしていくという。

 「あまり聴き込まずファースト・インプレッションで構造をキャッチして、歌詞や歌を乗せています。〈想像もできないようなメロディーをくれた〉と言ってくれることもありますし、私が弾いたアコースティック・ギターをピッチを変えて逆再生したり、私の想像を超えるものが返ってくることも多いです。言葉がなくても音楽で意思疎通ができるので、深く考えずにやっていますね」。

 こともなげにそう話す様子から窺えるのは、この二人ならではの不思議なコミュニケーションだ。強固に築き上げられた世界観さえ感じさせるYJYの音楽だが、その解釈は聴き手に委ねられている。

 「それぞれが自身の感性で理解し、解釈して、その人なりのフィルターを通して曲を聴いた瞬間に、〈音楽〉というフォーマットが〈芸術作品〉として出来上がると思うんです」。

本作のタイトルもその思いに由来していて、「このアルバムを聴いて、その人なりに思うこと、想像、気づき、変化、そういうものが生まれたらいいなと思って、〈Animate〉=生命を吹き込むという意味を持つ言葉をつけました」とのこと。表題曲“Animation”の歌詞では、インナーセルフとの対話について書いている。

 「自分の中のもうひとりの自分と対話するって、みんなやっているでしょう? ただ、自分の中に何人いても、端から見ればひとり。それに、自分からは離れられないし、すべては自分から始まっている」。

 冒頭の発言に戻るが、Yukiはシンガーというより〈表現者〉に近い。そんな彼女のインスピレーションは、まるで睡眠時に脳が記憶を整理するように、〈集中〉によって整頓されていくという。

 「私が創作している時間そのものが、私のインスピレーション・ソースなんです。絵を描いたり、文章を書いたり、お裁縫したり料理したり。何も考えずにものを作って集中している瞬間に、普段蓄積したものを脳内で整理して自分のモノにしていく。深く考えすぎないほうがいいと思うんですよね、何をするにも」。

 考えているのか、いないのか。掴めるようで掴めない不思議な魅力を持った彼女だからこそ、JEMAPURと紡ぎ出すYJYの音楽が、心を掴んで離さないのだろう。

 

Young Juvenile Youth
ヴォーカリストのYuki(ユウキ)と電子音楽家のJEMAPUR(ジェマパー)によるエレクトロニック・ミュージック・デュオ。 2012年よりSoundCloudでの音源発表を中心に活動をスタート。2013年9月に初の12インチ・シングル“Anti Everything”をPhaseworksからリリース。11月には2枚目のシングル“More For Me, More For You”を発表し、徐々に注目を集めていく。今年に入ってiTunesの〈NEW ARTIST スポットライト〉に選出されて脚光を浴びるなか、4月に関根光才が監督した“Animation”のMVを公開。5月の〈TAICOCLUB'15〉出演を経て、先行で配信していたファースト・ミニ・アルバム『Animation』(BEAT)を6月3日にCDでも限定リリース。