J DILLA'S DONUTS
あれから10年……過去と未来を輪廻する円環

 2006年2月10日、闘病の末にこの世を去ったJ・ディラ。この不世出のビートメイカーがいまも多大な影響を後進に残している要因のひとつは、遺族らの積極的な働きもあって常に〈現役〉として生かされてきたことにある。昨年だけでも、エレクトロニック寄りの秘蔵音源を選りすぐった編集盤『Dillatronic』が出たほか、スラム・ヴィレッジは故人の未発表ビーツを軸にアルバムを仕立て、さらには盟友フランク・ニットの“Official Supreme”やジョーイ・バッドアスの“Like Me”もディラ製の話題曲となった。

ジョーイ・バッドアスの2015年作『B4.Da.Ss』収録曲“Like Me”

 

J DILLA Donuts Deluxe Edition Stones Throw/BBQ(2016)

 そうして存命時以上に神格化の進むなか、没後10年の節目に新装されたのが、逝去の3日前にストーンズ・スロウから発表された遺作『Donuts』である。ボートラが入って円環(ドーナツ)の構造が崩れたのはアレだが、未聴のリスナーにはこの機会にこそ出会ってほしいビート・アルバムのクラシックなのは確かだ。