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【BO NINGENの人生一度きり】第29回 涙のアラサー、英国番外地編―UK食事情の現実やロンドンでの強烈なライヴなど夏以降のトピックスを振り返る

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再びロンドンに戻ってからの僕達は、主にスタジオでの曲作りを中心に。去年からツアーを回りまくっていたため、ロンドンにゆっくりと腰を据えて制作に集中するのは不思議な感覚。

久々にロンドン拠点らしくロンドン中心の生活のなか、9月はシルバー・ウィークもあってか日本から来英される方がとても多くて充実していたのですが、そのなかでも一番はやはり灰野敬二さんとの久々の再会。日本で共演して頂いた2012年ぶりかな(ちなみに過去イギリスではヒースロー空港までお見送りに行った際、〈なんか変な親子がいるぞ〉と周囲から見られまくった経験アリ)?

再会を祝して菜食レストランでお食事。料理の味とヴォリューム、店員さんのサービスに大変満足なさっていたご様子

 

食事後には久々に灰野さんのライヴも拝見。英詞曲のアカペラ・カヴァーという新レパートリーに大変感銘を受ける。

僕は9年ほど前にロンドンで初めて灰野さんのライヴを観た時は終演後に涙が止まらなくなってしまい、そのライヴ〈体験〉ひとつで音楽家として、表現者として恐ろしいほどたくさんの事に気付かされました。今回のライヴでは自分と周りの空間を再認識させられるような、不思議な感覚に襲われ、何か日常のなかで忘れてしまったものを思い出させてくれるような、不思議な体験でした。

そんな衝撃が冷めやらぬ数日後、 われわれが所属するStolen Recordingsの10周年記念パーティーにて、BO NINGENとしてロンドン帰国後初のライヴ。 新曲を披露したり、しばらくやっていない昔の曲を演奏したりで、演奏後はみんな酔っぱらいまくり。楽しい夜でした。

 

そしてこの月はもう1本。
Night of the stick Menという変名プロジェクトにて、Cafe Otoでライヴ。BO NINGENのメンバー4人にドラムスのE-daCUZ、元BOREDOMS)、ヴァイオリンのSarah(Bas JanChrome Hoof)とBilly、サックスのSeymourを加えた大所帯インプロ・セット。めちゃくちゃ楽しくて、普段シニカル(?)な面々も演奏後はとても興奮しておりました。録音したのでいつか発表できたら良いな。

※お客さんが録った映像、ちょこっとだけ

 

僕個人としては前座として行ったE-daさんとのドラム+ベースのDuoも凄く感触が良かったので、ぜひまたやりたい! コンセプトはプロレスのシングル・マッチ。戦いのなかでいかに相手を光らせられるかということなのです。〈今回の試合は初代タイガーマスクVSダイナマイトキッドのようだった〉とはE-daさんの談。こちらは録音物のミックスも終わっているので、近いうちにネットにでもサンプルをあげたいところ。

初代タイガーマスクVSダイナマイトキッド(参考までに)

 

ライヴ以外ではあまりロンドンを出ない筆者ですが、バンクシーがプロデュースする 絶望遊園地、Dismalandで盟友サヴェージズがライヴをするというので遊びに行ってきました。ロンドンから電車で2時間半ほどの Weston Super Mareという港町。

観光地化されすぎておらず、とっても良い雰囲気の街

 

駅から徒歩10分ほど、 ディストピアが見えてまいりました

 

会場に到着後、サヴェージズのメンバーとプロデューサーのジョニー・ホスタイルと再会。ちょうどサウンドチェック中のDismalandに入れてもらう。

お客さんゼロの園内

 

しかしメンバーいわく、セキュリティー・スタッフとして働いている人たちがDismalandの一番のキモだという。入り口で意地悪な事を言われたり、難癖をつけられて笛吹かれたり、風船をあげるから他人の禿頭を撫でてこいと命令されたり、いまにも死にそうな顔をして壁のほうを向いていたり……作品と空間を活かす、なんとも素敵な即興演出でありました。

ジェニー・ベス(サヴェージズ)とDismalandにてパシャリ

 

サヴェージズとは2014年にロンドンにて一緒に“Words To The Blind”の演奏をしたり頻繁に会ったりはしているものの、純粋なサヴェージズとしてのライヴは、一緒に出演した2013年の〈フジロック〉以来。

プロデューサーのジョニー・ホスタイルから、本番前にサヴェージズの新譜についてのコンセプトや録音秘話、バンドの変化の悩みなどについていろいろと聞いていた事もあり、新曲中心の彼女達のライブはとても刺激的で、心に沁みるものがありました。

