週末にFacebookを眺めていたら、(一方的にフォローしている)アルゼンチンのピアニスト/作曲家/ヴォーカリストであるノラ・サルモリアが、「公式サイトをリニューアルしたよ!」みたいな投稿をしていたのでさっそく見にいってみました。

あ、彼女がどういうミュージシャンなのかは、このMikikiでも公開されているintoxicate誌からの転載記事、こちら(http://mikiki.tokyo.jp/articles/-/232)で。このブログを読む前でもあとでもいいので、ぜひぜひご覧ください。ノラの公式サイトはこちら(http://www.norasarmoria.com.ar/)。ページ下部のイギリス国旗をクリックすれば英語ヴァージョンのサイトにも飛べます。

 公式サイトの話の続きです。見にいって最初に目についたのは「おお! 昨年末リリースされた最新作の情報がやっと載った!」ということですね。以前からこのブログのネタを考えているときに彼女のことも浮かんでいたのですが、最新アルバムが載っていなかったうえに一番紹介したかった音源も見つけられず断念した、ということがあったのです。

さらに、サイトのリニューアルと前後して、SoundCloud上でも過去作からの音源が次々と公開に(https://soundcloud.com/norasarmoria-1)。「やった! これで紹介しやすくなる!」と喜び勇みつつ、さっそくそのなかから貼っていきたいと思います。

まずは最新作『Silencio Intenso』のなかでも僕が一番好きな曲、“Niponeando”をどうぞ(あ、実はこの曲は5か月前くらいから公開されていたようなのですが、つい先日気付きました……)。

この作品のCDには〈ケース〉というものが存在せず、細かく折りたたまれた全曲分の楽譜(要するにただの紙です)によってむき出しのCDが包まれている、という変わった仕様なのですが、その楽譜がファンにはたまらないもの。4分の5拍子と4分の3拍子をときに1小節単位で行き来するこの曲は、気高い雰囲気とストレンジさの具合が絶妙で。この説明を読むと若干アクロバティックなイメージを持たれるかもしれませんが、〈無理やり感〉がないんですよね。かといってごくナチュラルな感じかというとそうでもなく(ここがポイントです)、彼女が雑誌のインタヴューで自らを評して言った〈内省的〉な部分がサウンドからも滲み出ているように思います。イントロだけ8分の9拍子なのもキモで、楽曲全体にマジックをかけているように思います。

この曲が入っている『Silencio Intenso』を色々な人に聴かせたところ、「(音楽性が)ちょっと難しすぎる」みたいなことを何人にも言われたのがショックだったんですけど、このなんというか若干神経質な感じが、逆に彼女の大きな魅力になっているんじゃないかと思うんですよね(少なくとも自分にとっては!)。ちなみに、クレジットによると、この楽曲はパーカッションなども含めて全てがノラ自身による重ね録りだったはずで、そういったところが僕の印象に影響しているのかもしれません。

前述の転載記事中にも出てきた〈The Piano Era 2013〉の1日目、実は僕も個人的に物販のお手伝いをしていたのですが(ライヴはちゃっかり全部観て、演奏が終わると同時に売り場へ急いでCD販売!)、当日ノラが演奏した曲のなかでもこの“Niponeando”はもっとも心に残りました。そのときは何拍子だとかあまり考えずに聴いていたのですが、ほぼ全編をスキャット・ヴォーカルで通すなか、サビの一部分でだけ「I want to live in paradise~♪」みたいな歌詞がついてるのも、なんだかとても気になって(あ、こないだの記事でも書きましたが、スペイン語だけではなくて英語も全然駄目なので、歌詞が全然違ったらすいません。ま、思い込みも含めて音楽ってことで……)。

おっと、1曲だけでだいぶ長くなってしまいました。ノラ・サルモリアは弾き語りだけではなくラージ・アンサンブルでのインスト曲やさまざまなミュージシャンとのデュオなんかでも素晴らしい録音を多数残している、本当に才能に満ち溢れた人なので、SoundCloudのなかから、ザザッといくつか。まずはさまざまなアルバムさまざまな編成で演奏されているインスト曲“Milonga Cromada“。アルバム『AMARANTO』収録のバージョンですかね。

 

お次はベーシストのダミアン・ヴァーニス(?)とのデュオで、アルバム『FENIX ESPIRAL』収録の“Malisimo”。ブリブリのエレキ・ベースとノラのヴォコダー使いが聴きどころです。かっこいい……。

 

「なんであれを貼らないんだ」という方もいるかもしれませんが、良い曲を全部貼っているとキリがないんで、今日はこのへんで。

「ブログでとりあげるアーティストがキューバ、キューバ、ひとつ飛ばしてアルゼンチン、アルゼンチン。だいぶ偏ってないか?」とか「ジャズはどうしたジャズは!」とかいう向きもあるかもしれませんが、特に意向があるわけでもなく、なんとなく、たまたまです。聴く音楽にせよ紹介する音楽にせよ、そのときそのときで好きに偏ったっていいじゃないですか(駄目ですか?)。そのうち全然傾向の違うものを連続で取り上げだしたりするかもしれませんが、それはそれとして、「そういうもんだよね」とご了承いただければと……。

それではまた!