C16 PERFECT BLUE
【特集】それぞれの感性で鳴らす〈青〉
あれから30年。日本では、ネオアコもギター・ポップもパンクもハードコアもひとつのインデックス上に並ぶ、瑞々しい感性があちこちから登場しているよ!!

 「『生き埋めVA』が本当に始まりだと思います。ある意味で共鳴、もしくは僕たちの声明だったのかもしれません。まとまっているようで皆が違うほうを向いてるような、アパートのようなコンピだなぁと思っています。〈隣の部屋で知らない音楽がかかっている!〉みたいな感じ」――そう語るのは、THE FULL TEENZの菅沼祐太。同バンドの伊藤祐樹と菅沼、そしてlittlekidsの杖野真太郎が始動した生き埋めレコーズがコンピ『生き埋めVA』をリリースしたのは2014年のこと。自分たちの周りのかっこいいバンドを集めたという同作だが、CAR10の川田晋也のソロ・プロジェクト=PRESSURE GROUPやNOT WONK、そして7月にこんがりおんがくから初アルバムのリリースを予定しているAnd Summer Clubなど、当時はほぼ無名だった彼らの持つ共通のトーンを見抜き、コンパイルした嗅覚は鋭かった。

 また、現在加速度的に勢いを増しているKiliKiliVillaが立ち上がったのも2014年。安孫子真哉をヘッドとするこのレーベルは、2015年初頭に自身の指針を表明するかの如くコンピ『WHILE WE'RE DEAD.:THE FIRST YEAR』を発表している。本作の注目すべきところは、その後に単独作品をリリースしていく〈新感覚のパンク〉の面々と並列で、Homecomingsらパンク外のアクトも収録されている点。間口の広いインディー・ポップ感も背景にある新たなパンク・アクトと、〈アノラックの再来〉と賞された初期の音楽性からどんどんはみ出していく近年のHomecomings――そのクロス・ポイントがここで見て取れる。

 そして2016年。今年はNMEが伝説のコンピ『C86』を発表してからちょうど30年を迎える年だ。プライマル・スクリームやパステルズといった当時のUKインディー界隈における有望な若手を収めた同作。結果的にネオアコ~ギター・ポップ、シューゲイザーの傑作コンピという評価も得たが、全体を覆うキラキラとした青い質感と、のちに各々の音楽性へと枝分かれしていった彼らの持つ本来の多様性を思うと、先述の2つのコンピと近い匂いを感じる。

『C86』収録曲プライマル・スクリーム“Velocity Girl”
『C86』収録曲パステルズ“Breaking Lines”

 そこで本題。ここでは、ネオアコ~ギター・ポップやパンク~ハードコアが根底にありつつ、ポップさの背後にあるポスト・パンク気質や、性急さの隙間から滲む青い感性といったキーワードで2016年のシーンをコンパイルするならこの面々、と思うアーティスト/作品をまとめて紹介します。日本全国に点在しながらもゆるやかにコネクトしている各アクト、一聴しての印象は異なったとしても、そこを貫く〈あるトーン〉は感じ取ってもらえるはず。どれかひとつを入り口に、新たな発見や確認の場となったら嬉しいです。 *土田真弓