Savages Dismaland Live

 

ジョニー・ホスタイルと筆者一番のお気に入り縫いぐるみ野郎

 

その翌日、筆者はさらに強烈なライヴを目撃する事になります。友人のSatoshi Yamadaこと/Hi/Zo/U/Bu/Tuのパフォーマンスです。この日Dismalandからロンドンへ帰還、そのままファッションショーのフィッティング、そしてライヴ会場へ……という怒濤の流れのなか、絶対に観逃したくないと思っていたステージ。自分のなかで、〈この日は何かあるから見逃してはならない〉と、謎の確信がありました。

会場には彼の演奏が始まる5分前に到着。今回は/Hi/Zo/U/Bu/Tuが道で出会ったジプシーのアコーディオン弾きとのDuoをやるとのこと。前回も道のホームレスを連れて即興ライヴをした前科のある彼ですが、今回はそれを更新しそうな危うさが漂っていました。

/Hi/Zo/U/Bu/Tuのソロはこんな感じであり、恐らく英語をあまり理解していなかったであろうアコーディオンのおじさん的にはまさに晴天の霹靂。ビビッてしまったか、それとも演奏を邪魔せんとしたのか、開始5分でステージを降りてしまいます。

このままではマズいと、周りのお客さんが〈Play your music!〉と連呼して後押し。〈I don’t know〉と言いつつも渋々ステージに戻ってアコーディオンを弾き始めるおじさん。最初は戸惑っていたおじさんでしたが、途中から見事なドローン・ノートを弾くようになり、ほんの少しずつですが音が混ざり合っていきました。

何度も(いろいろな意味で)危なっかしい場面はありましたが、見事に2人の音が同時にフェードアウトしていく、もの凄く感動的なエンディング

 

筆者にとって即興演奏とは演奏全体のトータルの平均点ではなく、演奏中にどれだけ素晴らしい〈Moment(瞬間)〉を生み出せるか、そしていかに着地させるか、だと思っています。過去に成功したものを反復しても、過去の瞬間に勝てる可能性は大変稀なことです。/Hi/Zo/U/Bu/TuとジプシーのおじさんのDuoはその点でまさに完璧で、まさに奇跡的な瞬間が何回もあり、エンディングも感動的なものでした。

演奏序盤はあんなに怯えていたジプシーのおじさんも終演後は目を見開いて一言、〈Fantastic!〉。本当の意味での即興演奏を考えさせられる夜でした。

終始UK内で過ごす珍しい1か月となりましたが、刺激的な出来事が続いた9月。感覚が鈍っていく事を年齢やキャリアのせいにしないように、自分自身でありつつも、同時に変化を恐れぬよう、個人としてもBO NINGENとしてもまだまだ成長していけるよう努めますので、これからも宜しくお願い致します。

 

中華料理屋の守り神

 

PROFILE/BO NINGEN


Taigen Kawabe(ヴォーカル/ベース)、Kohhei Matsuda(ギター)、Yuki Tsujii(ギター)、Akihide Monna(ドラムス)から成る4人組。2006年、ロンドンのアートスクールに通っていたメンバーによって結成。2009年にアナログ/配信で発表した 『Koroshitai Kimochi EP』が現地で話題となり、UKツアーのみならず、日本盤の発表後は日本でのツアーも成功させる。2011年にミニ・アルバム『Henkan EP』、2枚目のフル・アルバム『Line The Wall』をリリース。〈フジロック〉やオーストラリアの〈Big Day Out〉、USの〈SXSW〉〈コーチェラ〉といった各国の大型フェスへ出演し、ますます注目を集めるなか、2014年に最新作『III』をドロップ。さらに、37分に及ぶ大曲となる盟友サヴェージズとの共作シングル“Words To The Blind”(Stolen/Pop Noir)をリリースしている。そして来月、ふたたびBO NINGENが日本上陸! 12月7日(月)、8日(火)に東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGEで行われるポップ・グループの来日公演にオープニング・アクトとして出演、12月25日(金)に名古屋・Club Upsetでの〈年末調整GIG〉へ参戦するほか、2016年1月にはジャパン・ツアーを開催。1月5日(火)に大阪・Shangri-La、1月6日(水)に名古屋・Club Upset、1月13日(水)に東京・WWWでのライヴが決定しました! やった!! そのほか最新情報はこちらへ!

【参考動画】BO NINGENの2014年作『III』収録曲“Da Da Da” 
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