古今の無伴奏宗教合唱曲の中でも屈指の存在感をもつ傑作のひとつとして、この『晩祷』を挙げることに何のためらいもない。さらにラフマニノフの作品にあって「秘中の秘」というべき趣さえ帯びている。実際、初演が大成功であったにもかかわらず、まもなくソ連が成立しロシア教会音楽の演奏禁止の圧力に埋もれてしまう。時を経て復権の契機となったスヴェシニコフ盤を聴いた時の衝撃は今も忘れられない。そして昨年、初演100年の節目を迎えた。ラトルの盟友というべきサイモン・ハルジーロンドン響合唱団を十全に統率しセッション録音した当盤は、『晩祷』の音楽的美を究極の姿で開示してくれる。

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