インタビュー

西山瞳がいま考えていること――ピアノ・ソロ作『Vibrant』と、アーティストやライブハウスを取り巻く状況

西山瞳がいま考えていること――ピアノ・ソロ作『Vibrant』と、アーティストやライブハウスを取り巻く状況

Mikikiの人気連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉でもおなじみのジャズ・ピアニスト、西山瞳の累計20作品目となるピアノ・ソロ・アルバム『Vibrant』が6月10日(水)にリリースされる。Mikikiでは、累計20作目となる本作の内容から、昨今のコロナ禍によるアーティストやライブハウスを取り巻く状況まで、メール・インタビューで話を訊いた。

西山瞳 『Vibrant』 MEANTONE RECORDS(2020)

ヘヴィーメタル・カヴァー・プロジェクトを経てのピアノ・ソロ作

――『Vibrant』のお話を伺う前に、まずは改めてNHORHM(New Heritage Of Real Heavy Metal。西山、織原良次、橋本学からなるヘヴィーメタルをジャズでカヴァーするプロジェクト)の一連の作品がどういうものだったかをお聞かせいただけますか?

「私が高校時代イングヴェイを中心にメタルを聴いていたものですから、アニソンのカヴァーがあるならばメタルのカヴァーもできるんじゃないか?というレーベルとの雑談の中で生まれた企画でした。

1枚目のアルバム(2015年作『New Heritage Of Real Heavy Metal』)を出すまでは、世間からどう思われるか未知数で、ジャズからもメタルからも嫌われる覚悟はしてたんですが、幸いなことに両方のファンの方から聴いていただけて、それ以降、本編3枚+アウトテイク集1枚をリリースすることができています。

私にとっては、ジャズで頭でっかちになっているところに再びメタルを聴きまくって、音楽の原初的な〈かっこいい! すげー!〉ということを改めて思い出す、初心に戻る良い機会でした。なんとなくBGMで消費されるジャズ・カヴァーには絶対にしないと思っていたので、アレンジも〈このぐらいで良い感じになるか〉みたいなことではなく、いかにジャズで育ててきた自分の美意識に合わせるかということと、メタル好きな人間として骨子は押さえるぞということと、両立するように練りました。

初めてジャズのCDを買う方、初めてジャズ・ライブに来てくださる方が多く、誰かの価値観の扉を開けることができるかどうか、この最初の一つの出会いが全てその人にとって大事な出会いなのだということを、自覚させられました。エゴイスティックになりがちなジャズの世界で、このタイミングでこういう視点を持てたのは、ラッキーだったと思っています」

――そのNHORHMを経て、6月10日に累計20作品目、ピアノ・ソロ作としては2作目となる『Vibrant』が流通でリリースされます(※ライブ会場ではリリース済み)。まずは本作の制作の経緯を教えてください。

「2019年に、別のレーベルでソロ・アルバムを作る話があったのですが、先方の都合でスケジュールが延び延びになって、一旦バラしてもらって自分でやるということにして、自主制作で録りました。10作品目(2013年作『Crossing』)がソロ作で、タイミング的に次でちょうど20作目だからということもありました」

――その10作目の『Crossing』は収録曲の半数がオリジナル曲で、それ以外は武満徹や山田耕筰のカヴァーだったのに対して、今作は全曲オリジナル曲ですよね。今作をオリジナルのみで挑もうと思ったのはなぜですか?

「倍の曲数を録音していて、その中にはカヴァーもあったのですが、アルバム1枚のためにチョイスする段階で、結果的に全曲オリジナルになりました」

――なるほど。収録曲はいずれもとても美しく、はかなく、どこか切なさや哀愁、郷愁といったものが感じられる曲ばかりです。曲作りはどのようなことを考えて行われましたか? また、いわゆるジャズのスタンダードや、あるいはメタルからの影響はありますか?

「古くから応援して下さっている方は、たぶんこちらの芸風のイメージの方が強いと思います。今回は特に、録音前に〈あまり弾かないようにしよう〉 と思っており、身の丈以上にならないようにしよう、喋れる以上に饒舌になることは避けようと意識しています。

内容はもちろんジャズからですが、最初に傾倒したイタリアのジャズ・ピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィ(Enrico Pieranunzi)の影響下にあることが、結果的に強く出た内容になったかと思います。メタルからの影響は、今作に限っては一切ないと思います」

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