インタビュー

片倉真由子が新作に込めた〈自分らしいジャズ〉―ティグラン・ハマシアンらの演奏が変えた意識に評論家・柳樂光隆が迫る

“ジャズ・ピアニストとしての今”を切り取った5年ぶりのリーダー作

Photo by Hisa Ayano

 

 片倉真由子ほどストレート・アヘッドなシーンで信頼を得ているピアニストもそういないだろう。海外のトップ・ミュージシャンの来日公演のサポートに入ることもあるほど、その実力を認められる彼女との対話は“自分らしいジャズを演奏することとは?”という話に繋がっていった。

 「私は自分自身を投影するってことがわからなかった。昔の私は誰かになりたかったんですよね。たとえば、ウィントン・ケリーになりたいとか。それが私のやるべきことだと思っていたんです」

 そんな彼女は若手の登竜門セロニアス・モンク・コンペティションのセミ・ファイナルで自分を見つめ直すことになる。

 「私以外はみんな演奏で自分を語ってたんですよ。みんな外側に向けて音楽やっているのに、私は自分の内側だけで音楽しているって感じたんです」

 その時のファイナリストはティグラン・ハマシアンアーロン・パークスジェラルド・クレイトン。トップ・ピアニストの演奏が彼女の意識を変えていった。

 「その次の日、ダニーロ・ペレスに『あなた自身をもっと開放してください』って言われたんです。それってコンペで感じたことと繋がってくるんですよね」

 そんな彼女はジャズをより深めることに向かう。

 「ジュリアード音楽院で『ジャズを学ぶことは、アメリカ史を学ぶこと。ルイ・アームストロングが誰かということを知ることです』って言われたんです。今、私らしさを出すために大事なところを深く掘り下げて勉強しています。そこに私自身が自然に投影される気がします」

 その掘り下げる作業として、ジャズのルーツを感じさせるジェリ・アレンマルグリュー・ミラージャッキ・バイアードらを聴きあさり、彼らのルーツを掘り下げることで、更に枝葉を広げようとしているという。

 「例えば、ジェイソン・モランって一発で聴いたらわかるくらい強烈だけど、ああなるまでにものすごいトラディショナルを掘り下げているはず。あの人なりに取り入れて、自分の中でミックスして、自分の表現としてバンっと出てきたのが彼の音楽なんですよね。自分の中に一度取り入れて、その中の要素を更にミックスするには何年とか時間がかかるし、それは時間をかけてやらなきゃいけないことなんです」

 新作『The Echoes Of Three』では、5年前にピアノ・トリオで録音した自作曲《A Dancer's Melancholy》を再びピアノ・トリオで録音している。この5年で片倉真由子がじっくりと掘り下げ、取り入れたものを聴き取っていくのも面白いかもしれない。

片倉真由子 The Echoes Of Three 55 RECORDS(2015)

※試聴はこちら

【参考動画】片倉真由子の2014年のパフォーマンス映像

 

LIVE INFORMATION
CD発売記念ツアー
○10/14(水) 東京 Body&Soul 
○10/15(木) 大坂 Mr.Kelly's 
○10/16(金) 名古屋 Jazz inn Lovely 
○10/17(土) 静岡県袋井 Live&Cafeマムゼル 
○10/19(月) 熊谷 JAZZ Cafe SPACE1497
○10/21(水) 東京 代官山蔦屋書店 Anjin 
○11/9(月) 横浜 Motion Blue Yokohama
www.mayukokatakura.com/

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