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『Unbreakable』の立役者たち
こちらのコラムにもある通り、『Unbreakable』では2名の新進が共同でソングライトやプロデュースに絡み、その完成度に貢献している。まずはデム・ジョインツ。ドクター・ドレー『Compton』でも大抜擢された彼は、もともとローカルG作品で名を見たコンプトン出身の俊英だ。キャリアアップはバングラデッシュの舎弟としてリアーナやブランディ、JLSらの作品に関わりはじめた頃から。今後はキャンディス・ピレイらの作品でさらに名を上げていくだろう。で、そのデム・ジョインツが関与したジョーダン・スパークスの新作に別曲で参加していたのが、ここで挙げるもうひとりの裏方、トーマス・ランプキンスだ。ジャネットの甥オースティン・ブラウンとバックパックキッズなるチームを組んでいた縁もあるが、以前ロドニー・ジャーキンス配下でジャネットの“Make Me”(2009年)を共作した実績が活きたと見るのが自然だろう。デンマークの歌手ソニーの『International』(2012年)で素晴らしいマイケル・オマージュを仕立て、以降はジャスティン・ビーバーやシアラ、T.I.らも手掛けてきた彼が、本作を転機に大きく飛躍するのは間違いない。
ANY TIME, ANY PLACE
いまも絶えないオマージュとリサイクル
例を挙げていけばキリがないのは前提として。それまでのさまざまなリサイクル例は2006年の〈PEOPLE TREE〉でも紹介している通りだが、それ以降に生まれたなかで大きなリサイクル・ヒットとして記憶されるのは、“Come Back To Me”をプライズがそのまま転用した“Bust It Baby Pt.2”だろうか。同じ2008年にはアッシャーも“Any Time, Any Place”を引用していたものだが、同ネタ使いでは昨今ならケンドリック・ラマーの“Poetic Justice”がポピュラーなのだろう(最近ではトロイ・エイヴ“Anytime”も同ネタ)。そこにも客演していたドレイクの“Come Thru”や、“Funny How Time Flies”を陶酔的に歌い込むティナーシェの“How Many Times”を並べれば、アリーヤ使いの流行などと同じく、ある種のメロウネスや趣味の良さを喚起する装置としての機能が重用されている風潮は感じられる。その意味では、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルによる“Again”のカヴァーや、セイント・ペプシの“Honey”のような一発芸の素材としても、彼女の大きすぎる存在感は重宝されていくのだろう。