10年間に亘るソロ・パフォーマンスの名演を凝縮

 10年というととても長いような気がする。シンプルに「10イヤーズ・ソロ・ライヴ」と題された本作は計300分超、LPで8枚、CDで4枚組というヴォリュームである。

BRAD MEHLDAU 10 Years Solo Live Nonesuch/ワーナー(2015)

 2005年からの10年間、ヨーロッパでの19回のソロ公演から選ばれた演奏が4つのテーマに沿ってそれぞれコンパイルされ、コンセプチュアルな側面が際立たせられている。順に【1】Dark/Light、【2】The Concerts、【3】Intermezzo/Ruckblick、【4】E Minor/E Majorと題されているが、メルドーによると、それぞれのテーマを元に恣意的に曲順を決めたのではなくアルバムの最初から最後までを一つの物語とすべく曲を並べたところ、それぞれキャラクターが出来ていたのだという。闇から光へ、その表裏一体を表した【1】、異なる公演から選ばれた曲たちがまるで一つのコンサート(メルドー曰く2010~11年頃の)のように並んだ【2】、そして【3】は「間奏曲/振り返り」のことであり、本テーマ7曲目に配されたブラームスのピアノソナタ第3番の5部からなるうち最後から2番目に題されたテーマから採られている。最後の曲(テーマ)を迎えるにあたって最初の闇と光の関係を振り返ること、そしてそれが【4】へと繋がり重なる時(ちなみにブラームスのそれではF Minor end in F Major)全体が大きなテーマに包まれていることに気付く。

 オリジナルからビートルズレディオヘッドモンク、そしてブラームスなどなど、多岐に渡る選曲はジャンルから完全に解放され大きなテーマの要素となる。メセニー/メルドーやマーク・ジュリアナとのメリアナなど様々なスタイルで時代の先頭を走ってきたメルドーの10年。その間ソロで表現してきたものの結実がこのアルバムであるならば、この壮大な組曲は単なるライヴ・アーカイヴには成り得ない。時間が許すならば300分、順に聴き通すことをお薦めする。