近年の音楽の傾向として、一聴してジャンルがカテゴライズできる音楽は少ないなぁ、って思いましてね。ずいぶん前からへヴィーなロックとヒップホップは仲良しだし、日本のロックもEDMとはかなり距離が近い。なので、自分の持っている音源をiTunesなどで管理するときにとても困る。これはどっちにカテゴライズしたら、後から探しやすいだろうかと(笑)。
特にジャズはロバート・グラスパー以降、確実に潮目が変わったように感じます。少ない音数とヒップホップ・マナーのリズム・トラック。それでいてコードやフレーズはジャズのイディオムが散りばめられている。考えてみれば、実は一番何でもありのフィールドがジャズやヒップホップなんだと思うんですよね。解釈でどうとでもなる自由度が高いジャンル。過去を振り返ってもその両方とも、色んな要素を貪欲に取り込んで進化してきているし。だから面白い。
気分的には、90年代のアシッド・ジャズ・ブームの時ぐらい混沌としてますね。あの時も一口にジャズと括られてはいたものの、演奏やジャズ・フィールを重視したダイレクションズ・イン・グルーヴ/グルーヴ・コレクティヴ系から、ヒップホップ、サンプリングを中心としたUS3系、ジャズというよりはポップスに近い音楽性で幅広いファンを獲得したインコグニート/リパーカッションズ、ジャズとファンク/ソウルの融合を試みたブラン・ニュー・ヘヴィーズ、ジャミロクワイなどがあり、百花繚乱でしたね。
という余談はほどほどにして。ジャズとヒップホップの融合が一段と進んで、気持ちの良い音源がCDショップにいっぱい並んでいるので、先日も4、5枚買ってみました。
■ SIDEWALK CHALK
シカゴ発の人力ヒップホップ・バンドという触れ込みですが、ホーンがフィーチャーされていたりとジャズ寄りのアプローチが気持ちいい。最近発売された『Hip Hop Da Live』というコンピにもこのグループは収録されてます。良い盤です。おすすめ。昔からシカゴはいいホーン・バンドが多いですね。昔、アップタイティとかもかっこよかったしな。土地柄でしょうか。
■ Disco2
往年のヒップホップ・ネタをDisco2マナーで再構築するというコンセプト・アルバム・シリーズの4作目ですが、1曲目の“Fly”は個人的にはジョー・パスがキャロル・ケイなどと作り上げていたサウンドに近いものを感じます。クラブで爆音で掛けたいファンキー・ジャズですよ。
■ monolog
先日、新譜『Cozy Layer』を発表したボストン在住の音楽プロデューサー、YUKI KANESAKAによるプロジェクト・monolog。前作の『17 Living Souls』はファンクやソウルといったテイストが濃い印象でしたが、本作はジャズ感の強いアプローチも。メロウでありながらグルーヴのあるアーバン・サウンドあり、ファンクあり。引き出しが多いですね。
■ HEATHER VICTORIA
ノースカロライナのプロデューサー、9THワンダーが主宰するJamlaレーベルからの初コンピとなる『Jamla Is The Squad』に収録されているトラックから、“Drive Home”。メアリー・J・ブライジやアリシア・キーズに強い影響を受けたという彼女。やはりこの辺の歌が歌える人には、ジャズもヒップホップもカテゴリは関係ないよね。
それからMikiki にもインタヴューが掲載されてますが、名門Blue Noteからアルバムがリリースされたトランぺッター、黒田卓也なども目が離せませんね。
最近は生粋のジャズ・シンガーのアルバムにも、ヒップ・テイストの楽曲が幅を利かせつつあり、それはそれで非常に楽しみではあります。あんまりヒップホップは詳しくないけど、すこし掘ってみたくなりました(笑)。