コラム

最後のJ・ディラ特集 ~悲報から10年、生前に自身がリリースを望んでいた最後の一枚『The Diary』から改めて辿る軌跡

【特集:DILLANTHOLOGY】Pt.1

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スラム・ヴィレッジからソロ、没後アルバムまで……J・ディラの作品

SLUM VILLAGE Fan-Tas-Tic Vol. 1 Donut Boy/Barak(1997)

ジェイの多忙さに伴うグループ活動の停滞を見かねたワジードの旗振りで、既存曲などが1週間でまとめられたという初作。5エレメンツファット・キャットの登場もあり、現代でいうところのミックステープ的なノリながら、それゆえにラフ・ドラフトなストリート感が粗削りでかっこいい。すぐ売り切ったカセットテープがオリジナルとされ、ブートも含む複数の盤が出回るも、2005年に正規CD化された。

 

J-88 Best Kept Secret Groove Attack/Ne'Astra(2000)

メンバー同士が出会った88年に由来する変名を用いてリリースされたEP(ながらも10トラック入り)で、サウンド的には〈Vol.1〉と〈Vol.2〉の間を繋ぐ1.5作目のような雰囲気。3人の野方図な語りが逞しく、曲のかぶりはありながらも一気に聴かせる。マッドリブとUKのIG・カルチャーがリミキサーに起用されている点ももちろん重要ポイント。なお、現在はスラム・ヴィレッジ名義の『J-88』としてリイシューされている。

 

SLUM VILLAGE Fantastic Vol. 2 Goodvibe/Barak/Ne'Astra(2000)

正式ルートで世に出た盤としてはこれがファースト・アルバム。ジャジーな定番の“I Don't Know”からダンサブルな“Hustle”まで独特の弾力を帯びて揺れる硬質なビートの格好良さは当然聴きどころだし、ビギーっぽくスカしたT3や野太いバーティンと織り成すナスティーなラップのコンビネーションもいい。ディアンジェロコモンQちゃんバスタピート・ロックコラプトというゲストの布陣も豪華!

 

JAY DEE Welcome 2 Detroit BBE(2001)

BBEの名シリーズ〈The Beat Generation〉第1弾となった初のソロ作で、ビートメイカーの自由な創作がアルバムになったという点でも画期的だった金字塔だ。カリーム・リギンズをドラマーに迎え、ドゥウェレ兄弟のホーンズが効いた“Think Twice”など楽曲は多様で、創造力の赴くままにボサノヴァやアフロへと移り変わる音風景が凄い。フランク&ダンクラックス、この後スラム・ヴィレッジ入りするエルザイを抜擢。

 

JAY DEE Ruff Draft  Mummy/Stones Throw(2003)

当初は〈ジェイ・ディー〉名義の『Ruff Draft EP』としてアナログで自主リリースされ、2007年のCD化以降はボートラを追加したアルバム・サイズになった〈素描〉。メジャー契約が宙に浮いた不安定期の繋ぎに作ったためか、自身のビートとラフなヴォーカルのみで直感的なアイデアを描き殴ったようなノリが全編に漲る。ラキムまんまなラップなど、彼のプリミティヴな素がもっとも剥き出しになったブツかも。

 

JAYLIB Champion Sound Stones Throw(2003)

マッドリブと互いのトラックでラップし合ったコラボ作品。ディラの手掛けたビートでは、ドクター・ドレー『2001』作法そのままな“The Red”をはじめ、いかがわしいバウンス“Strip Club”などガラリと色を変えた挑発的な作りが耳に残り、マッドリブの煙たい語りもよく似合う。ラップ曲ではMCA盤から転用した“Ice”のほか、フランク&ダンクを従えた暴れん坊な“McNasty Filth”がとにかく威風堂々!

 

J DILLA Donuts Stones Throw(2006)

リリースの3日後に急逝したこともあって、彼の名を永遠の円環に刻んだビート・アルバム。病と闘いながらも日課のように紡いでいったという渾身作だけに、緻密なサンプリング・ワークにはLA移住後の集大成的な雰囲気も感じられる。偏執的な構成へのこだわりの一方でトラックには心地良い綻びもあり、前後して世界に広がったいわゆるビート・ミュージックのスタンダードとしても恐ろしく重要だ。

 

J DILLA The Shining BBE(2006)

『Donuts』を作り終えたディラが亡くなる直前まで取り組み、大半を仕上げていたという遺作。カリーム・リギンズらの尽力で完成を見た内容は、盟友バスタや目をかけていたドゥウェレやギルティ・シンプソンらが美しい輝きを各々の色で照射するもの。コモンとディアンジェロが駆けつけたハイライトの“So Far To Go”まで、主役の〈Welcome 2 LA〉的なヴィジョンに仲間たちが応えた、フィナーレに相応しい名盤だ。

 

J DILLA Jay Love Japan Pay Jay/Vintage Vibez(2007)

日本にインスパイアされて2005年に録音していたとされ、生前からリリース告知もあった一作ながら、限定盤や複数のプロモ盤、ブートも出回った末に配信オンリーになっていた謎多き作品。このタイミングでついに公式CD/LP化されるのは11曲入りのフル・ヴァージョンを謳ったもの。エグザイルやブルーと並んで無名時代のミゲル(!)やJ・デイヴィも登場し、当時のLA新世代への影響の大きさも窺わせる。

 

J DILLA Jay Stay Paid Mummy/Nature Sounds(2009)

故人の憧れの存在にして実際の交流も深かったピート・ロックが、マ・デュークスの公認を受けて手掛けたミックスCD。未発表のビートからチョイスしたトラックの欠片に〈ジャーメイン・デュプリじゃねえし!〉的な肉声も挿入し、ピートがホストを務めるラジオ・ショウの体裁に則ったユルく温かいノリを明るく聴かせてくれる。客演はハヴォックレイクォンルーツブラック・ソートドゥーム、ブルー、イラJら。

 

J DILLA Rebirth Of Detroit Ruff Draft(2012)

こちらの未発表曲集はほぼ全曲に同郷デトロイトの客演を配し、地元産のトリビュート盤という意識も強く備えたもの。生前に縁のあったギルティ・シンプソン、ディラ以降の新顔となるボールディ・ジェイムズダニー・ブラウン、さらにOGのイーシャムブラックバーズアラン・バーンズまでもが目線を揃えて遺産をモダンに蘇らせる。アレンジはニック・スピードが担い、アンプ・フィドラーも1曲を共同制作。

 

J DILLA Dillatronic Vintage Vibez(2015)

マ・デュークス公認の新レーベル第1弾となった、なんと41曲入りの未発表ビート・アルバム、とはいえ1分に満たないトラックも含む断片集の趣で、エレクトロニックな質感のビートを選りすぐった聴きやすいダウンテンポ作品という感じだ。ウマー時代から『Fantastic Vol.2』へ至るあたりのデトロイティッシュな硬質さとメロウな心地良さが混じり合う様子は、言わずもがなムーディーマンアンドレスに通じる部分も。

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