COLUMN

ローリー・アンダーソン監督映画「Heart Of A Dog」、音と言葉だけで映画全部が聴けるラジオ・ドラマのようなサントラ盤登場

ローリー・アンダーソン監督映画「Heart Of A Dog」、音と言葉だけで映画全部が聴けるラジオ・ドラマのようなサントラ盤登場

今の時代に生きるとは~ローリー・アンダーソンが監督した新しい映画作品のサントラ盤

 全く感情がない、冷たい女性の声で語られる。

 「私の母がもうすぐ亡くなるという連絡があった。私は困った。どうしたら良いのか? 私は母を愛していなかった。一度聞いてみたかった。お母さん、私を愛していた?」

LAURIE ANDERSON Heart Of A Dog NONESUCH(2015)

 これはローリー・アンダーソンが監督した新しい映画作品からの言葉。そのサントラ盤では、音と英語の言葉だけで映画全部が聴ける。ラジオ・ドラマのような楽しみ方が出来る。音のサウンド・コラージュが60分以上続く。頭の中で彼女の語るストーリーを想像すると、自分の中にそのイメージがはっきりと見えてくる。ゆっくりと落ち着いた声が、内容に、より強いインパクトを与える。音楽はピエール・アンリの電子音楽作品『チベット死者の書』を思い出す面もあった。映画は映像とアニメーションのコラージュ作品。映画の絵やアニメーションもアンダーソン自身が書いている。

 ここ最近聴いた作品で、この作品こそが“今の時代”に生きるという事を、最もよく表現されていると思った。彼女と彼女の夫、ルー・リードが二人で飼っていた犬との生活と、その死をきっかけに、死とはどういうものか、愛するとはどういう事か、今の時代で生きるとはどういう事かをテーマにしている。この作品を作る前後に、彼女の母が亡くなり、夫のルー・リードが亡くなった。また、9.11のテロ以後に、生活がどう変わってしまったかも、テーマの一つだ。本作においてルー・リードの存在感は大きい。このプロジェクトは彼が生きている時に始まり、彼が取った映像も入っている。エンディングはルー・リードの歌で、最後に幸せな感じが聴き手に伝わってくる。夫婦としての結びつきを強く感じさせる作品になっている。

 ヴィトゲンシュタイン、キェルケゴール 、チベット仏教の哲学の言葉が時々出てくる。その中には覚えておきたい良い言葉がたくさんあった。

 この作品はきっと今の時代を代表する作品として残って行くことだろう。

タグ
関連アーティスト
TOWER DOORS
pagetop